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意外と平和な日常と行軍訓練
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ーー 学園生活 1
黄の休みが明け、僕は学園の初等科3年となった。
色々なことがあった学園生活に平和を望んだらいけないのだろうか。
僕は平々凡々な人生を望んだはずなのに、希望が叶ったのは「健康な身体」の一つのみ。
目まぐるしい人生である。
3回目の領地対抗戦がもうすぐ始まろうとしている。
ルールが変更になり、余りに強すぎる僕らのメンバーが選手から除外された。
しかしその代わりに、加点をくれることになった。
残りの学生で頑張って欲しいものだ。
僕らは選ばれた選手の指導に力を注ぐことにして、領地運営と学園生活を満喫している。
◇
対抗戦が終わり今年は、赤の勝利となった。
目を見張る成長を見せたのが、セガール公爵の娘ルシリーア嬢だ。
スタンピードの際、学園から出られなかった不甲斐なさから奮起したと聞いている。
後輩らの成長を感じながら僕らの学園生活は無難に過ぎていく。
ーー 白の休みと女神の思惑
僕は伯爵領の小高い丘の上に作った自分専用の神社に来ている。
鳥居を潜りフェンリル型の狛犬を見ながら奥に向かうと、大きな鏡を祀った本殿がある。
僕は柏手を打ち、手を合わせて神に祈る。
そこで不思議なことが起こった。
目を開けると、僕は真っ白い世界に立っていた。
「ここは・・何処だ?」
と呟くと何処からともなく
「やっと見つけました。よくぞ私との間にパスを作ってくれました。」
と言う言葉から始まる、日本の神との語らいがあった。
要約すると。
【今僕の生きている世界の神が、衰退しつつある自分の管理する世界をどうにかしたいと禁じ手を使った。
禁じ手と言うのは、相互に管理する神の了解を得ずして勝手に魂を持ち去ることを言う。
僕の寿命はまだ十分あり、あの事故で人が死ぬのは病気の機長のみの予定だった。
日本の神が気を逸らされている間に、飛行機事故が引き起こされ僕の魂が引き抜かれたと言う。
まだ十分に生きる魂であり且つ大きな器を持つ僕は、この世界の神には喉から手が出そうなほどの人材だったようだ。
僕がたまたま鏡を祀って祈った事により、日本の神とのパスが繋がり今の状況だと言う。
残念な事に僕を日本で生き返らせることはできないようで、管理が不十分ですまなかった。と謝ってくれた日本の神には責任はないと思う。
別れ際に自分の力の一部を与えると言われたが、これ以上はいらないと断っておいた。】
これが神との語らいであった。
その背後で聞こえないほどの声が。
「私の色を付けていなければ、あの子への意地悪にならないでしょ。」
と言う神の言葉はエストニアには届かなかった。
ーー 学園生活 4
珍しく何も起こらなかった「黄の休み」を終えて学園に戻ってきた僕。
このところ怖いぐらいに平和が続いている。
すると脈絡もなく、この世界の唯一神を祀る「女神教」の司祭が僕の元に現れた。
「女神の啓示で貴方に伝えたいことがあると、私を差し向かわされました。是非私と共に神殿にてお祈りしてください。」
と言うものだった。
以前なら、「そうですか。」と言うことで付いて行っていたとこですが。この間の神との語らいで、真実を知った僕としては気分が乗らなかったので。
「申し訳ない、今手が離せないので私の手が空いた時にでも向かいます。」と丁寧にお断りをした。
その夜から寝苦しい日が続いているが・・・気のせいですよね。
夜な夜な女性の舌打ちが聞こえろような・・・気のせいと言って。
行軍訓練が行われる時期となった。
今回も昨年と同じような開催となった。
初等科としては最上級生となった僕らは後輩を指導する立場だ。
何故か今年は僕の装備を基本に揃えたという学園から、魔法の収納袋小と寝袋タイプの寝具が全員に配布された。
今年は冷え込みが厳しい白の季節で、行軍訓練時雪になった。
