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スタンピード
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ーー 魔物のスタンピード 2
西の森に向かった僕らは、早くも森から溢れ始めた魔物と対峙することになった。
多くの学生が溢れるような魔物の姿に足をすくませている。
「ミリア、広域魔法を!」
「僕らが先陣を切るよ。」
と言いながら走り出す、ミリアの広域魔法が前方の魔物を吹き飛ばす。
僕らは走りながら目の前の魔物を横一列になって切り倒してゆく。
「クロニアル、魔法を!」
次々に逃げ出そうとする魔物にクロニアルの土魔法が炸裂する。
僕は後ろを振り向くと
「弱った魔物を仕留めてください。」
と声を張る。
その声で我に帰った高等科の学生が、撃ち漏らした魔物を倒してゆく。
30分ほどで第一陣と思える魔物の攻撃を潰し切った。
「怪我人はいませんか、今のうちに治療をして、不足する物は補充しておいてください。」
「次の魔物から今以上に大きな個体になる可能性があります。連携を崩さずに危ない場合は身の安全を優先してください。」
と指示しながらゆっくりと森に向かう。
森が見えて来たところで、森が膨らんだように見えた。その後森が吐き出すように魔物を放出する。
「魔物接近!班ごとに固まり迎撃せよ!」
と指示しながら僕は、雷撃を連発する。
周囲を白く染めるような光と耳をつん裂くような雷鳴が鳴り終わった時に、僕らと森の間にいた魔物は、燻るだけの肉塊に変わっていた。
「お見事です。エストニア子爵様。」
「皆、エストニア子爵様に続け!勝利は我らにあり。」
マッケンジー君が声を出し皆に檄を飛ばした。
士気を高めながら、森の縁で防衛線を築く。
土魔法が得意なものが次々と深い堀と高い体を構築してゆく、水魔法の得意な物は堀に水を充してゆく。
「ここに防衛線を構築できた、高等科の学生はここで森から出てくる魔物を防ぐように。我らは森に向かう。」
と指示をして僕はパーティーメンバーに集合をかける。
「最初の魔物類が足の速いもの、次がオークを中心とした中型から大型、次は足は遅いがかなり大型の魔物だと思う。強制はしないついてくるものだけ来てほしい。」
と言うとみんな笑顔で
「「「行くに決まっているだろう」」」
と答えてくれた、いい友達を持ったものだ。
◇
森へ。
俯瞰の魔法と気配察知のスキルで森の中に移動する大きな群れを確認した。
地竜を最後尾とした大型の魔物が主力のようだ。
先頭はビッグボアとフォーハンドベアーだ。
「クロニアル、ミリア大きな魔法をお願いするよ。」
と言うと2人は魔力を練り始める。
魔物を完全に捉えたその時2人から得意の攻撃魔法が乱れ打ちに打ち出された。
なかなか攻撃力が上がっているようだ、2人の魔法で先頭の魔物がほとんど撃ち倒された。
「次の魔物は大型だ、僕の魔法をかますよ。防御していてね。」
と言いながら先ほど以上の魔力で雷撃を雨のように魔物に叩きつけた。
「ううう、耳が痛い。」
メンバーの誰かの声が聞こえた。
静けさと共に肉が焦げたような匂いが漂う、その魔物達を吹き飛ばしながら3頭の地竜が現れた、まだ若い個体だ。
「血を流して弱っているぞ、剣を持って攻撃を加える。ブレスには気をつけるように。」
と注意して剣を抜き走り出す。
僕が中央、右がマッケンジーとレリーナ、左がミリア、クロニアル、セリーナだ。
僕は剣に炎の属性を纏わせて正面から地竜の頭を叩き割る。
頭に吸い込まれるような入った剣がその斬撃を遥か先まで伝える。
地面を切り裂くような斬撃が止まると、地竜が縦に二つとなって倒れていた。
僕は直ぐに右を見る、マッケンジー君の剣が首を切り裂くところだった。
