上 下
67 / 67

新しい家族(妹)

しおりを挟む
ーー 青の休み


ラルフがトーラル王国に帰り、日課の一つが無くなると手持ちぶたさになった私は、次の弟子が欲しくなった。
「次は魔法の弟子がいいかな、それとも魔道具作成。」
と言いながら目ぼしい孤児や家臣を探したが、これというものがいなかった。


ある日中央大森林の中で狩りをしている時に、魔物に襲われている馬車を見つけた。
大森林の外側を走っていた馬車に、ワイバーンが襲いかかったのだ。
馬車は倒され、警護の冒険者はワイバーンに殺されていた。
ワイバーンを倒して馬車の近づき声をかけるが返事がない。

重力魔法をかけて馬車を持ち上げると、馬車の下敷きになって息を引き取ったもの男女2人、打ち所が悪かったのか馬車内で男が1人死んでおり、辛うじて幼い少女が気を失っただけで、たいした怪我もしていなかった。
それ以外に生存者は居なかった。

ーー 天涯孤独な少女アリス13歳


エストに助けられた少女が目を覚ましたのは、エストの屋敷の寝室だった。
「ここは・・何処なの?お母様やお父様は?」
と目を覚ました少女が呟く声を聞きつけた、メイドが
「お目覚めですか?ここはエストニア侯爵家の屋敷です。魔物に襲われた貴方を御当主様が助け出されたと聞いておりますが、詳しいことは後ほどお聞きください。」
と言いながらメイドは、着替えを差し出した。

心配顔で着替えを終えた少女は、案内されるままにリビングに向かう。
そこにまだ若い男性がお茶を飲んでくつろいでいた。
「エストニア様、お連れいたしました。」
というメイドに軽く手を上げ男性は、少女に椅子をすすめた。
「心配だろうがまずはここに座って、私の話を聞いてください。」
言われるままに少女は椅子に座り、出されたお茶に喉を潤した。

「私はエストニアと言います、ここはセガール王国の私の侯爵領の屋敷です。貴方を見つけたのは、ここから東に100kmほどの場所の広がる中央大森林の側でした。」
と発見の状況を語る男性に少女は記憶が蘇るのを止められなかった。
「ああ、魔物が空から襲ってきて・・・馬車が倒れて・・お父様もお母様も・・下敷きに・・。」
と言うと泣き出した。
落ち着くのを待ってエストニアと名乗る男性は、
「はい確かに馬車はワイバーンに襲われて横転していました。馬車を引き起こしましたが、貴方以外の方々は既に亡くなっていました。遺体はこの屋敷に運んでおります、確認しますか?」
と言う言葉に
「はい、お願いします。」
僅かな希望に少女がそう言うのを聞き届けた男性は、遺体安置の部屋に少女を案内した。

ある遺体を見つけた少女は、それに縋り付くと母と父親の名を呼びながら泣いていた。
暫くそのままにして、エストニアは、席を外していたが、声が静まったところで部屋に入り。
「特に遺体を埋葬する場所がなければ、ここで埋葬したいがどうしますか?」
と少女に尋ねた。
「はい私たちは、魔王に滅ぼされた国から安住の地を求めて旅をしていました。行く先がなかったので、ここで埋葬してもらえるならばよろしくお願いします。」
と答えた。

その後少女を伴って、遺体を手厚く埋葬し墓標を立てて名を刻んだ。
その後少女にエストニアが訪ねた。
「行くところがないのであれば、両親の墓もできたとこだしここで働いて住んではどうかい。」
と尋ねるエストニアに少女は
「よろしくお願いします。」
と頭を下げた。

少女の名は、シルビア=カスタードと言い、貴族の家柄のようだったが詳しくは語らなかった。
エストニアは、少女を先ずはどの程度のことができるのか確かめるためにも、暫く侍女長に付けて様子を見ることにした。

シルビアは、かなり高い教養と躾がなされていたようで、侍女長が
「シルビア様は、かなり高貴な生まれと考えます。何方かの養子などにされてはどうでしょうか?」
と提案してきた。
そこでエストニアを
は、妹に連絡を取り相談をすることにしたのだった。

妹のクレアリーナも元は亡国の姫だった身、話を聞いて駆けつけると直ぐにシルビアと仲良くなり
「エストお兄様、シルビアを私の妹にしたいと思います。」
と言い出した、
「それは僕の妹でもあるよね。」
と確認すると
「そうでもあり、そうでもないかもしれませんわね。ウフフ。」
と意味深な返事をしたが、養子縁組に話はとんとんと決まり保護して1月ほどで、エストニアの妹となった。
この話は当然両親も大賛成で、母上などは
「可愛い娘がまた増えて私は幸せです。」
と言っていた。


ーー シルビア=カスタード  side


私は今は亡きトラザール王国の貴族に生まれた娘です。
魔王軍に侵略され王国は滅亡し、我がカスタード家も最低限の家財を持って国を出ました。
貴族が他国で仕事をすることも難しく、騙されたり足元を見られたりとかなり酷い生活をしながら流されるように旅を続けていました。