防寒対策が今回の行軍の要となる。
僕は商会に依頼し次の品物を納品させた。
・カイロ~小さいが10時間以上熱を持つ保温の道具
・加熱式弁当~紐を引くだけで暖かくなるお弁当
・ダウンジャケット~水鳥の羽で作ったワンピースタイプの冬服
・防水・防寒靴と手袋
である。
出発前に集合場所に臨時の店を開き、グループごとに購入を斡旋する。
ここでどれだけ安全策を取れるかも採点としてもらった。
それぞれの班が出発し、僕らは最後尾から様子を見守る。
天候は悪化の一途、一晩で雪が50cmも積もり更に降り続いている。吹雪になる可能性も考えられる。
積雪に足を取られ、体力を奪われて脱落する班が目立ってきた。
今回救援班を冒険者を雇って、後方に準備させていた僕は。
行軍が無理と判断した者たちを容赦なく回収して、後方に送り返していた。
残りは2つの班のみになった。
一つは王女と公爵令嬢の同行する班。もう一つは、雪国トラザール王国からの留学生が同行する班だ。
最終日何とか目的地に到着した2班のうち王女の同行した班を失格とした。
学園に戻り留学生の班が讃えられた。
その時公爵令嬢のルシリーア嬢が、僕に失格の判断にケチをつけた。
「私たちの班もほぼ同じ時刻に目的地に到着したのに何故、失格なのでしょう。明確なご説明をお願いします。」
とかちきな口調でしつもんしてきた。
「それではお答えしますが、行軍とは3日で終わるものとお考えですか?
さらに雪が積もればその場に数日間、足で目を喰らいますがその場合。
食料や水を得る具体的方法、吹雪や寒さを避けて身体を休める方法を教えてください。」
と言うと、「そな事は今回の訓練では関係ないでしょう。」と反論したので。
「実は、今回の訓練は行きと帰りの6日間を想定されていました。
残念ながらメアリースクイブ王女の参加された、班は既に体力の限界でそのまま訓練を続けていれば。
必ず死人が出る危険な状況でしたが、それすらも気付いていない様でしたので訓練を中止したのです。
留学生の班は、雪国の王国だけのことはあり。
雪の中で体力を奪われにくい行軍と吹雪で数日足止めをされても問題ない、知識と実践があったのです。
行軍訓練とは行軍を知ることもですが、行軍を指揮するべき立場に立つ者がいれば。
班員の命を守れる知識と行動力が必要となります、それを踏まえてお聞きします。
貴方がこの行軍の審査をする立場であれば、どう判断されますか?」
と尋ねると暫く下を向いていたが。
「私たちの班は、失格だと判断します。」
としっかりこちらを見て答えた。
その後留学生に雪の行軍の仕方や注意事項を真剣に教わっていた。
「貴方は私たち以上の知識をお持ちの様ですが、何処でそれを習ったのですか?」
とクリスタル王女にに質問されたので、
「昔、雪国で生活していたことがあったんですよ。」
と答えると「昔?」と頭を捻っていた。
ーー セガール公爵の娘ルシリーア嬢 side
今回の行軍訓練は絶対に負けられない訓練でした。
私は予想外の積雪にほとんどの班員が体力を失い気力を失いかけた時に、みんなを勇気づけて目的地に辿り着きました。もう班員は一歩も動けないほど疲れてはいましたが、やり切った満足がありました。
しかしエストニア伯爵は、私たちの恨を失格としたのです。
私はその判断がおかしいものと確信して抗議いたしました。
しかし帰ってきた言葉に、私は自分の犯した間違いに恐ろしさを覚えていました。
彼は言いました「元の訓練内容であれば必ず、誰かが死ぬとこだったと。」確かに今考えれば、私達が失格と判断されてもおかしくありません。
行軍は進むことが目的ではなく、進んだ先で行動することが目的なのです。
私は自分の勝ちたいと言う欲望に人の命をかけていたのです。
その後、屋敷に帰りお父様にその事をお話ししたら
「厳しい事を言う様だが、その判断は正しい。今回お前はとてもいい経験をしたと思える。失敗こそが学べる事もあろう。」
とおっしゃってくださりました。
しかしエストニア伯爵は何処であれほどの知識を得ているのでしょう?
