17 / 67
卒業式と社交の花たち
しおりを挟む
ーー 卒業式と就職面接
黄の休みを目前に学園の卒業式が行われる。
当然寮長を任されていたミカエル先輩も卒業だ。
「ミカエル先輩。卒業後の行く先は決まっているんですか?」
と聞くとクロエ男爵家の三男に良い勤め先は当然ない。
「答えにくいことを平気で聞くな。エストニア子爵様が雇っていただけるなら、粉骨砕身頑張りますよ。」
と言うと
「はい、採用です。」
と一枚の書類を差し出して去っていった。
その書類には、エストニア子爵領家臣として騎士爵に命ずる。
と言う意味のことが書かれていた。
「本当に・・家臣に、それも騎士爵に。」
それを聞いてた他の卒業生が、我こそはとばかりに就職を希望してきた。
騎士爵と言う貴族位は、男爵家以上であれば任命できる貴族位であるがその年金は任命者が負担することになる。
お金が有り余るエストニア子爵なら幾らでも騎士爵の貴族位を授けることが可能なのだ。
皆が押しかけるのも頷ける話だ。
その後面接をして20人ほど召し抱えたエストニア子爵は、領地の管理や新たな産業を託したのだった。
領地の開拓の話はまた次の機会にお話ししましょう。
ーー 黄の休日。
メアリースクイブ王女の入学式。
「ルシリーア様、今年の新入生は特に目立つ人はいませんわね。」
と仲良しのセガール公爵家の一人娘に話しかける、メアリースクイブ王女。
「そうですわね。昨年のエストニア子爵様のような殿方がいらっしゃれば面白いのにね。」
と呟くルシリーア嬢。
退屈な式を終えると女王は、
「明日、ケンドール公爵家のお屋敷にお母様とお茶会に誘われているのですが、ルシリーア様も行きませんか?」
と声をかける、悩むルシリーア嬢。
お呼ばれもしていないお屋敷にお邪魔するのははばかれるのである。
「大丈夫ですわ、私も直接はお呼ばれされていません。エストニア子爵様に直接お話をしたのです、その際お友達を連れていってもいいかとお聞きしております。」
と言われては断ることもできず、
「分かりましたわ。」
と返事をしていた。
自宅に帰り、家に居たお母様に
「お母様、メアリースクイブ女王に誘われて・・エストニア子爵様の屋敷に誘われたのですが。伺っても良いものでしょうか?」
と不安がる娘に公爵夫人は
「問題ないわ。ちょうど私もお呼ばれされているのよ。一緒にいきましょう。」
と言われほっとするルシリーア嬢。
その様子を見ていたカルメン公爵夫人は、
「我が国の4公(候)のうち3つの家の夫婦は皆、学園で同じ頃に在学していた者ばかり。
仲も悪くはなかったけど、どうしても・・比べてしまうのよね。」
と呟いた。
◇
次の日。
馬車でケンドール公爵家に向かう王妃と王女。
お茶会には、4公(候)が呼ばれていた。他には騎士団長のセルグナ伯爵など重鎮ばかり。
それぞれの子供も来ていた。
「エストニア子爵様初めまして、セガール公爵の娘ルシリーアです。良き出会いに感謝を。」
と挨拶を済ませた、ルシリーア嬢が次に挨拶をしたのがクロニアル君だった。
「クロニアル様初めまして、セガール公爵の娘ルシリーアです。良き出会いに感謝を。」
「こちらこそ宜しく。ルシリーア様は今度入学だったよね。」
とクロニアル君は上手に話を振りながら会話を続ける。
「王女様のご学友とお聞きしましたが、ルシリーア様は魔法がお得意とお聞きしました。お二人でお勉強をされているのですか?」
と小耳にした情報を混ぜると
「流石クロニアル様、情報通ですね。でも私の魔法はまだまだですのよ。」
と軽く流されて話が終わる。
そこにメアリースクイブ王女が現れる。
「私の親友に言い寄られているのは、クロニアル様ではないですか。お好みは守ってあげたい感のある女性ですか?」
と少し黒い。
「これはメアリースクイブ王女、話し相手が姿を見せないので寂しそうなレディーに話しかけるのは、紳士の嗜みですよ。」
と返すクロニアル君。
メアリースクイブ王女は一旦その場を離れると、ルシリーア嬢と両手に飲み物とデザートを持って戻ってきた。