セガール王国に辿り着いたのは、この国が豊かな国で働き口が多くあると聞いたからです。
おいとを目指して中央大森林側を進んでいる時に、あの不幸が襲ってきたのです。
気づいた時には私はただ1人だけ、生き残っていました。

その後助けてくださったエストニア侯爵様に両親の墓を作ってもらい、働かないかと声をかけてもらった時はとても嬉しかった。
まさかその後、エストニア様の妹にと養女にしていただけるなど思わぬ幸運でした。
私は両親の分も幸せになる必要があるようです。

その後も姉になるクレアリーナ様が色々と心配していただいて、私は何不自由なく暮らせるようになりました。
クレアリーナお姉様も幼い頃に祖国が滅んだ経験をお持ちということで、私と同じ身の上のようです。
義母になるケイト=ケンドール公爵夫人は、実の母親のように親身に接してくださる方で、私は心配する事もなく生活することができるようになりました。

今後私は、両親のお墓を守って生きていきたいと思っています。


ーー  新しい妹のお披露目。


母上が非常に張り切っている。
私が大人になり構ってやれなくなった反動からか、妹たちに熱意を傾けている。
相変わらず若々しい母上は、ぱっと見三姉妹のように見えるのが嬉しいようだ。

社交界に新しい妹を連れて、その力を奮っているようだが、クレアリーナも十分結婚する歳なのに山のように来る見合い話を、全て断っていると聞いている。
「何故なんだ?」
と思いながら新しい妹も同じようになる気がしていた。

私は自分のパーティーメンバーにも新しい妹を紹介した。
皆好意的に接してくれたようだ。

シルビアを連れて、自領の地下街や王国中の地下を走る鉄道を見せると、目を丸くして
「凄いです。これなら魔物の脅威もありませんね。」
と興奮して色々と質問してきた。
彼女は両親と旅をする原因も両親が亡くなった原因も、魔物が関係していたことから特に魔物の対策の施策は全て見てみたいと言っていた。
移動手段についても地下鉄道の安全性にとても感動し、何度か王都まで買い物にクレアリーナと出かけていた。
しおりを挟む
感想 241

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(241件)

さあや
2022.09.09 さあや

テレビと電話を面白可笑しく作って下さい

解除
さあや
2022.09.08 さあや

大食い大会とかやって見たらどうですか?

解除
さあや
2022.09.01 さあや

行動も内容も面白くて何回も読み返してますこれからも更新頑張って下さい待ってます

解除

あなたにおすすめの小説

現代の知識と科学で魔法を駆使する

モンド
ファンタジー
山奥に住む男は定年後、実家のあった田舎に移り住んだUターン者である。 古くなった母屋を取り壊し、自分で家を立て始めていたがその作業中に埋蔵金を掘り当てた、時価総額100億円以上。 そんな悠々自適な生活を送っていたところ、子供の頃から不思議に感じていた隧道が自宅裏山にあったことを思い出す、どこに通じているかと興味に惹かれ隧道に入ると、歩くほどに体が若返っていくのが分かる・・・、そのまま進むと突然、光に飲まれ気づくと石積みの部屋に立っていた。 その部屋には脇に机が一つ置かれてあり和紙の紙束と日本刀が一振り置いてあった。 紙束を開くとそこには自分の先祖と思われる人物の日記が書かれていた。 『この先はこの世でない世界が広がり、見たことも聞いたこともない人々や 動植物に恐ろしい魔物、手妻の様な技に仙人の様な者までいる、しかもその 世界において身に付いた技や力は現世に戻っても変わることがない。志ある ならひと旗あげるのも一興、ゆめゆめ疑うことなかれ。』 最後のページにはこの言葉と「後は子孫に託す」との言葉で締められていた。 男は刀を腰に下げると出口と思われる方に歩きだした、10歩も歩かぬうちに光に包まれ森の洞窟の出口あたりに立っていた。 立っていた場所から車一台分の幅で未舗装であるがしっかりとした道路がなだらかな地形に沿って続いているのが見える、そこで男は食料や水を持っていなかったことに気付き一旦洞窟の方に歩き出すと、いつのまにか石室に立っておりそのまま歩くと隧道の入り口に立っていた、違っているのは17・8歳の若々しい身体の自分と腰に下げた刀が不思議な体験を事実と肯定していた。 冒険の準備を済ませ、自衛隊仕様のジープに荷物を載せて隧道に車を走らせると、あの石室を通過して洞窟の前にたどり着いた。 ここから男の冒険の始まり、セカンドライフよろしく21世紀の科学と不思議な世界で得たスキルで成り上がる男の物語。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

病床の末期癌患者は、異世界で若さと健康を取り戻す。

モンド
ファンタジー
仕事だけが生きがいの男が突然、末期ガンの告知を受け生きる気力を失う。 病床のベッドの上で朦朧とした意識の中妙な夢を見始める。 その頃から体に変調が現れ、いつの間にか病床から消えてしまった男。 男はいつの間にか健康になって、森の中に立っていた、そこは異世界の森だった。 男は本当の生きがいを求めて旅を始めるのだった。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。