不思議な方です。
白の季節の行軍訓練もなんとか終了し、もうすぐ青の季節です。
また領地に戻って進捗状況を確認する必要があるでしょうね。
ーー 青の休み。
流れる様に毎日が過ぎてゆき、平凡な日常を謳歌していた僕です。
休みを前にクロニアル子爵と今後の打ち合わせをしました。
パーティーの領地の開発状況を確認しながら、伯爵領の方向性を考えると言うものです。
旧メンドー男爵領は、新しい街で美しく清潔そして温泉施設がある領地です。
もう一つは、ダンジョンの街として発展しつつある街です。
そうなると僕の領地は何があるでしょう?
文化発祥の街にしてみましょう。
そこから常に流行が発信され、そこに行けばない物は無いと言える品揃えを実現しましょう。
◇
旧メンドー男爵領。
ここに来て2人の領地の名前をつけ忘れていることに気付いた。
「それでどうするんだい。一つにして一つの名にするのか、二つに分けるのか?」
と尋ねると2人は顔を見合わせて
「セルグナ男爵領のミリアの街・・に決めた。」
とモジモジしながら報告した。
「セルグナ男爵領だね。分かった。婚約はいつするんだ?」
と尋ねると
「先日婚約した。」
と答えた。
驚きだよ、パーティーメンバーにも言わずに水臭いけど。
お祝いを送っておこう、水臭いけど。僕は意外と根に持つ性格の様だ。
◇
レリーナ、セリーナ男爵領。
「この領地は2人で一つとするのか、それともそれぞれが責任を持つのかい。」
と尋ねると
「ダンジョンを中心に半分に分けて、ダンジョンの管理費や税を半分ぞつに分ける予定よ。」
と言うのでこの前、新しい街を建設できる様に線引きしておいたがあれをどうするのかと聞けば。
「あそこはちょうど中間地点の平原だったので、二つの領主邸を東西に建てて無駄をなくす様にしたいと思っているの。将来的には中心から分けられる様に重要な施設は中心に建てて、東西に出入り口をつけるように。」
と面白い街づくりをする様だ。
ついでにミリアのことを話したら、知っていました。
女性の情報網は侮れません。
ーー エストニア伯爵領の場合。
僕らは代官のエリス男爵に連絡を入れた。
「領内の開発進捗状況と問題点を報告してください。」
と言うと、エリス男爵は直ぐに報告を始めた。
「・・・・と言う状況です。問題点については、エストニア伯爵の直轄の商会の人気が素晴らしく周りの商会にもいい影響を与えているのですが、宿泊施設や商品の在庫不足が痛いです。」
と嬉しい悲鳴を言いながら、将来的な不安を教えてくれた。
クロニアル子爵と改めて領地の将来を見据えた、開発を話し合う。
目先の利益や賑わいに騙されることのない様に、強い経済を持たなければ将来性はない。
僕は日本人の頃の記憶を呼び起こしながら、遠回りの様だが将来的な手段を模索しながら開発を進めるのだった。
そんなことをしていたら、あっという間に青の休みは終わりを迎え学園に戻り時期になっていた。
ーー 学園生活
今年の青の季節は例年の魔物狩りについて、見直しがされる様だ。
その代わり、研究発表が国内向けに行われることになった。
学園長が僕に
・農地再生について
・衛生対策と病気について
の2点について発表をする様にと言われた。
これらについては僕自身が広めるべきだと感じていたので、二つ返事で了承した。
僕は農地再生につて、クロニアル子爵には衛生対策を発表してもらうことにして、連日健闘を繰り返した。
◇
研究発表の日。
国内ばかりか周辺国からも多くの著名人が傍聴に来ていた、今回の研究テーマの関心度の高さがわかる。
僕は、農地再生で実際に行った実験結果をもとに発表したところ大きな反響を得た。
クロニアル子爵の衛生対策についても、子供の生存率が大きく変わることを実例を挙げて説明すると。同じ様に反響が大きかった。
そのほかの研究テーマも長年の観察や試行錯誤の情報など、失敗こそに重要な情報があると絶賛された研究もあった。
全体的に大きな反響を世界に与えたと言える。