左を見るとクロニアル君の魔法でダメージを受けた地竜にセリーナが前足を切り飛ばしていた。
そこにミリアの魔法が頭に叩き込まれ瀕死の地竜にクロニアル君の土魔法が下から地竜の心臓を穿ち討伐終了。
周辺には動けるような魔物はおらず、トドメを刺しながら収納して戻った。
森を出て防衛線を見るとそこにも多くの魔物が倒れていた。
他のルートからの魔物がいたようだが、撃ち漏らしはいないようだ。
完全勝利だ。
僕らは防衛線でしばらく森を見張ることにして、第一報を王城と学園に向かわせた。
ーー 魔物のスタンピード 3
その報告が来たのは、野営を始めてしばらくした時だった。
「王都の東側、メンドー男爵領地でスタンピード発生。男爵領は壊滅状態、魔物は王都に向けて進行中、応援せよ。」
と言うものだった。
「エストニア子爵様どうしますか。移動時間を考えると僕らが王都に戻る時間で魔物も王都に着いている可能性が高いですが。」
と言うマッケンジー君の予想は多分正解だろう。
「大丈夫だ。僕の新しい魔法がある。」
この数なら可能だろう、直ぐに高等科の学生を呼び
「ここの防衛と監視は高等科に任せる。僕らは今から東に向かうよろしく。」
と言うとメンバーを集め手を握り合うと
「転移」
と唱えて王都東の目標とした転移ポイントの地蔵を思い描く。
目眩のような感覚の後風景は切り替わり、直ぐ先に多くの兵士の姿が目に入った。
直ぐに本隊の司令官を探して
「下命を受けて参上しました、エストニア子爵です。戦況を教えてください。」
と言うと
「おお貴方がエストニア子爵様。戦況は現在かなり悪い状況です。メンドー男爵領からの魔物は石化の魔眼を持つバジリスクと空の災悪ワイバーンの群れです。
今、夜のため魔物の動きが鈍いが陽が昇れば、ワイバーンの攻撃が始まると教えてくれた。
僕が以前に作っておいた異常耐性用のポーションをメンバーに手渡すと
「僕はワイバーンを片付けるからバジリクスを頼むよみんな。」
と言いながら二手に分かれた。
◇
防衛戦の先に陣取る僕、陽が昇り出し遠くの空にワイバーンの影が・・・10。
魔力を練り上げながら一頭も逃さないように狙いをつけて
「ライジン」
と唱える。
空を切り裂くような音と光。
その後には地上に這いつくばるワイバーンの姿。
僕は素早く移動するとワイバーンにトドメを刺しながら収納する。
防衛戦を見るとバジリスクをはじめとする魔物が魔法攻撃を受けているところだった。
僕も防衛戦の方の走り出す、飛び出したマッケンジー君らが剣でバジリクスを切り裂くのが見えた。
僕は後ろ側から魔物を切り捨てながらみんなに合流する。
「みんな下がっておいて」
そう言うと魔力を可能な限り高めると
「アース・ホール」
と唱える、空に突然黒雲が渦巻き、そこから無数の大岩が降り落ちてくる。
「ドコーン、ドドドーン。」
繰り返し大地が揺さぶられるような振動と砂煙。
静まった時に見えたのは、大岩の山に押しつぶされた魔物の死体。
「疲れたよ。」
僕はそう言うと座り込んだ、魔力を使いすぎたようだ。
驚速な眠気が僕を襲う、誰かの声が聞こえたようだが返事するのもおっくうだ。
僕は深い眠りについた。
ーー スタンピードのその後
僕は数日間眠っていたようだ。
目を覚まして目に入ったのは、心配そうに見つめるお母様の顔だった。
「おはようございます。お母様、今日の天気はどうですか?」
と声をかけた僕の顔を見た、お母様はにっこり笑って
「いい天気ですよ。貴方のおかげで。」
と言うと鏡を持ってこさせた。
「鏡なんかどうしたのですか?」
と聞く僕に
「貴方も使命を果たしたようですよ。成長していますよ。」
と鏡を渡してくれた。
顔を見ると確かに幼い童顔が青年のような精悍さを見せる顔に。