「少々はしたないですけど、ご一緒にお茶にいたしましょ。」
と声をかけてきた。
4人でデザートのラズベリーのタルトケーキにスプーンをつけると、
「この見た目が宝石のようなデザートが、鮮烈な甘味と酸味をスプーン一口でそれを私にもたらす。これがとても素敵なんですよ。これを考えられたのは、エストニア子爵様なのでしょう。素晴らしいわ。」
とメアリースクイブ王女の食レポに、僕は本日初出しのショートケーキを収納から取り出し、テーブルに並べた。
「これは・・デザートの宝石箱ですか?」
と驚嘆の王女。
僕が出したのは、長方形にカットされた各種ショートケーキをモザイク模様のように並べたものだったのです。
「こんな美しいデザートは見たことがありませんわ。」
ルシリーア嬢も興奮しながら、王女と争うように食べ始めた。
何処の世でも女性は甘いものから逃げることはできないのですね。
◇
王妃は、このパーティーでどこまで自分の立ち位置を決められるかが女性の社交の勝負と考えていた。
息子や娘を死の淵から引き上げてくれたとはいえ、王妃として社交の主導権を簡単には渡せないと思っていたからだ。
「王妃様、よくいらしてくださりました。王女様も美しくなられたようで、羨ましいわ。私もサンドール侯爵夫人も息子しかいないので、一緒にお買い物もままならなくて。」
とケンドール公爵夫人が話しかける。
「これはケンドール公爵夫人、今日の日を楽しみにしておりましたのよ。あなたのパーティーでは、初めてでかつ素敵なものがお披露目されるから。今日はどんなもので私達を驚かせるのか楽しみだわ。」
この言葉は半分本当で半分は、もうネタ切れでしょ。と言う意味があった。
すると微笑みを湛えたままケンドール公爵夫人は
「それでは今日の目玉を幾つかお披露目しましょう。」
と言うと合図を出した。
会場に音楽が流れ出す、初めて耳にする素敵なメロディーの曲。
そして照明が落ちる、スポットライトがある扉を照らす。
扉が開かれると、そこから次々に新たな料理が・・最後の現れたのは。
人の背丈ほどの塔のようなケーキ。
明りが戻ると光るような美しい器に乗せられた料理の数々と、圧倒的な存在のケーキ。
そして夫人は
「今日は王妃様以下この国の社交の花が集っています、そして私はその花たちに一つの奇跡を届けようと思っております。」
と言うとポシェットから木箱を取り出し蓋を開けると、美しいガラスの小瓶が並んでいます。
「これは息子エストニアが、ドラゴンを討伐して手に入れた素材から作り上げた若返りの薬です。時間を停止する魔法がなければ劣化してしまう、貴重で希少な薬です。私は今宵ここに集いし社交の花たちにこの秘薬を差し上げたいと思っております。私が毒味を兼ねてまず頂きます。」
と言いながら一つを取り出し、飲み干した。
すると淡く身体が光に包まれ、光が収まるとそこには。
「まあー。本当に若返っていますわ。」
1人の貴婦人が思わずそう漏らした。
するとサンドール侯爵夫人も小瓶を一つ取り出すと、躊躇なく飲み干した。
夫人も同じように淡く光に包まれると、10歳は若返ったのが分かった。
「私達、女学生に戻った感じですわね。」
とサンドール侯爵夫人が呟くと、
「私にも下さらない。」
と次々に貴婦人が集まり秘薬を飲み始めた。
すると誰1人失敗することなく若返ったのです。
ケンドール公爵夫人は小瓶を一つ手に取り、王妃に差し出す。
王妃は悩んでいた、若返りに秘薬は喉から手が出るほど欲しいが。
これを手にすれば私は、公爵夫人から逃げられない。
呼吸一つ二つの間の後、王妃は秘薬を飲み干していた。
「お母様、何と言うことでしょ。お母様がお姉様のような若々しさを。」
王女の言葉に王妃は、後悔してはいなかった。
この時、セガール王国の社交はケンドール公爵夫人が牛耳ったのだった。
ーー エストニアの工房にて。
「エスト、お母様のお願いを聞いて欲しいのです。」
とお母様が僕に珍しくおねだりをしてきた。
「お母様の為なら幾らでもお手伝いいたしますよ。何を作ればいいのでしょうか?」