そこ発表の後、僕らは色々な場所の招かれて、指導を行った。
そんな日々を送っている間に季節は移り変わり、赤の休みが近づいていた。
黄の休みが明け、僕は学園の初等科3年となった。
色々なことがあった学園生活に平和を望んだらいけないのだろうか。
僕は平々凡々な人生を望んだはずなのに、希望が叶ったのは「健康な身体」の一つのみ。
目まぐるしい人生である。
3回目の領地対抗戦がもうすぐ始まろうとしている。
ルールが変更になり、余りに強すぎる僕らのメンバーが選手から除外された。
しかしその代わりに、加点をくれることになった。
残りの学生で頑張って欲しいものだ。
僕らは選ばれた選手の指導に力を注ぐことにして、領地運営と学園生活を満喫している。
◇
対抗戦が終わり今年は、赤の勝利となった。
目を見張る成長を見せたのが、セガール公爵の娘ルシリーア嬢だ。
スタンピードの際、学園から出られなかった不甲斐なさから奮起したと聞いている。
後輩らの成長を感じながら僕らの学園生活は無難に過ぎていく。
ーー 白の休みと女神の思惑
僕は伯爵領の小高い丘の上に作った自分専用の神社に来ている。
鳥居を潜りフェンリル型の狛犬を見ながら奥に向かうと、大きな鏡を祀った本殿がある。
僕は柏手を打ち、手を合わせて神に祈る。
そこで不思議なことが起こった。
目を開けると、僕は真っ白い世界に立っていた。
「ここは・・何処だ?」
と呟くと何処からともなく
「やっと見つけました。よくぞ私との間にパスを作ってくれました。」
と言う言葉から始まる、日本の神との語らいがあった。
要約すると。
【今僕の生きている世界の神が、衰退しつつある自分の管理する世界をどうにかしたいと禁じ手を使った。
禁じ手と言うのは、相互に管理する神の了解を得ずして勝手に魂を持ち去ることを言う。
僕の寿命はまだ十分あり、あの事故で人が死ぬのは病気の機長のみの予定だった。
日本の神が気を逸らされている間に、飛行機事故が引き起こされ僕の魂が引き抜かれたと言う。
まだ十分に生きる魂であり且つ大きな器を持つ僕は、この世界の神には喉から手が出そうなほどの人材だったようだ。
僕がたまたま鏡を祀って祈った事により、日本の神とのパスが繋がり今の状況だと言う。
残念な事に僕を日本で生き返らせることはできないようで、管理が不十分ですまなかった。と謝ってくれた日本の神には責任はないと思う。
別れ際に自分の力の一部を与えると言われたが、これ以上はいらないと断っておいた。】
これが神との語らいであった。
その背後で聞こえないほどの声が。
「私の色を付けていなければ、あの子への意地悪にならないでしょ。」
と言う神の言葉はエストニアには届かなかった。
ーー 学園生活 4
珍しく何も起こらなかった「黄の休み」を終えて学園に戻ってきた僕。
このところ怖いぐらいに平和が続いている。
すると脈絡もなく、この世界の唯一神を祀る「女神教」の司祭が僕の元に現れた。
「女神の啓示で貴方に伝えたいことがあると、私を差し向かわされました。是非私と共に神殿にてお祈りしてください。」
と言うものだった。
以前なら、「そうですか。」と言うことで付いて行っていたとこですが。この間の神との語らいで、真実を知った僕としては気分が乗らなかったので。
「申し訳ない、今手が離せないので私の手が空いた時にでも向かいます。」と丁寧にお断りをした。
その夜から寝苦しい日が続いているが・・・気のせいですよね。
夜な夜な女性の舌打ちが聞こえろような・・・気のせいと言って。
行軍訓練が行われる時期となった。
今回も昨年と同じような開催となった。
初等科としては最上級生となった僕らは後輩を指導する立場だ。
何故か今年は僕の装備を基本に揃えたという学園から、魔法の収納袋小と寝袋タイプの寝具が全員に配布された。
今年は冷え込みが厳しい白の季節で、行軍訓練時雪になった。
防寒対策が今回の行軍の要となる。
僕は商会に依頼し次の品物を納品させた。
