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プロローグとより良い生活を・・良いよね。

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ーー プロローグ


 時は2020年、日本で開催されるオリンピックの準備に東京を中心とした開発が急ピッチで進んでいた頃、あのウイルスのパンデミックが発生した。

 ある飛行機のパイロットが数日前から倦怠感を感じていたが多くの同僚が休んでいる今、体調不良を申告することができず無理を押して乗務していた。

 北海道を発った飛行機は一路東京成田空港に向かい飛行を続けていた。

パイロットの異常が現れたのは飛行機が太平洋上1万m上空でのことだった。

 突然の意識障害、自動操縦に切り替える前の出来事で操縦桿にのし掛かるように倒れる。

副操縦士が異常に気づき、席を立ち駆け寄ろうとした際に機体は急旋回しながら下降を始める!副操縦士がコックピットの壁に叩きつけられ意識を失う。

 何もかもが最悪に・・・まるで誰かの意思を感じるように飛行機は太平洋にその姿を消す。

 飛行機には乗員乗客20人ほどが搭乗していた。

搭乗記録には21人と記載されたいたが確認できたのは20人、残り1名については存在すら判明しなかった。


ーー 白い世界?

 『目覚めなさい』

頭に刺激となって声がこだまする、暗く深い水の中から明るい海面に浮き上がるような感覚で意識が覚醒する

 「ここは・・どこ?」

目を開けているのかすら判明しない真っ白な空間!

 『ようやく目を覚ましましたね。貴方は飛行機事故で命を落としました。今魂の状態で、私の精神世界に来ています。』

と女性のような声が頭に直接語りかける。

そう言えば確かに仕事で北海道から東京に向かう飛行機に乗り・・・途中で墜落し始めたまでは記憶がある。

あれは事実だったんだ、変に納得のできる感覚で自分の最後を確認した。

また声が聞こえる。

 『そこで貴方に新たな道を示すためにここに呼びました。一つは通常の輪廻に従い黄泉の世界に向かうこと。
もう一つは、私の管理する世界に転生して新たな人生を生きること、こちらについては特別に幾つかの能力を授けることができます。どうしますか?』

と自分のこれからに二つの道があるようだ。


「ひとつ質問をいいですか?通常の輪廻で生まれ変わるのはどのくらい先のことでしょう。また新たな世界とはどんな世界ですか?」

と尋ねる私に

『輪廻による生まれ変わりは、数百年から数千年の時間がかかります。私の世界はいわゆる魔法と剣の異世界です。』

と答えが返ってくる、それなら考えることもない。

 「分かりましたそれでは新しい世界でお願いします。」

と異世界転生を願うと声の主が笑ったような感じがしました。

『では能力を授けます、どんな能力が欲しいか望みを答えなさい。』

と特典の話になる、しかし私は特別な能力は・・・要らないな。

「申し訳ありませんが特別な能力は入りません、ただ前世で長生きできず事故で死んでしまったので。
今世は健康で少しばかり幸運で有ればそれだけで十分です。」

と答えると声の主の機嫌が悪くなったような気がしたが

『付けてしまえばどうにかなるでしょう。』

囁くような声が聞こえたような。

『分かりました貴方の望み通りにしましょう良い人生を』

と声が響くと意識が再び暗く沈んでいった。


『何故?あの世界の人間は全てチート好きと聞いていたのに。早くなんとかしないと私の世界が終焉を迎えてしまいます。
 やっと隙を見つけて干渉したのに・・・でもかなりの器であることに間違いはない。詰め込むだけ詰め込みましょう』