と尋ねると。
「今度我が家で王妃様以下主だった貴婦人を呼んでのパーティーを開く予定なの。そこで目玉の、そうどこでも真似のできないようなものが欲しいの。」
と言うので僕はちょうどいいものを作っていたことを思い出した。
「お母様、ちょうど良いものがあります。エリクサーを作った際にもう一種類作ったんですが。」
と収納から小瓶を取り出して見せた。
「これはドラゴンの血液と魔力を鱗の粉で混ぜ合わせた物で、若返りの秘薬です。予想ですがその人の一番美しい頃まで若返ると思います。」
と説明した。
するとお母様は、
「よく出来ましたね。今日ほどエストを息子に持って良かったと思ったことはありません。ただ若返りすぎるのはダメです。もう少しそう10歳くらい若返るように調整できますか?」
と言うので「簡単です」と答えてお母様の言う数を揃えた。
料理屋音楽は僕の記憶の中から今現在再現可能なものを10品ほど用意することで話は決まりました。
ーー クレア=サンドール公爵夫人
ケイトから手紙が届いた、ケンドール公爵家で開催されるパーティーの招待状と別に特別な手紙が。
とうとうやる気なのね。あの子この国の社交をものにすると言っていたけど・・出来たのかしら特別のものが。
と思いながら手紙を読むと信じられない話が。
「本当に若返りの秘薬ができたの?それなら誰も勝てはしないわ。私も飲んで若返らなくちゃ。うふふ。」
その日からテンションの高い私に夫が
「楽しそうだが何か良いことがあったのか?」
と聞いてきた
「もう直ぐあるのよ。あなたも驚くと思うわ。」
と返しておいた。
ーー メアリースクイブ王女
このパーティーでは何かがあると私は感じていた。
そして幾つものの奇跡の後に本当の奇跡が訪れた。
「若返りの秘薬・・どういう意味?」
と思っていたら公爵夫人があっという間に若返り、そして侯爵夫人がそして他の貴婦人らが・・最後の王妃であるお母様が!
私思わず
「お母様がお姉様のような若々しさに。」
と口にしていたのです。
そしてお母様の全てを納得したような笑顔が。
私もあの恐ろしい社交に乗り出さなければならないのですね。
その時私は腹を決めたの。あの人に想いをきっと遂げてみせると。
黄の休みを目前に学園の卒業式が行われる。
当然寮長を任されていたミカエル先輩も卒業だ。
「ミカエル先輩。卒業後の行く先は決まっているんですか?」
と聞くとクロエ男爵家の三男に良い勤め先は当然ない。
「答えにくいことを平気で聞くな。エストニア子爵様が雇っていただけるなら、粉骨砕身頑張りますよ。」
と言うと
「はい、採用です。」
と一枚の書類を差し出して去っていった。
その書類には、エストニア子爵領家臣として騎士爵に命ずる。
と言う意味のことが書かれていた。
「本当に・・家臣に、それも騎士爵に。」
それを聞いてた他の卒業生が、我こそはとばかりに就職を希望してきた。
騎士爵と言う貴族位は、男爵家以上であれば任命できる貴族位であるがその年金は任命者が負担することになる。
お金が有り余るエストニア子爵なら幾らでも騎士爵の貴族位を授けることが可能なのだ。
皆が押しかけるのも頷ける話だ。
その後面接をして20人ほど召し抱えたエストニア子爵は、領地の管理や新たな産業を託したのだった。
領地の開拓の話はまた次の機会にお話ししましょう。
ーー 黄の休日。
メアリースクイブ王女の入学式。
「ルシリーア様、今年の新入生は特に目立つ人はいませんわね。」
と仲良しのセガール公爵家の一人娘に話しかける、メアリースクイブ王女。
「そうですわね。昨年のエストニア子爵様のような殿方がいらっしゃれば面白いのにね。」
と呟くルシリーア嬢。
退屈な式を終えると女王は、
「明日、ケンドール公爵家のお屋敷にお母様とお茶会に誘われているのですが、ルシリーア様も行きませんか?」
と声をかける、悩むルシリーア嬢。
お呼ばれもしていないお屋敷にお邪魔するのははばかれるのである。
「大丈夫ですわ、私も直接はお呼ばれされていません。エストニア子爵様に直接お話をしたのです、その際お友達を連れていってもいいかとお聞きしております。」
