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新たな勇者パーティー

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その後宿の泊まって数日情報を収集していたら、教皇名で呼び出しがあった。

王宮内の広場に多くの冒険者や騎士などが集まっていた。
すると先日見かけた宰相殿が
「今から勇者様のパーティーメンバーのテストを行う。魔法、剣技、その他の特技に分かれて己の力を示してほしい。」
と言うと担当と思われるものが現れ、プラカードのような物に
「魔法技能」「剣技」「索敵・罠解除」「癒し・回復」「対アンデット」
などと細かく分かれた物と、
「調理」「御者」「鍛治」「結界師」
と書かれていた。

私はそこで悩んでしまった、これではどこに並べばよいか分からないではないか。
すると
「召喚」「転移魔法」
と書かれたプラカードを見つけた。
取り敢えず、その辺りに並ぶとするか。
と呟きながら移動をし始めた。

するとその二つのプラカードの前には私と少女が一人だけだった。
「お兄さんは、どちらが使えるの?」
並んでいた少女が聞くので
「どちらも使えるぞ。他にも魔法は得意だからな。」
と言えば、少女は目をキラキラしながら
「お名前を教えてもらっていいですか?」
「名前はエストニ・・・エストだ君は?」
と言えば
「私はシホン12歳よ。よろしくね。」
と言ったその時、
「これから試験を行います。係員に従って移動をお願いします。」
と言うアナウンスが聞こえた。


ーー 勇者パーティーメンバー


今回聖皇国は、勇者のためのパーティーメンバーの選定にはかなりの慎重を期した。

先ず実力がある事、次に対応能力がある事、更には生きるための能力が高い事である。

戦闘訓練や対応能力のテストの後、森でのサバイバル訓練が行われた。
見一つで3日生き抜く能力を見るのである。
戦闘訓練と対応能力を突破した者は全体の10%ほどの30人だった。
その中には、癒し手や召喚士などは別枠で通過していた。

「今日から3日間、サバイバルをしてもらう。ペアは2人までで頑張ってください。」
と言われたが私には、全く問題ない話だ。
ペアにシホンが付いてきた。
「まあ緊張するまでもない、のんびりするといいよ。」
と言いながら私は家を収納から取り出す。
「ふえー!そんな凄い収納初めてみました。」
と言うシホンを家に案にする、どこをみても「ふえー」と声を上げる。

周囲を結界で囲み、ユックリと風呂に入りながら3日が過ぎるのを待つ。
「今日の夕食は、ハンバーグでいいか?」
とシホンに聞けば目を見開いて、
「貴方の料理ならなんでもオッケーよ。」
と答えた。


ーー シホン   side


私は、聖皇国の教皇の姪にあたる血筋で、召喚魔術の才能がある。
私が召喚できるのは、赤竜とフンリルの2匹。
ただ赤竜はまだ幼竜から成竜の途中の物なので、戦闘力はそこまでない。
竜は寿命が長い代わりに成長が遅いのだ。

そんな私が今回勇者のパーティーメンバーの募集に参加したのは、何かをしないでいられなかったから。
でもそこで物凄い人に出会った。
エストと名乗る青年だ。
本人はセガール王国貴族のエストニア伯爵というのが本当の名前のようです。
その魔法や強さは他の人達とあまりにも違うと思います。

でも一番の驚きは快適な生活環境です、立派な家に美味しいご飯とお風呂、こんな生活をいつでもどこでも味わえるなんて・・極楽です。


ーー 貴方は・・もしかして。


テストが終了して、残ったのは僅かに30人ほど。
ここからは勇者ヒカルの参加となる。

そして行うのは、連携の訓練と魔物の討伐による実戦訓練だ。
指示を受けているところに若い黒髪黒目の少年が現れた。
「彼が・・ヒカルか。」
そう呟きながら私は鑑定を実施した。

ステータス
ヒカル シンドウ  15歳  男  異邦人  レベル 99
HP  10000      MP  10000   
全属性スキル   超回復   看破   魔力操作
火魔法・水魔法・土魔法・風魔法・光魔法・闇魔法MAX
ユニークスキル
 対魔王時能力2倍
称号
 勇者

と言う初めて見るようなステータスだが、基本的には私の方がはるかに高い。
多分私のパーティーメンバーと同等ぐらいの力だ。

魔王と戦う時だけ2倍の能力だがそれでもまだ低い、これ以上は上がらないのか?

それに収納魔法や移転魔法と生産系の魔法がない。


勇者ヒカルが残った応募者に一人一人声をかけ始めた。
「僕が勇者ヒカルです、メンバーに選ばれた際はどうぞよろしく。」

私の横のシホンのところに来た。
「!貴方は、教皇様の・・ありがとうございます。」
と挨拶をして私に対面する。
「!!!!・・・貴方のステータスが読み取れないのですが、隠蔽ですか?」
と言う質問に
「いや、レベル差でしょう。2倍以上の相手には鑑定ができませんから。」
「!!!2倍! 貴方のお名前を教えて下さい。」
「失礼しました、勇者ヒカル殿。私はセガール王国のエストニア伯爵と申します。この度は教皇様の呼びかけに応じて駆けつけました。」
「伯爵様!冒険者ではないのですね。ありがとうございます。できれば貴方に教えを請いたい気持ちです。」
と素直な言葉を漏らした。
「ええいいですよ。これも何かの縁でしょうから。」
と答えるととてもいい顔で笑った。

勇者ヒカルはその後その場所を離れると、一人考え込んでいた。
「私より2倍以上のレベルを持つ者がこの世界に存在する。彼なら魔王すら倒せるのではないだろうか?女神の言葉を鵜呑みにしていたが、あのような人物がいるなど・・まさか僕とは違う転生者か何かではないだろうか?」
一人言を言いながらヒカルは、それでも自分より強い者がいることの安心感を抱いていた。

これまで自分より強い者がいない、自分がなんとかしなければならない。と言うプレッシャーに押しつぶされそうだったのだ。

その後教会の選定の儀や勇者ヒカルの推薦で、勇者パーティーが決まった。
それは勇者ヒカルのパーティーとサブのパーティー2組合計18人の3パーティーだ。

私は勇者ヒカルのパーティーに参加することになった。


ーー 勇者再び立つ


新たな勇者パーティーが結成され、魔王討伐に向かって再度動き始めた。

壮行会は、そこまで派手ではなかったが意外とうまいものが多かった。
幾らか収納して遠征先で食べようと思う。

西部大森林へ到着した、勇者パーティーメンバー達。
以前嫌な思い出のこの森に再度挑む勇者、しかしあっけないほどの魔物の弱さ。
「何故?あの時の大型魔物は何処に?」
勇者が心配顔で周囲を警戒するのを
「以前居たキマイラを頭とする魔王軍の魔物は、私が片付けておきました。新たな魔物が追加されていない限り、今は普通の森です。」
と答えると
「貴方が・・片付けた。 そうですか。」
納得いかない感じであったが、危険が一つ取り除かれている事はいいことだと考え直し、勇者は力強く歩き出した。

森を抜けると、アンデットが支配する旧トラザール王国。
以前の遠征敗走時に夜間アンデット襲われて苦戦した場所だ。

生かし今回は全く違う、
「この魔道具は結界の魔道具です、強度はレベル4でドラゴンのブレスに数度耐えうるものです。これにアンデットようの聖属性を付与すると、アンデットは全く近づけもしません。」
と3つのパーティーにそれぞれ配布した私に、勇者は
「こんな魔道具がこの世界にあったのですね。」
「はい存在していますが、持っているには私だけです。」
「それは何故?」
「私しか作れないからです。」
「・・そうなんですね。」

半分納得したような顔で勇者は、持ち場に戻る。
その日からの野営は快適だった。
殆ど見張りをする必要がないと言うのと、夜間にぐっすり休めると言う安心感がパーティーメンバーの精神衛生上非常に良かったようだ。

夜間になると大勢のアンデットが野営地に向かって進行するが、結界の数十メール先で歩みが止まる、それ以上近づくと浄化されてしまうのだ。

そんなある日、業を煮やした吸血鬼が襲ってきた。
その数10体、月夜にコウモリの姿で近づき結界の寸前まで辿り着いたがそれ以上は近づけない。
そこに私は現れると、吸血鬼に聖属性の剣を振るう。
コウモリになって逃げようとするも重力魔法で地面に縫い付けられて、それを剣で仕留めるだけ。
その骸を朝日に当てると完全に消滅していった。

「あれだけ苦戦したアンデットや吸血鬼がこうも簡単に倒されるとは・・・。」
思うところのありそうな勇者に
「経験と準備ですよ。戦いは始まる前にほとんど決まっているのです。」
と答えておく。

南大森林が見え始めた。
「ここに魔王がいる可能性が大きい。まだ見ぬ強大な配下もいると思われる、皆警戒を厳にして進んでもらいたい。」
勇者が皆を鼓舞し、大森林へ入る。
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