そんな言葉が白い世界に流れた。



ーー 転生から5年


 僕の名前は、エストニア=ケンドール 何故か僕は貴族という上流貴族に生まれたようだ。

『少しの幸運を頼んだが・・・まあこれから平々凡々に過ごせればいいか、戦争があったり災害に見舞われることさえなければ人生を全うできるだろう』

 と思いながら生活していました。

しかしこの世界魔法はあるようだが何かと不便な世界でした。

 電気がありません!水道も当然テレビや車それとネットどころか本自体が少ない。

水は井戸か川から汲んできます。

火は薪です。

灯りはランプか魔法具、そう魔法があるのだが高価で種類が少ない文明的には地球の中世時代頃。

ベッドも硬く布団も重く暖かくない。

食事はあまり旨くない。

これでは生活に無用な時間と労力を奪われ楽しみである、睡眠と食事が貪れません。

少しばかり地球の知識で生活水準を上げなければ。

「お母様、お願いがあります。」

僕は母であるケイト公爵夫人に話しかけます。

「あら、なにかしらエストがお願いなんて珍しいわね。」
珍しいものを見るような目を向け笑顔で言うお母様。

「はい、今迄勉強したもので工夫を加えるともっと便利になりそうなものがあったんです。例えばいい香りのする香水や石鹸、髪や肌が若々しくなる物など」

と言うと激しく反応をするお母様。

「もしうまくできたらお母様が宣伝してあげましょう、お金はありますか?」

と積極的に聞いてきたので

「はい、困った時はお願いします。うまくできれば真っ先にお母様にお渡ししますね。」

と言いながら部屋を後にする僕。


知識的にはかなりのものがある。

何故か扱ったことさえなかったもののやり方さえ覚えている、これも転生特典なのかな?



ーー チートな力それとも転生常識


この世界の衛生問題は深刻である、子供が5歳まで生きるのは40~50%
とも言われるほど、各家庭10人近い子供を産むが半分以上が育たないらしい。

 そこで僕は、石鹸と綺麗な水の確保をまず行った。

川があるがそこでは洗濯や入浴、飲料水排泄物の排出に家畜の解体など区別もなにもないため、汚水や雑菌の繁殖が見られた。
「酷い環境だ」
そこで上下水道を完備しようと考えた。

 地球で言えば公共事業である。

しかしこの世界には魔法がある、僕は魔法の素質がかなりあることがわかった頃から、人のために使える便利な魔法の研究を行っていた。

先ずは土魔法で水路を掘ることから、きれいな水と汚水を流す水路を明確に分ける。

川の上流に水を集め貯める貯水池と濾過装置を設置してきれいな水を確保、別に農業用水の溜池も作っておいた。


水路は魔法で地中にドカンを作りながら道路の下を通して各家庭に引き込む。

汚水は道路脇に側溝として通し蓋をしながら雨水の流入も可能にしておく。

貯水池は町よりかなり高いところにあるので、街中なら二階建ての部屋まで水は供給できる仕組みだ、いわゆる水道の完成。

土管は1日で5km程埋設できる魔力があったので、10日もすると街中に水道管を通すことができた。

領民からは常に綺麗な水が飲めると大変感激され、腹痛や食中毒の発生が激減したそうだ。

石鹸は動物由来の油から作り出し、植物さらには魔物から作るとそれぞれに違う効能が見られた。

 一番油落ちするのが動物性で臭いがある、植物物性は香りが良いが汚れ落ちはイマイチ。

強い魔物ほど汚れ落ちと香りが良いのだが入手に危険が伴う。

 しかしハーブや香水に利用できる植物を抽出できるようになりこの問題は解決した。
 香水はバラの花から淡い香りの花まで領地で栽培できるものや交易で手に入るものを利用した。
 
 水は濾過した綺麗な水とは別に魔法で作られた水は魔力の込められ方で効能が違った。

高能度の魔力水は高品質の化粧水になり得、低濃度の魔力水に植物性石鹸を溶かし込むとシャンプーができ、高農度の魔力水に髪に良いとされる植物を煮詰め溶かすとリンスが出来た。

僕が作ることができる魔力水は、高濃度が1日で100L、低濃度が500Lだった。

約1月で僕は公爵領の街ケンドールを改造した。

その後僕の化粧品と香水に感激したお母様が好きにして良いと、
さらに自由を与えてくれたので、農業用水を畑に引きつつ新しい農地を耕作し交易で入手していた干ばつに強い芋や保存が効くトウモロコシのような作物の作付けを大規模にさせたところ。

結果的に年に3回ほどの収穫ができることがわかった。


それならばと近隣の町や村にも可能な限り上下水道と農業用の灌漑用水を作り飢饉に備えた。

意外と川が多く、氾濫することも少ないと聞いていたので水車を所々に設け、穀物の脱穀や粉挽きの自動化を行うとケンドール産の小麦は品質が良いと評判になった。

女性でも食べていけるために機織機械の製造とそれに伴う糸の生産を始めた。

それまで糸というと木綿や絹に似た肌触りの糸があったが当然肌触りの良い糸は高価で希少であった。
そこで森に入り蚕またはそれに似た虫や魔物を探すと。

蚕がいましたさらには芋虫型の魔物と蜘蛛型の魔物の糸にかなり高品質なものがあることが分かったが、それぞれ採取には危険が伴った。

蚕は桑の木があり植林し蚕小屋を作り養蚕を始めた、まゆを回収し糸に紡ぐ方法を教えると絹糸の生産が始まる。

織物の操作を覚えた女性らが布を織ってゆくとケンドールの特産品となり交易品としての取引が多くなっていった。

作物の採れにくい村においては、主力の産業を養蚕と布織物それに石鹸作りを奨励し税収が数倍に跳ね上がった。

僕の自由になるお金がかなりの金額になった頃、僕はお父様に相談に向かった。

「お父様お願いと相談があります」

と切り出すと

「エストニアなにが欲しんだ。お前のおかげで我が領は好景気でかなりの余裕ができ始めた、好きなものを与えてやろう」

と上機嫌なお父様に。

「実は僕のお小遣いで人材育成をしたいと考えています、許可をください」

と言うと

「人材育成とは何か?」

と尋ねられた

「この世界で良い人材と言うと大きな町や都市で勉強したり、ある程度の身分のものが教養として身に付けたことで重要なポストについております。
 家柄や名前ばかりで本当に優秀でないものが就いているため、うまく回らないどころか悪くなっていることが考えられます。
 そこで僕の将来の人材確保を考えても今から広く門戸を広げ、多くの人間に高等教育を行い素質のある人間を将来的に手元におきたいと考えています。しかもそこまでいかない者でも町や村で有れば大いに活躍できると考えてています。」

と答えると、しばらく僕を見ながら考えていたお父様が

「非常に良い。お前の小遣いではなく公爵領の事業として進めることを許そう、頑張って結果を出しなさい。」
と許しをくださった。




ーー ケイト公爵夫人 side


息子が珍しくお願いをしにきた。

用件を聞くと勉強したことで役に立ちそうなことを工夫してみたいと。

その中には化粧品や香水があると言うので直ぐに準備をしてあげる。

 すると一月ほどで香水と石鹸、シャンプー、リンスと化粧水と言うものを作ってきた。使ってみるとそれはそれは美容に物凄い効果があり驚いた。

まだ生産量としてはそこまで多く出来ないが、私が使う分は余裕なので余った分を王都の王妃と王女に贈ったところ、『虜』になったようだ。

 息子はあれからも色々しているようで、いつの間にか水道というものが引かれ「蛇口」と言う部分を捻るだけで綺麗な水が出る仕組みが家の中とは言わず街中に出来たと言う。

 この間は私のドレスを作ると言って採寸に来た。

なんでも新しい糸とそれで作った布地が出来たそうで、最初の作品は私のものだそうだわ、良い子に育ったわ。

でもあの子が少し遠くに行ったようで寂しく思うのは、母親として当然よね。


ーー ケンドール公爵 side

 
 息子が昨年から何か事業のようなことをしていることは妻ケイトから聞いていた。

私は王都にいることが多いため息子の教育は妻に任せているが、今回ケンドールの街に帰ると見間違うほど領内が変わっていた。

とても清潔になっており人口が急増していると言う。

 他所から来ていると言うより、生まれた赤ん坊がほとんど育つと言うことで人口に伸びが倍増しているそうだ。

 そしてこの間俺に頼みと相談があると息子が来た、聞けば自分の金で人材を育てたいと言う。

 理由は将来的に自分の人材確保と領内の人材育成だそうで、俺がやるべき仕事を僅か6歳の子供が始めると言う。

 誰かの入れ知恵かと考えはしたが、妻の話から本を読み自分で考えているようだと聞いていたので、公爵家の事業として息子にやらせることにした。

 上手くやれればあいつはかなりの大物になりそうだ。


しかし一人息子のエストがこんなに早く独り立ちしては・・貴族としては頼もしいが、父親としてはもう少し頼って欲しいと思うのは親バカだろうか。
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