と言われては断ることもできず、
「分かりましたわ。」
と返事をしていた。
自宅に帰り、家に居たお母様に
「お母様、メアリースクイブ女王に誘われて・・エストニア子爵様の屋敷に誘われたのですが。伺っても良いものでしょうか?」
と不安がる娘に公爵夫人は
「問題ないわ。ちょうど私もお呼ばれされているのよ。一緒にいきましょう。」
と言われほっとするルシリーア嬢。
その様子を見ていたカルメン公爵夫人は、
「我が国の4公(候)のうち3つの家の夫婦は皆、学園で同じ頃に在学していた者ばかり。
仲も悪くはなかったけど、どうしても・・比べてしまうのよね。」
と呟いた。
◇
次の日。
馬車でケンドール公爵家に向かう王妃と王女。
お茶会には、4公(候)が呼ばれていた。他には騎士団長のセルグナ伯爵など重鎮ばかり。
それぞれの子供も来ていた。
「エストニア子爵様初めまして、セガール公爵の娘ルシリーアです。良き出会いに感謝を。」
と挨拶を済ませた、ルシリーア嬢が次に挨拶をしたのがクロニアル君だった。
「クロニアル様初めまして、セガール公爵の娘ルシリーアです。良き出会いに感謝を。」
「こちらこそ宜しく。ルシリーア様は今度入学だったよね。」
とクロニアル君は上手に話を振りながら会話を続ける。
「王女様のご学友とお聞きしましたが、ルシリーア様は魔法がお得意とお聞きしました。お二人でお勉強をされているのですか?」
と小耳にした情報を混ぜると
「流石クロニアル様、情報通ですね。でも私の魔法はまだまだですのよ。」
と軽く流されて話が終わる。
そこにメアリースクイブ王女が現れる。
「私の親友に言い寄られているのは、クロニアル様ではないですか。お好みは守ってあげたい感のある女性ですか?」
と少し黒い。
「これはメアリースクイブ王女、話し相手が姿を見せないので寂しそうなレディーに話しかけるのは、紳士の嗜みですよ。」
と返すクロニアル君。
メアリースクイブ王女は一旦その場を離れると、ルシリーア嬢と両手に飲み物とデザートを持って戻ってきた。
「少々はしたないですけど、ご一緒にお茶にいたしましょ。」
と声をかけてきた。
4人でデザートのラズベリーのタルトケーキにスプーンをつけると、
「この見た目が宝石のようなデザートが、鮮烈な甘味と酸味をスプーン一口でそれを私にもたらす。これがとても素敵なんですよ。これを考えられたのは、エストニア子爵様なのでしょう。素晴らしいわ。」
とメアリースクイブ王女の食レポに、僕は本日初出しのショートケーキを収納から取り出し、テーブルに並べた。
「これは・・デザートの宝石箱ですか?」
と驚嘆の王女。
僕が出したのは、長方形にカットされた各種ショートケーキをモザイク模様のように並べたものだったのです。
「こんな美しいデザートは見たことがありませんわ。」
ルシリーア嬢も興奮しながら、王女と争うように食べ始めた。
何処の世でも女性は甘いものから逃げることはできないのですね。
◇
王妃は、このパーティーでどこまで自分の立ち位置を決められるかが女性の社交の勝負と考えていた。
息子や娘を死の淵から引き上げてくれたとはいえ、王妃として社交の主導権を簡単には渡せないと思っていたからだ。
「王妃様、よくいらしてくださりました。王女様も美しくなられたようで、羨ましいわ。私もサンドール侯爵夫人も息子しかいないので、一緒にお買い物もままならなくて。」
とケンドール公爵夫人が話しかける。
「これはケンドール公爵夫人、今日の日を楽しみにしておりましたのよ。あなたのパーティーでは、初めてでかつ素敵なものがお披露目されるから。今日はどんなもので私達を驚かせるのか楽しみだわ。」
この言葉は半分本当で半分は、もうネタ切れでしょ。と言う意味があった。
すると微笑みを湛えたままケンドール公爵夫人は
「それでは今日の目玉を幾つかお披露目しましょう。」
と言うと合図を出した。
会場に音楽が流れ出す、初めて耳にする素敵なメロディーの曲。