・カイロ~小さいが10時間以上熱を持つ保温の道具
・加熱式弁当~紐を引くだけで暖かくなるお弁当
・ダウンジャケット~水鳥の羽で作ったワンピースタイプの冬服
・防水・防寒靴と手袋
である。
出発前に集合場所に臨時の店を開き、グループごとに購入を斡旋する。
ここでどれだけ安全策を取れるかも採点としてもらった。
それぞれの班が出発し、僕らは最後尾から様子を見守る。
天候は悪化の一途、一晩で雪が50cmも積もり更に降り続いている。吹雪になる可能性も考えられる。
積雪に足を取られ、体力を奪われて脱落する班が目立ってきた。
今回救援班を冒険者を雇って、後方に準備させていた僕は。
行軍が無理と判断した者たちを容赦なく回収して、後方に送り返していた。
残りは2つの班のみになった。
一つは王女と公爵令嬢の同行する班。もう一つは、雪国トラザール王国からの留学生が同行する班だ。
最終日何とか目的地に到着した2班のうち王女の同行した班を失格とした。
学園に戻り留学生の班が讃えられた。
その時公爵令嬢のルシリーア嬢が、僕に失格の判断にケチをつけた。
「私たちの班もほぼ同じ時刻に目的地に到着したのに何故、失格なのでしょう。明確なご説明をお願いします。」
とかちきな口調でしつもんしてきた。
「それではお答えしますが、行軍とは3日で終わるものとお考えですか?
さらに雪が積もればその場に数日間、足で目を喰らいますがその場合。
食料や水を得る具体的方法、吹雪や寒さを避けて身体を休める方法を教えてください。」
と言うと、「そな事は今回の訓練では関係ないでしょう。」と反論したので。
「実は、今回の訓練は行きと帰りの6日間を想定されていました。
残念ながらメアリースクイブ王女の参加された、班は既に体力の限界でそのまま訓練を続けていれば。
必ず死人が出る危険な状況でしたが、それすらも気付いていない様でしたので訓練を中止したのです。
留学生の班は、雪国の王国だけのことはあり。
雪の中で体力を奪われにくい行軍と吹雪で数日足止めをされても問題ない、知識と実践があったのです。
行軍訓練とは行軍を知ることもですが、行軍を指揮するべき立場に立つ者がいれば。
班員の命を守れる知識と行動力が必要となります、それを踏まえてお聞きします。
貴方がこの行軍の審査をする立場であれば、どう判断されますか?」
と尋ねると暫く下を向いていたが。
「私たちの班は、失格だと判断します。」
としっかりこちらを見て答えた。
その後留学生に雪の行軍の仕方や注意事項を真剣に教わっていた。
「貴方は私たち以上の知識をお持ちの様ですが、何処でそれを習ったのですか?」
とクリスタル王女にに質問されたので、
「昔、雪国で生活していたことがあったんですよ。」
と答えると「昔?」と頭を捻っていた。
ーー セガール公爵の娘ルシリーア嬢 side
今回の行軍訓練は絶対に負けられない訓練でした。
私は予想外の積雪にほとんどの班員が体力を失い気力を失いかけた時に、みんなを勇気づけて目的地に辿り着きました。もう班員は一歩も動けないほど疲れてはいましたが、やり切った満足がありました。
しかしエストニア伯爵は、私たちの恨を失格としたのです。
私はその判断がおかしいものと確信して抗議いたしました。
しかし帰ってきた言葉に、私は自分の犯した間違いに恐ろしさを覚えていました。
彼は言いました「元の訓練内容であれば必ず、誰かが死ぬとこだったと。」確かに今考えれば、私達が失格と判断されてもおかしくありません。
行軍は進むことが目的ではなく、進んだ先で行動することが目的なのです。
私は自分の勝ちたいと言う欲望に人の命をかけていたのです。
その後、屋敷に帰りお父様にその事をお話ししたら
「厳しい事を言う様だが、その判断は正しい。今回お前はとてもいい経験をしたと思える。失敗こそが学べる事もあろう。」
とおっしゃってくださりました。
しかしエストニア伯爵は何処であれほどの知識を得ているのでしょう?
不思議な方です。
白の季節の行軍訓練もなんとか終了し、もうすぐ青の季節です。
また領地に戻って進捗状況を確認する必要があるでしょうね。
ーー 青の休み。
流れる様に毎日が過ぎてゆき、平凡な日常を謳歌していた僕です。
休みを前にクロニアル子爵と今後の打ち合わせをしました。
パーティーの領地の開発状況を確認しながら、伯爵領の方向性を考えると言うものです。
旧メンドー男爵領は、新しい街で美しく清潔そして温泉施設がある領地です。
もう一つは、ダンジョンの街として発展しつつある街です。
そうなると僕の領地は何があるでしょう?
文化発祥の街にしてみましょう。
そこから常に流行が発信され、そこに行けばない物は無いと言える品揃えを実現しましょう。
◇
旧メンドー男爵領。
ここに来て2人の領地の名前をつけ忘れていることに気付いた。
「それでどうするんだい。一つにして一つの名にするのか、二つに分けるのか?」
と尋ねると2人は顔を見合わせて
「セルグナ男爵領のミリアの街・・に決めた。」
とモジモジしながら報告した。
「セルグナ男爵領だね。分かった。婚約はいつするんだ?」
と尋ねると
「先日婚約した。」
と答えた。
驚きだよ、パーティーメンバーにも言わずに水臭いけど。
お祝いを送っておこう、水臭いけど。僕は意外と根に持つ性格の様だ。
◇
レリーナ、セリーナ男爵領。
「この領地は2人で一つとするのか、それともそれぞれが責任を持つのかい。」
と尋ねると
「ダンジョンを中心に半分に分けて、ダンジョンの管理費や税を半分ぞつに分ける予定よ。」
と言うのでこの前、新しい街を建設できる様に線引きしておいたがあれをどうするのかと聞けば。
「あそこはちょうど中間地点の平原だったので、二つの領主邸を東西に建てて無駄をなくす様にしたいと思っているの。将来的には中心から分けられる様に重要な施設は中心に建てて、東西に出入り口をつけるように。」
と面白い街づくりをする様だ。
ついでにミリアのことを話したら、知っていました。
女性の情報網は侮れません。
ーー エストニア伯爵領の場合。
僕らは代官のエリス男爵に連絡を入れた。
「領内の開発進捗状況と問題点を報告してください。」
と言うと、エリス男爵は直ぐに報告を始めた。
「・・・・と言う状況です。問題点については、エストニア伯爵の直轄の商会の人気が素晴らしく周りの商会にもいい影響を与えているのですが、宿泊施設や商品の在庫不足が痛いです。」
と嬉しい悲鳴を言いながら、将来的な不安を教えてくれた。
クロニアル子爵と改めて領地の将来を見据えた、開発を話し合う。
目先の利益や賑わいに騙されることのない様に、強い経済を持たなければ将来性はない。
僕は日本人の頃の記憶を呼び起こしながら、遠回りの様だが将来的な手段を模索しながら開発を進めるのだった。
そんなことをしていたら、あっという間に青の休みは終わりを迎え学園に戻り時期になっていた。
ーー 学園生活
今年の青の季節は例年の魔物狩りについて、見直しがされる様だ。
その代わり、研究発表が国内向けに行われることになった。
学園長が僕に
・農地再生について
・衛生対策と病気について
の2点について発表をする様にと言われた。
これらについては僕自身が広めるべきだと感じていたので、二つ返事で了承した。
僕は農地再生につて、クロニアル子爵には衛生対策を発表してもらうことにして、連日健闘を繰り返した。
◇
研究発表の日。
国内ばかりか周辺国からも多くの著名人が傍聴に来ていた、今回の研究テーマの関心度の高さがわかる。
僕は、農地再生で実際に行った実験結果をもとに発表したところ大きな反響を得た。
クロニアル子爵の衛生対策についても、子供の生存率が大きく変わることを実例を挙げて説明すると。同じ様に反響が大きかった。
そのほかの研究テーマも長年の観察や試行錯誤の情報など、失敗こそに重要な情報があると絶賛された研究もあった。
全体的に大きな反響を世界に与えたと言える。
そこ発表の後、僕らは色々な場所の招かれて、指導を行った。
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