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犯罪者ハンターの設立

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ーー 黄の休み

実りの季節が近づいてきた。
焦げる様な強い日差しが次第に弱まり、時より涼しい風が吹く様になってきた。

畑は緑色から次第に黄金色へと色と重みを変えて、豊かさをもたらし始める。
豊穣の季節だ。

例年通り「豊穣祭」を執り行う準備を始めた。
ここに来て職種が増えてきたことに驚いている。
余暇や余裕が生まれると、それを楽しむための職業が派生する。

祭りがある→人が集まる→宿泊場所や食事場所が必要→建物を建てる者・食材を生産する者・サービスを提供する者→必要なものを準備する者
多くの者が影響を受け、足らないものにはそれを生業にする者が現れる。
祭りは各季節、各地で行われる。
時期を少し外せば、一年中各地に祭りを渡り歩けることになる。
特に地下鉄網がある我が王国では。

今まで農家であれば長男などの後継以外は、良い仕事に就くことが出来なかった。
しかしこれにより農閑期には祭り関係の仕事をする事で、十分に生活をすることができる様になったのだ。

そうなるとその富を狙う盗賊や泥棒、詐欺人攫いが横行し始める。
今回はその盗賊らとの戦いの話となる。

ーー 忍び寄る悪意の手


事件の始まりは、レリーナ・セリーナ両子爵領での話。
ダンジョンがある領地は季節に関係なく、栄えており潤っていた。
人は仕事と富を求めこの領地に集まり始める。
そんな冒険者にとって天国の様な領地もまた、盗賊らにとっても狙わずにはいられない領地でもあった。
なんと言ってもまだ大きな犯罪組織が縄張りとしていない事が、犯罪者としては天国の様な領地に見えていたのだ。

多くの犯罪組織が自分達の縄張りにしようと、入り込み始めた頃。
私はレリーナから対策を相談された。
「何もしていない者を捕まえるわけにもいかず、だからといって犯罪が起こるのを待つのもなんだかね。そこで犯罪者が入りずらい、仕事がしずらい環境は出来ないものかと考えて相談に来たの。」
と言うことだった。

犯罪者は基本自分のことしか考えない、善良な領民が苦しもうがお構いなしの考えだ。

そこで犯罪者が組織を作る前に、それに対抗する組織を立ち上げることにした。
「犯罪者ハンター・レセリーナ支部」
と言う看板を立ち上げて私は組織を立ち上げることにした。
このメンバーはケンドール公爵領とエストニア伯爵領の、通称人材センターの者を当てることにした。

仕事内容は
・犯罪組織の摘発
・犯罪者の摘発
・犯罪協力者の摘発
・犯罪収益金の摘発没収
・犯罪情報の収集
・犯罪被害者の保護
である。
領地内の土地や不動産を扱う商会には、無条件で顧客の情報提供を求めた。
食料品や酒などの販売所に対しても情報提供を求めた。
これらにより、犯罪者の拠点を作ることが難しくなった。

次に犯罪者個人をターゲットに、
・宿泊者の身分確認を義務付けた。
・出入りする者の徹底的な身元調査と、居住者登録の義務。
犯罪歴のある者は大手を振って出入することが出来なくなり、誰かの名前を騙って潜むことも難しくなった。

これらを徹底し、巡回を繰り返すことで犯罪者たちの排除とブロックをすることができる様になり、安全性が他領にも知れ渡り始めた。

私はこの成果を持って、異世界版警察組織の立ち上げを始めた。
逮捕権や捜索の権限を与えると共に、それを監視管理する上部組織の立ち上げも同じく行った。

ーー 犯罪者ハンター(警察組織)の王国内展開


今まで大きな犯罪組織の場合、冒険者ギルドが手配と賞金をかけていたが、犯罪者ハンターの場合、賞金に関係なく捜査するので小さな犯罪を繰り返す、今までは捕まることになかった犯罪者まで捕まる様になった。

捕まった犯罪者は、処刑と強制労働所送りである。
この世界ではまだ安全に仕事ができない危険な場所が、多く存在する。
そこで犯罪歴によりある一定期間強制労働につくのである。

何が厳しいかと言うと、死ねないのだ。
辛い労働を死によって逃げようとしても、私の作ったポーションにより死ぬことが出来ないのだ。
そのことを知った犯罪者は、王国内での活動を諦めるしかなかった。
何故なら単独でドラゴンを倒す男が、その長となっているその組織を相手に生き残れる犯罪組織などあるわけがない。

裏の闇ギルドに依頼して私の暗殺を計画した、犯罪組織がいたがその闇ギルドの構成員及び犯罪組織の構成員全てを、強制労働所送りにして毎日死ぬことがないが、死ぬより苦しい労働を寿命が尽きるまで行わせるため、悲鳴の聞こえない日がないと言う事で。
「嘆きの谷」と呼ばれる様になった。


こうして追う国内外のその存在を誇示し始めた犯罪者ハンターを王国内全てに網羅することにした。

「セガール王国国王の命である、王国内の犯罪組織を殲滅せよ。」
と言う国王の下命を受けた私は、初代犯罪者ハンター統括署長に就任することになった。


犯罪者ハンターの組織
・統括署長
・各支部署長
・支部長
・ハンター主任
・ハンター
・ハンター見習い
・事務主任
・事務員
・事務員見習い
・情報統括署長
・情報支部長
・情報部職員
・情報職員見習い
・会計署長
・会計支部長
・会計職員
・会計職員見習い
と言う構成で、大きな雇用を生み出すことになった。

基本は固定給で実績によりボーナスが変動するが、基本給でも生活は十分できる。

この様な逮捕権などの強権を持つ組織の場合、倫理観などが大切であるが、ここは異世界「真実の珠」と言うものがありその前では嘘をつくことが出来ない。お陰で定期的に質問をするだけで組織の健全化を保つことができるのだ。

私が言う国内に組織を広げている頃、犯罪者らは今のうちにと仕事を焦り始めた。
大規模な犯罪が行われ始めたのだ。
夜な夜な発生する犯罪に、ハンターが巡回し始めた。
「抵抗する者は、殺してかまわぬ。」
と命じて私も夜に街を回ることにした。


ーー ある少女  side


私は昔亡んだ王国の王家の侍女として働いていたが、王国の滅亡と共に出国し他国を転々としていた。
私の家族は、弟と妹が二人ずつの5人で、一番下が10歳だ。

セガール王国に来たのが数日前、エストニア伯爵領に辿り着き、働くために役所と言われる施設に家族の名簿と特技を書き込み、働き先の募集を待っているところである。
下の弟妹は、無料の施設で勉強を教わりだした。
「そんな施設もあるんですね。」
と信じられない顔で聞き直した私に職員は
「皆様そお言うのですよ。でもここではそれが普通なので慣れてくださいね。」
と言う返事だった。

働き先も連絡が来たのはそれから3日後、領主様の館で働く様です。
私は嬉しくて弟や妹たちの帰るのを待っていた夕刻、怪我をした弟の言葉で、気を失いそうでした。
「お姉ちゃん、妹たちが攫われた!」
そう言うと弟は気をうしなったが。

宿のおかみさんが異常に気付き、直ぐに役所に連絡を入れてくれて。
「大丈夫よ。直ぐに妹さん達は助けられるわ。」
と力づけてくれたが、私はその言葉を信じられなかった。

怪我をした弟はたまたま近くにいたと言う若者に治療を受け、怪我がわからないほど綺麗に治されていた。
その後その青年は
役所から来た職員の名簿を見ながら私に、今日の妹達の服を聞かれた。
と基調や服装を伝えると青年は、その場から空に飛び上がった。
「ええ?空に・・!」
見えなくなった後、おかみさんが
「もう大丈夫だよ、あとはあったかいご飯を作って待っていようね。」
と言うのです。

そして2時間後、妹達が無事に戻ってきたのです。
私はあの青年にお礼が言いたくて、その姿を探したのですが見つかりませんでした。
またおかみさんに尋ねてみようと思いながら、無事に帰ってきた妹達と美味しい夕飯を食べるのでした。


ーー 人攫い狩り


私は領内を巡回していた、犯罪者達が他国に逃げる駄賃で犯罪を行っていると耳にしていたからだ。
しかもその仲間の男らと思える者達が領内に入ってきたとの情報を得たからだ。

そしてある宿屋の近くで、旅人の家族が攫われたと耳にしたのだ。
怪我をした弟を心配そうに見ていたその女性の前で怪我を治して見せる。
役場から来た職員の資料である程度被害者の人相は分かった。
それ以外はその女性から詳しく聞き取ると、捜索に向かった。

犯罪者らの行き先はほぼわかっている。
出国しようとしているのだ、見つけた不審な馬車は3台。
空の上から様子を見ながら被害者の数と特徴を確認する。

「居たな。盗賊らは10人か。」
馬車が休憩のために止まった。
馬車から離れた犯罪者らを一人ずつ片付けていく。
出発しようとして3人の仲間がいないのに気づいた、犯罪者らは周りを気にしながらその場を離れようとした。

「ガタン」
馬車の車輪が片方ばかり3台とも外れた。
「おい早く治せ!」
「ダメですぜ、道具がない」
「馬車は捨て置きましょうぜ。」
「分かった、人質を出せ!」
と言う声の後、人質らが馬車から引き摺り出された。
その数5人。
姿を確認した私は、それ以外のものを雷撃で始末した。

空から降りると
「大丈夫かい?もう大丈夫だ。家に帰るぞ。」
と言うと5人の攫われた子供らは泣きながら抱きついてきた。
私はその子供らをそのまま転移魔法で役所まで飛ぶと、あの宿の子供3人を連れて宿に向かったのだった。

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