そして照明が落ちる、スポットライトがある扉を照らす。
扉が開かれると、そこから次々に新たな料理が・・最後の現れたのは。
人の背丈ほどの塔のようなケーキ。
明りが戻ると光るような美しい器に乗せられた料理の数々と、圧倒的な存在のケーキ。
そして夫人は
「今日は王妃様以下この国の社交の花が集っています、そして私はその花たちに一つの奇跡を届けようと思っております。」
と言うとポシェットから木箱を取り出し蓋を開けると、美しいガラスの小瓶が並んでいます。
「これは息子エストニアが、ドラゴンを討伐して手に入れた素材から作り上げた若返りの薬です。時間を停止する魔法がなければ劣化してしまう、貴重で希少な薬です。私は今宵ここに集いし社交の花たちにこの秘薬を差し上げたいと思っております。私が毒味を兼ねてまず頂きます。」
と言いながら一つを取り出し、飲み干した。
すると淡く身体が光に包まれ、光が収まるとそこには。
「まあー。本当に若返っていますわ。」
1人の貴婦人が思わずそう漏らした。
するとサンドール侯爵夫人も小瓶を一つ取り出すと、躊躇なく飲み干した。
夫人も同じように淡く光に包まれると、10歳は若返ったのが分かった。
「私達、女学生に戻った感じですわね。」
とサンドール侯爵夫人が呟くと、
「私にも下さらない。」
と次々に貴婦人が集まり秘薬を飲み始めた。
すると誰1人失敗することなく若返ったのです。
ケンドール公爵夫人は小瓶を一つ手に取り、王妃に差し出す。
王妃は悩んでいた、若返りに秘薬は喉から手が出るほど欲しいが。
これを手にすれば私は、公爵夫人から逃げられない。
呼吸一つ二つの間の後、王妃は秘薬を飲み干していた。
「お母様、何と言うことでしょ。お母様がお姉様のような若々しさを。」
王女の言葉に王妃は、後悔してはいなかった。
この時、セガール王国の社交はケンドール公爵夫人が牛耳ったのだった。
ーー エストニアの工房にて。
「エスト、お母様のお願いを聞いて欲しいのです。」
とお母様が僕に珍しくおねだりをしてきた。
「お母様の為なら幾らでもお手伝いいたしますよ。何を作ればいいのでしょうか?」
と尋ねると。
「今度我が家で王妃様以下主だった貴婦人を呼んでのパーティーを開く予定なの。そこで目玉の、そうどこでも真似のできないようなものが欲しいの。」
と言うので僕はちょうどいいものを作っていたことを思い出した。
「お母様、ちょうど良いものがあります。エリクサーを作った際にもう一種類作ったんですが。」
と収納から小瓶を取り出して見せた。
「これはドラゴンの血液と魔力を鱗の粉で混ぜ合わせた物で、若返りの秘薬です。予想ですがその人の一番美しい頃まで若返ると思います。」
と説明した。
するとお母様は、
「よく出来ましたね。今日ほどエストを息子に持って良かったと思ったことはありません。ただ若返りすぎるのはダメです。もう少しそう10歳くらい若返るように調整できますか?」
と言うので「簡単です」と答えてお母様の言う数を揃えた。
料理屋音楽は僕の記憶の中から今現在再現可能なものを10品ほど用意することで話は決まりました。
ーー クレア=サンドール公爵夫人
ケイトから手紙が届いた、ケンドール公爵家で開催されるパーティーの招待状と別に特別な手紙が。
とうとうやる気なのね。あの子この国の社交をものにすると言っていたけど・・出来たのかしら特別のものが。
と思いながら手紙を読むと信じられない話が。
「本当に若返りの秘薬ができたの?それなら誰も勝てはしないわ。私も飲んで若返らなくちゃ。うふふ。」
その日からテンションの高い私に夫が
「楽しそうだが何か良いことがあったのか?」
と聞いてきた
「もう直ぐあるのよ。あなたも驚くと思うわ。」
と返しておいた。
ーー メアリースクイブ王女
このパーティーでは何かがあると私は感じていた。
そして幾つものの奇跡の後に本当の奇跡が訪れた。
「若返りの秘薬・・どういう意味?」
と思っていたら公爵夫人があっという間に若返り、そして侯爵夫人がそして他の貴婦人らが・・最後の王妃であるお母様が!