ベッドから降りると視線が変わっている、お母様とほぼ同じだ。
「いい男になりましたか?」
とおどけて見せるとお母様は
「はい大変立派な殿方になりましたよ。外に出ると大変になりそうです。」
と笑って合わせてくれた。
魔物のスタンピードの後始末は大変な作業のようだった。
山のように積み上がった大岩を収納袋に入れながら排除し、クレーター出来た街道を舗装し直すなどの作業が多かったと。
最も被害のひどいメンドー男爵領は、ほとんどの建物や田畑が破壊されてしばらくは人が住めないだろうと言われているそうだ。
それども大規模なスタンピードの割には被害がこれだけで済んだのは、お父様の迅速な判断と僕らの活躍が目に見えて大きかったとお母様は教えてくれた。
ーー セガール国王 side
「此度の恩賞について意見はあるか?」
と国王が面前の4公(候)に意見を求めた。
当事者的ケンドール公爵やサンドール侯爵は口をつぐむ。
セガール公爵が重い口を開く。
「此度のスタンピードは国家存亡を揺るがす恐れのあるものでした。これをここまでの被害で抑えた事は、誰の目からも明らかな功績です。
領地のない者には領地を、エストニア子爵は伯爵位をクロニアル男爵には子爵位を与えるのが相当かと。」
と意見を述べるとそれ以外の意見は出なかった。
「分かった。ただ王国も被害が大きく余力がない、そこでメンドー男爵領の跡地をマッケンジー、ミリア男爵にセリーナ、レリーナには王家の所領を分割して恩賞として渡すことにしよう。メンドー男爵領地については向こう10年の無税を申し渡すとしよう。」
と、国王の言葉で決まった。
◇
数日後国王の間に並ぶ6人の若者。
国王自らその功績を讃えられ、恩賞を手に城を下がった。
「これからについて食事をしながら話をしよう。」
と僕が言うと
「「「エストニア伯爵の屋敷でね」」」
と答えるみんな。
場所を移動し、既に準備が終わっていたケンドール公爵王都の屋敷。
「「みなさんお待ちしていましたよ。」」
と僕のお母様とクロニアル子爵のお母様が笑顔で迎えてくれた。
僕はマッケンジー男爵とミリア男爵に
「10年かけて街を作るなら協力するよ。」
と声をかけると
「「お願いします」」
と答える2人、僕は
「公爵領の人材育成が軌道に乗っていて、いい人材がいっぱいいるよ。お金自体は魔物狩りでゆとりもあるし、3頭の地竜は4人に差し上げるからそれも使っていいからね。」
と言うと
「地竜3頭分ならかなりの開発ができそうだ。」
と笑顔になるマッケンジー男爵。
その後は明るい未来の話をしながら楽しい食事会になった。
ーー それぞれの母親達
ケンドール公爵夫人。
ほんと心配したわ。エストが倒れたと聞いた時は。
屋敷に運ばれたあの子を見たら、私ホッとしたの。
だってぐっすり眠っていたんだもの。
その上身体が急激に成長したようで、すっかり青年のような姿に。
もっと可愛い姿のエストでいてほしかったわ。
サンドール侯爵夫人。
王国の危機に私の息子が大活躍したと夫から連絡を受け、心を躍らせて息子の帰りを待っていると。
また少し大人びたクロニアルが帰ってきたわ。
「ただいま戻りました。お母様僕は王国の貴族として役目を果たして来ました。」
と誇らしげに言う息子がとても愛おしかったの。
その日遅くに帰ってきた夫と話をしたのですが、暫く息子を領地経営のための勉強のために親友の息子エストニア伯爵に預けることにしたのです。
エストニア伯爵の領地経営は幼い頃から数十年先を見据えたもので、それが今花開き始めていると聞いたからです。
共に切磋琢磨して立派な領主になってほしいものです。
セルグナ伯爵夫人。
息子マッケンジーが大きな手柄をあげて、領地持ちの男爵となった。
三男で将来の夢は夫の指揮する王都の騎士隊の騎士だと幼い頃から言っていたのに。
最近のマッケンジーは夫も顔が綻ぶほど大活躍で、これもエストニア伯爵のおかげある事は間違い無いでしょう。
おかげで私もケンドール公爵夫人の派閥の中心に居場所を作ることができました。
今回のことであの秘薬をいただきました。
もうすぐに使わなければなりません。明日の朝の夫の顔が実物だわ。
センドー男爵夫人
私の娘がケンドール公爵の息子エストニア伯爵とパーティーを組み色々と活躍している話は、息子ケントからも聞いていましたが。
どこまで本当のことかと半信半疑のところがありました、だってまだ9歳になったばかりなのです、姿こそ15・6歳の女性に見えるほど成長してはいますが。
しかし今回、男爵として領地を拝領したと聞きました。
もう夫と同じ爵位です。
後は良い縁談を望むばかりです。
それととうとう私にもあの秘薬が送られました。
これからいただきますが、明日から化粧品や洋服を作り直さなければならないかもしれないわ。
でもあの子が仕送りしてくれたお金がるから、余裕ね。
コールマン準男爵夫人、トータル騎士爵夫人。
私たちは昔から仲が良かった。
今日も娘達の活躍を知って、一緒にトータル騎士爵家の新しい屋敷に来ていたら。
私たち宛にケンドール公爵夫人からお手紙と小包が届けられた。
中を開けてびっくり、あの秘薬がそれぞれに送られてきていたの。
手紙には娘達の活躍とその後の恩賞で領地持ちの男爵に叙せられたと書いてあったわ。
喜び合う私たちはそのまま秘薬を飲んでみたの。
お互いが相手を見て驚きながら、涙を流して笑ったのよ。
私達も王都に向かうためドレスを新調するために、ケンドールの街の商会を呼びつけて3着ずつドレスを新調した時には2人とも昔に戻ったみたいだった。
「私達良い娘を持って幸せね。」
とお祝いのワインを飲みながら語ったの。
西の森に向かった僕らは、早くも森から溢れ始めた魔物と対峙することになった。
多くの学生が溢れるような魔物の姿に足をすくませている。
「ミリア、広域魔法を!」
「僕らが先陣を切るよ。」
と言いながら走り出す、ミリアの広域魔法が前方の魔物を吹き飛ばす。
僕らは走りながら目の前の魔物を横一列になって切り倒してゆく。
「クロニアル、魔法を!」
次々に逃げ出そうとする魔物にクロニアルの土魔法が炸裂する。
僕は後ろを振り向くと
「弱った魔物を仕留めてください。」
と声を張る。
その声で我に帰った高等科の学生が、撃ち漏らした魔物を倒してゆく。
30分ほどで第一陣と思える魔物の攻撃を潰し切った。
「怪我人はいませんか、今のうちに治療をして、不足する物は補充しておいてください。」
「次の魔物から今以上に大きな個体になる可能性があります。連携を崩さずに危ない場合は身の安全を優先してください。」
と指示しながらゆっくりと森に向かう。
森が見えて来たところで、森が膨らんだように見えた。その後森が吐き出すように魔物を放出する。
「魔物接近!班ごとに固まり迎撃せよ!」
と指示しながら僕は、雷撃を連発する。
周囲を白く染めるような光と耳をつん裂くような雷鳴が鳴り終わった時に、僕らと森の間にいた魔物は、燻るだけの肉塊に変わっていた。
「お見事です。エストニア子爵様。」
「皆、エストニア子爵様に続け!勝利は我らにあり。」
マッケンジー君が声を出し皆に檄を飛ばした。
士気を高めながら、森の縁で防衛線を築く。
土魔法が得意なものが次々と深い堀と高い体を構築してゆく、水魔法の得意な物は堀に水を充してゆく。
「ここに防衛線を構築できた、高等科の学生はここで森から出てくる魔物を防ぐように。我らは森に向かう。」
と指示をして僕はパーティーメンバーに集合をかける。
「最初の魔物類が足の速いもの、次がオークを中心とした中型から大型、次は足は遅いがかなり大型の魔物だと思う。強制はしないついてくるものだけ来てほしい。」
と言うとみんな笑顔で
「「「行くに決まっているだろう」」」
と答えてくれた、いい友達を持ったものだ。
◇
森へ。
俯瞰の魔法と気配察知のスキルで森の中に移動する大きな群れを確認した。
地竜を最後尾とした大型の魔物が主力のようだ。
先頭はビッグボアとフォーハンドベアーだ。
「クロニアル、ミリア大きな魔法をお願いするよ。」
と言うと2人は魔力を練り始める。
魔物を完全に捉えたその時2人から得意の攻撃魔法が乱れ打ちに打ち出された。
なかなか攻撃力が上がっているようだ、2人の魔法で先頭の魔物がほとんど撃ち倒された。
「次の魔物は大型だ、僕の魔法をかますよ。防御していてね。」
と言いながら先ほど以上の魔力で雷撃を雨のように魔物に叩きつけた。
「ううう、耳が痛い。」
メンバーの誰かの声が聞こえた。
静けさと共に肉が焦げたような匂いが漂う、その魔物達を吹き飛ばしながら3頭の地竜が現れた、まだ若い個体だ。
「血を流して弱っているぞ、剣を持って攻撃を加える。ブレスには気をつけるように。」
と注意して剣を抜き走り出す。
僕が中央、右がマッケンジーとレリーナ、左がミリア、クロニアル、セリーナだ。
僕は剣に炎の属性を纏わせて正面から地竜の頭を叩き割る。
頭に吸い込まれるような入った剣がその斬撃を遥か先まで伝える。
地面を切り裂くような斬撃が止まると、地竜が縦に二つとなって倒れていた。
僕は直ぐに右を見る、マッケンジー君の剣が首を切り裂くところだった。
左を見るとクロニアル君の魔法でダメージを受けた地竜にセリーナが前足を切り飛ばしていた。
そこにミリアの魔法が頭に叩き込まれ瀕死の地竜にクロニアル君の土魔法が下から地竜の心臓を穿ち討伐終了。
周辺には動けるような魔物はおらず、トドメを刺しながら収納して戻った。
森を出て防衛線を見るとそこにも多くの魔物が倒れていた。
他のルートからの魔物がいたようだが、撃ち漏らしはいないようだ。
完全勝利だ。
僕らは防衛線でしばらく森を見張ることにして、第一報を王城と学園に向かわせた。
ーー 魔物のスタンピード 3
その報告が来たのは、野営を始めてしばらくした時だった。
「王都の東側、メンドー男爵領地でスタンピード発生。男爵領は壊滅状態、魔物は王都に向けて進行中、応援せよ。」
と言うものだった。
「エストニア子爵様どうしますか。移動時間を考えると僕らが王都に戻る時間で魔物も王都に着いている可能性が高いですが。」
と言うマッケンジー君の予想は多分正解だろう。
「大丈夫だ。僕の新しい魔法がある。」
この数なら可能だろう、直ぐに高等科の学生を呼び
「ここの防衛と監視は高等科に任せる。僕らは今から東に向かうよろしく。」
と言うとメンバーを集め手を握り合うと
「転移」
と唱えて王都東の目標とした転移ポイントの地蔵を思い描く。
目眩のような感覚の後風景は切り替わり、直ぐ先に多くの兵士の姿が目に入った。
直ぐに本隊の司令官を探して
「下命を受けて参上しました、エストニア子爵です。戦況を教えてください。」
と言うと
「おお貴方がエストニア子爵様。戦況は現在かなり悪い状況です。メンドー男爵領からの魔物は石化の魔眼を持つバジリスクと空の災悪ワイバーンの群れです。
今、夜のため魔物の動きが鈍いが陽が昇れば、ワイバーンの攻撃が始まると教えてくれた。
僕が以前に作っておいた異常耐性用のポーションをメンバーに手渡すと
「僕はワイバーンを片付けるからバジリクスを頼むよみんな。」
と言いながら二手に分かれた。
◇
防衛戦の先に陣取る僕、陽が昇り出し遠くの空にワイバーンの影が・・・10。
魔力を練り上げながら一頭も逃さないように狙いをつけて
「ライジン」
と唱える。
空を切り裂くような音と光。
その後には地上に這いつくばるワイバーンの姿。
僕は素早く移動するとワイバーンにトドメを刺しながら収納する。
防衛戦を見るとバジリスクをはじめとする魔物が魔法攻撃を受けているところだった。
僕も防衛戦の方の走り出す、飛び出したマッケンジー君らが剣でバジリクスを切り裂くのが見えた。
僕は後ろ側から魔物を切り捨てながらみんなに合流する。
「みんな下がっておいて」
そう言うと魔力を可能な限り高めると
「アース・ホール」
と唱える、空に突然黒雲が渦巻き、そこから無数の大岩が降り落ちてくる。
「ドコーン、ドドドーン。」
繰り返し大地が揺さぶられるような振動と砂煙。
静まった時に見えたのは、大岩の山に押しつぶされた魔物の死体。
「疲れたよ。」
僕はそう言うと座り込んだ、魔力を使いすぎたようだ。
驚速な眠気が僕を襲う、誰かの声が聞こえたようだが返事するのもおっくうだ。
僕は深い眠りについた。
ーー スタンピードのその後
僕は数日間眠っていたようだ。
目を覚まして目に入ったのは、心配そうに見つめるお母様の顔だった。
「おはようございます。お母様、今日の天気はどうですか?」
と声をかけた僕の顔を見た、お母様はにっこり笑って
「いい天気ですよ。貴方のおかげで。」
と言うと鏡を持ってこさせた。
「鏡なんかどうしたのですか?」
と聞く僕に
「貴方も使命を果たしたようですよ。成長していますよ。」
と鏡を渡してくれた。
顔を見ると確かに幼い童顔が青年のような精悍さを見せる顔に。
ベッドから降りると視線が変わっている、お母様とほぼ同じだ。
「いい男になりましたか?」
とおどけて見せるとお母様は
「はい大変立派な殿方になりましたよ。外に出ると大変になりそうです。」
と笑って合わせてくれた。
魔物のスタンピードの後始末は大変な作業のようだった。
山のように積み上がった大岩を収納袋に入れながら排除し、クレーター出来た街道を舗装し直すなどの作業が多かったと。
最も被害のひどいメンドー男爵領は、ほとんどの建物や田畑が破壊されてしばらくは人が住めないだろうと言われているそうだ。
それども大規模なスタンピードの割には被害がこれだけで済んだのは、お父様の迅速な判断と僕らの活躍が目に見えて大きかったとお母様は教えてくれた。
ーー セガール国王 side
「此度の恩賞について意見はあるか?」
と国王が面前の4公(候)に意見を求めた。
当事者的ケンドール公爵やサンドール侯爵は口をつぐむ。
セガール公爵が重い口を開く。
「此度のスタンピードは国家存亡を揺るがす恐れのあるものでした。これをここまでの被害で抑えた事は、誰の目からも明らかな功績です。
領地のない者には領地を、エストニア子爵は伯爵位をクロニアル男爵には子爵位を与えるのが相当かと。」
と意見を述べるとそれ以外の意見は出なかった。
「分かった。ただ王国も被害が大きく余力がない、そこでメンドー男爵領の跡地をマッケンジー、ミリア男爵にセリーナ、レリーナには王家の所領を分割して恩賞として渡すことにしよう。メンドー男爵領地については向こう10年の無税を申し渡すとしよう。」
と、国王の言葉で決まった。
◇
数日後国王の間に並ぶ6人の若者。
国王自らその功績を讃えられ、恩賞を手に城を下がった。
「これからについて食事をしながら話をしよう。」
と僕が言うと
「「「エストニア伯爵の屋敷でね」」」
と答えるみんな。
場所を移動し、既に準備が終わっていたケンドール公爵王都の屋敷。
「「みなさんお待ちしていましたよ。」」
と僕のお母様とクロニアル子爵のお母様が笑顔で迎えてくれた。
僕はマッケンジー男爵とミリア男爵に
「10年かけて街を作るなら協力するよ。」
と声をかけると
「「お願いします」」
と答える2人、僕は
「公爵領の人材育成が軌道に乗っていて、いい人材がいっぱいいるよ。お金自体は魔物狩りでゆとりもあるし、3頭の地竜は4人に差し上げるからそれも使っていいからね。」
と言うと
「地竜3頭分ならかなりの開発ができそうだ。」
と笑顔になるマッケンジー男爵。
その後は明るい未来の話をしながら楽しい食事会になった。
ーー それぞれの母親達
ケンドール公爵夫人。
ほんと心配したわ。エストが倒れたと聞いた時は。
屋敷に運ばれたあの子を見たら、私ホッとしたの。
だってぐっすり眠っていたんだもの。
その上身体が急激に成長したようで、すっかり青年のような姿に。
もっと可愛い姿のエストでいてほしかったわ。
サンドール侯爵夫人。
王国の危機に私の息子が大活躍したと夫から連絡を受け、心を躍らせて息子の帰りを待っていると。
また少し大人びたクロニアルが帰ってきたわ。
「ただいま戻りました。お母様僕は王国の貴族として役目を果たして来ました。」
と誇らしげに言う息子がとても愛おしかったの。
その日遅くに帰ってきた夫と話をしたのですが、暫く息子を領地経営のための勉強のために親友の息子エストニア伯爵に預けることにしたのです。
エストニア伯爵の領地経営は幼い頃から数十年先を見据えたもので、それが今花開き始めていると聞いたからです。
共に切磋琢磨して立派な領主になってほしいものです。
セルグナ伯爵夫人。
息子マッケンジーが大きな手柄をあげて、領地持ちの男爵となった。
三男で将来の夢は夫の指揮する王都の騎士隊の騎士だと幼い頃から言っていたのに。
最近のマッケンジーは夫も顔が綻ぶほど大活躍で、これもエストニア伯爵のおかげある事は間違い無いでしょう。
おかげで私もケンドール公爵夫人の派閥の中心に居場所を作ることができました。
今回のことであの秘薬をいただきました。
もうすぐに使わなければなりません。明日の朝の夫の顔が実物だわ。
センドー男爵夫人
私の娘がケンドール公爵の息子エストニア伯爵とパーティーを組み色々と活躍している話は、息子ケントからも聞いていましたが。
どこまで本当のことかと半信半疑のところがありました、だってまだ9歳になったばかりなのです、姿こそ15・6歳の女性に見えるほど成長してはいますが。
しかし今回、男爵として領地を拝領したと聞きました。
もう夫と同じ爵位です。
後は良い縁談を望むばかりです。
それととうとう私にもあの秘薬が送られました。
これからいただきますが、明日から化粧品や洋服を作り直さなければならないかもしれないわ。
でもあの子が仕送りしてくれたお金がるから、余裕ね。
コールマン準男爵夫人、トータル騎士爵夫人。
私たちは昔から仲が良かった。
今日も娘達の活躍を知って、一緒にトータル騎士爵家の新しい屋敷に来ていたら。
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中を開けてびっくり、あの秘薬がそれぞれに送られてきていたの。
手紙には娘達の活躍とその後の恩賞で領地持ちの男爵に叙せられたと書いてあったわ。
喜び合う私たちはそのまま秘薬を飲んでみたの。
お互いが相手を見て驚きながら、涙を流して笑ったのよ。
私達も王都に向かうためドレスを新調するために、ケンドールの街の商会を呼びつけて3着ずつドレスを新調した時には2人とも昔に戻ったみたいだった。
「私達良い娘を持って幸せね。」
とお祝いのワインを飲みながら語ったの。
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言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
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