私思わず
「お母様がお姉様のような若々しさに。」
と口にしていたのです。
そしてお母様の全てを納得したような笑顔が。
私もあの恐ろしい社交に乗り出さなければならないのですね。
その時私は腹を決めたの。あの人に想いをきっと遂げてみせると。
0
お気に入りに追加
4,020
あなたにおすすめの小説
現代の知識と科学で魔法を駆使する
モンド
ファンタジー
山奥に住む男は定年後、実家のあった田舎に移り住んだUターン者である。
古くなった母屋を取り壊し、自分で家を立て始めていたがその作業中に埋蔵金を掘り当てた、時価総額100億円以上。
そんな悠々自適な生活を送っていたところ、子供の頃から不思議に感じていた隧道が自宅裏山にあったことを思い出す、どこに通じているかと興味に惹かれ隧道に入ると、歩くほどに体が若返っていくのが分かる・・・、そのまま進むと突然、光に飲まれ気づくと石積みの部屋に立っていた。
その部屋には脇に机が一つ置かれてあり和紙の紙束と日本刀が一振り置いてあった。
紙束を開くとそこには自分の先祖と思われる人物の日記が書かれていた。
『この先はこの世でない世界が広がり、見たことも聞いたこともない人々や
動植物に恐ろしい魔物、手妻の様な技に仙人の様な者までいる、しかもその
世界において身に付いた技や力は現世に戻っても変わることがない。志ある
ならひと旗あげるのも一興、ゆめゆめ疑うことなかれ。』
最後のページにはこの言葉と「後は子孫に託す」との言葉で締められていた。
男は刀を腰に下げると出口と思われる方に歩きだした、10歩も歩かぬうちに光に包まれ森の洞窟の出口あたりに立っていた。
立っていた場所から車一台分の幅で未舗装であるがしっかりとした道路がなだらかな地形に沿って続いているのが見える、そこで男は食料や水を持っていなかったことに気付き一旦洞窟の方に歩き出すと、いつのまにか石室に立っておりそのまま歩くと隧道の入り口に立っていた、違っているのは17・8歳の若々しい身体の自分と腰に下げた刀が不思議な体験を事実と肯定していた。
冒険の準備を済ませ、自衛隊仕様のジープに荷物を載せて隧道に車を走らせると、あの石室を通過して洞窟の前にたどり着いた。
ここから男の冒険の始まり、セカンドライフよろしく21世紀の科学と不思議な世界で得たスキルで成り上がる男の物語。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)
こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位!
死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。
閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話
2作目になります。
まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。
「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
病床の末期癌患者は、異世界で若さと健康を取り戻す。
モンド
ファンタジー
仕事だけが生きがいの男が突然、末期ガンの告知を受け生きる気力を失う。
病床のベッドの上で朦朧とした意識の中妙な夢を見始める。
その頃から体に変調が現れ、いつの間にか病床から消えてしまった男。
男はいつの間にか健康になって、森の中に立っていた、そこは異世界の森だった。
男は本当の生きがいを求めて旅を始めるのだった。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
土下座で女神に頼まれて仕方なく転生してみた。
モンド
ファンタジー
ドジな女神が失敗を繰り返し、管理している世界がえらい事になって困っていた。
ここに来て女神は「ここまできたら最後の手段を使うしかないわ。」と言いながら、あるカードを切った。
そう、困ったら「日本人の異世界転生」と言うのが先輩女神から聞いていた、最後の手段なのだ。
しかし、どんな日本人を転生させれば良いかわからない女神は、クラスごと転生を先ず考えたが。
上司である神に許可をもらえなかった。
異世界転生は、上司である神の許可がなければ使えない手段なのだ。
そこで慌てた女神は、過去の転生記録を調べて自分の世界の環境が似ている世界の事案を探した。
「有ったこれだわ!・・何々・「引きこもりかオタクが狙い目」と言うことは・・30歳代か・・それから、・・「純粋な男か免疫のない男」・・どういうのかわからなくなったわ。」
と呟きながら最後は、
「フィーリングよね、やっぱり。」
と言い切ってカードを切ってしまった、上司の許可を得ずに。
強いのか弱いのかよく分からないその男は、女神も知らない過去があった。
そんな女神に呼ばれた男が、異世界で起こす珍道中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる