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隣の街に行く前に寄り道する

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ーー 次の街へ。

この国は面白い暫く滞在してみようか。そんなことを考えながらファーストは、次の街を目指した。

北西の方角に飛ぶこと暫く、遠くに大きな森が見えてきた。
「かなり大きな森のようだ、珍しい魔物がいるかもしれんな。」
とニヤリと笑いながら、誘われるままに森へ。

森を飛ぶこと1時間、全く向こうが見えない。適当なとこで降りてみよう。
大きな木を目標に森の中に舞い降りる。

魔物の気配が濃ゆいが、ファーストが降り立つと周囲の魔物が一斉に逃げ去った。
ゆっくりと気配を消して歩く、すると木々を押し倒すように歩く一つ目の巨人サイクロプスが、姿を現した。
ファーストは大剣を取り出すとサイクロプスに向けて構えた。
ファーストに気づいたサイクロプスは、側にあった樹木を引き抜くと振り回しながら殴りかかってきた。
「スパッ」
樹木が半から先が斬り飛ばされた、サイクロプスは残りの樹木を投げつけるように放ると、ファーストに向かって飛びかかった。

樹木を弾き、サイクロプスの左足を斬り飛ばす。
「ぐおおおおー。」
痛みに叫ぶサイクロプス、片膝をついて左手拳で殴りかかる、その拳も斬り飛ばす。
「ウオー!」
さらに大きな叫び声を上げるサイクロプス。
ファーストを見失い周りを振り向いた瞬間、視界がグルリと反転した。
首が斬り飛ばされたのだ。
「収納」
と呟き歩き出すファースト。

サイクロプスのおかげで周囲に魔物がいないため、適当に歩いていたがその時声が耳に入った。
「痛いよー。お母さん!」
と言う少女の声?
ファーストは声のする方に向かうと、20mはゆうにあるヘビ系の魔物がケモ耳の子供?に巻き付き今にも飲み込もうとしていた。

「もうダメ・・。」
観念したような言葉が聞こえた。

「シュッ」
ズレるように魔物の鎌首が地面に落ちて、力が無くなった胴体がだらりと緩むと、ケモ耳が地面に落ちるのが同時だった。
地面にぶつかる直前に抱きかかえたファーストが空に舞い上がる。


          ◇


2時間後。

森の中の川の側でファーストは石を組んでカマドを作っていた。
「意外と美味そうだな」
ヘビの蒲焼やトカゲの串焼きを火に炙りながら塩胡椒を振りかける。
香ばしく美味そうな匂いが広がるが、周囲には魔物はいない。
気配を消さない時のファーストに恐怖し、逃げ去っているのだ。

「うんん~。」
目を覚ましたケモ耳、目を開けるより先に鼻がヒクヒク匂いを嗅いでいるのが、面白い。
「目覚めたのなら起きろ!」
と声をかけると、キョロキョロしながら起き上がるケモ耳、
「ここは、話に聞く神の庭でしょうか?美味しいものがたくさんあると聞いたことがあります。」
と言いながら串焼きを見つけ物欲しそうにこちらを見る。
「食べていいぞ。」
と言うと飛びつくようにかぶりついた。
「汚い食べ方はするなよ、飯をもうやらんぞ。」
と言うと急におちょぼ口で食べ始めたのが面白い。

一通り食べると
「美味しかったです。それでここはどこですか?私は蛇に飲み込まれた筈ですが。」
と言うケモ耳に
「その蛇は今お前の腹の中だぞ。」
と答えると
「え!」
と固まった。

その後話を聞くと、ケモ耳は
【この森の中に隠れ住む、獣人といわれる種族で狩りに出た際に仲間とはぐれ、彷徨っている時にヘビの魔物に捕まったようだ。
集落は200人ほどの人口で、主に狩で生活をしている。
魔法は下手だが身体強化や身体の一部を変化させることが、出来るそうでこのケモ耳も人族に化られるそうだ。
名前は、ソーニャ 15歳と答えた。】

「よしお前の集落に送っていこう。方向はどっちだ?目標は?」
と聞けば
「大きな木が目標なの、でもここが何処か分からないから・・。」
「大きな木・・あれのことか。」
ファーストはケモ耳を抱き抱えると空に舞い上がった。
「えええ!飛んでるー。」
騒ぐケモ耳に
「黙れ!あそこの木がそうだろう。」
と大樹の上に飛ぶと、キョロキョロした後
「あっちです。」
と指差した。

直ぐに隠れ里が見つかった。


ーー 獣人の隠れ里。


大森林の大樹の元から歩いて30分ほどのところに、その集落はあったがあまり防御面も良くない感じだった。

森の木に偽装しているが大型の魔物でも来れば簡単に壊されそうな柵、堀もなくどれだけの魔物を防げるのか疑問だ。

門のような引き上げ式の板が上がり、ガッチリしたケモ耳の男が二人立ち塞がった。
「ソーニャ、お前どこに行っていた!そしてそいつは誰だ。」
と怒っているようだが、ほとんどはソーニャの事だろう。
「ええと、皆んなと逸れて・・森を彷徨って・・魔物に襲われて・・助けてもらった。」
と答えるとエヘヘと笑うソーニャ。

頭を抱える男は、
「もういい、助けてくれたのか。ならしょうがないお前も入れ。」
と中に入れてくれた。

中は40世帯ほどの小屋が建ててあり、1世帯3人ぐらいの子供がいるようだ。
当然ながら栄養状態や衛生状態は良いとは言えないようだが、幸せに暮らしているようだ。
そんなことを思いながらソーニャについて歩くと、一軒の小屋に着いた。
「ここがソーニャの家だよ。お母さんと二人暮らしなの。」
と言いながら小屋に招いてくれた。中には粗末なベッドが二つ、台所兼食堂の土間と食糧庫のような納屋が一つのようだ。
母親はベッドの上に横たわり、具合が悪い感じだ。

「お母さん、ごめんね。心配させて。」
と言うと母親が優しそうな目で見ていた。
俺はその横に近づき健康状態を魔法で探った。
全身が毒に侵されているようで、このままではそう長くなさそうだった。

ソーニャに振り向き
「お母さんに元気になってほしいか?もしそうなら魔法で治してやるが。」
と言うと
「え!お母さんの病気が治せるの?それなら何でもするから治してください。」
と土下座して頼んだ。

どうして土下座するんだ?流行りか。と思いながらもファーストは、治癒魔法と回復魔法を発動した。
ファーストの治癒魔法は息さえしていれば、健康状態に戻せるほどの威力があり、普段は効果を抑えたポーションを与えたりしているのだ。

みるみるうちに顔色が健康的になり、お腹の音がし始める。
自分の回復力も使うのでお腹が空くのだ。
「よし次は飯だな。」
と言うとファーストは、収納からテーブルと椅子そして温かい食事を皿ごと取り出して、並べると二人に浄化の魔法をかけて、
「さあ、食べるぞ。椅子に座りなさい。」
と呆気な顔の二人に声をかけた。
「ファーストはやっぱり凄い魔法使いだ。」
と言うとソーニャは、ファーストに飛びついて頬擦りし始めた。
これは何だ?獣人の挨拶か?と思いながらも二人を座らせ食事を始めた。

「お母さん、美味しいね。こんなご飯初めて食べたよ。」
「そうね、お母さんも初めてよ。」
と涙を拭きながら食べていた。

その後ファーストは、2人用に女性用の服と布地をたくさん取り出すと、
「身体が衛生的でなければ、病気になりやすい。今着ている服は捨ててこれに着替えたら、この生地で新しい服を作りな。」
と言うと小屋の外に出て行った。

外に出て集落内を歩いていると、視線を感じた皆んな人種が珍しいのだろう。
すると1人の老人が現れ、深々と頭を下げると
「異国の人よ、我が集落の娘を助けていただいたそうで、このとうり礼を申す。
わしはこの集落の長で、ゴロウコウと言う。
この名の響きに引っかかるものがおありなら、お願いを聞いていただきたい。」
と言うと少し大きな小屋に手招きして入って行った。

ファーストはついて行くと小屋の中で驚いた。
そこには黒目黒髪の子供が印籠なようなものを手に持ち、威張っている絵が飾られていたのだ。
「これは誰だ?」
と言うファーストに老人は
「今から100年ほど昔、時空の間に落ちてここに来たと言う「タロウ」と言う子供じゃ、日本人だと言っていた。ここに集落を作ったのも、タロウの言葉によるものじゃ。」
とこれまでの歴史を語ったが、タロウは病気で僅か15歳で亡くなったそうだ。


ーー 獣人の集落の大改装。


その後俺は、長に頼まれてこの集落の大改装をすることにした。

周囲に5倍ほど広めに深い堀を作って行く。
掘り出した土を性質変成で岩に作り替えて、石垣を組んでいく。
3日ほどで出来上がった石垣の内側にコンクリートの壁を高さ20mほどで立ち上げる。
堀の1箇所に地下水脈までの穴を掘り、水を湛える。

門も大きな門を一つに中くらいの門を二つ跳ね橋を兼ねて作る。
門からまっすぐ伸びる平で広い道、左右に家を建てる基礎を作って行く。
基礎の数は100個、10分過ぎる数だ。

外に出ると樹木を切り倒し建築資材として運び込むと、山のように製材する。
コンクリートブロックと鉄鉱石製の鉄筋を使って、基礎と骨組みを作り上げた後は、ケモ耳の力を使って家を建てていく。

10日もすると集落の世帯数の家が出来た、以前からすると豪邸だ。
寝室には見本のベッドを見せて、作らせて配置する綺麗な布地と糸と針を沢山取り出すと
「これで布団を作る、このくらいの大きさの袋状のものを作れ。」
と言うと出来たものから中に、鳥系の魔物の羽をどんどん放り込み」
口を縫い合わせたら、仲が偏らないように糸で留めて。こんな感じにするんだ。」
と自分用の布団を取り出して見せた。

5日もすると住民全員の寝具が出来上がる。
次は飲み水と風呂だ。
集落内を歩いて地下を探る、深い場所だが温泉も水脈もある。
各家々には配管がしてある、温泉や水を配管するためのものだ。
吹き出す水とお湯をそれぞれに繋ぎ直して、最後の排水管を外の堀に出す。

さらに共同の食糧庫を地下に作る。
散々倒しまくった、オークの肉が腐るほどあるので、収納しておく。
残った空き地は畑にする、小麦を中心に植え付けると水捌けと水やりを考えたパイプを据え付けて、周りを囲み鳥の被害に備える。

各家庭に大量の塩と砂糖それと胡椒を配り、きちんとしたカマドと調理器具も配布した。
食器は木製のものを多用し、石鹸やシャンプー、紙や食用油など細々としたものを配り終わると
ファーストは、ゴロウコウに
「これでいいだろう。大サービスだ。」
と言った。

その日の夜に、お祭りが始まった。
タロウがいつかしたいと言っていたと聞いたので、全員が座れるテーブルを作り。
料理をお大皿に山盛りに幾つも置くと、それぞれに取り皿を持たせて
「バイキングだ。好きなだけ食え!」
と叫んで食の祭りが始まった。
酒も出すと男達も大いに飲んで、一晩中騒いだ。

ファーストは空き地に自分の家を出すと、温泉をつなぎ風呂に入った。
「ああー。運動した後の風呂はいいな。生き返るぜ。」
と言いながら湯船に浸かっていると、扉が開き
ソーニャが裸で入ってきた。
「何だお前、家にも風呂を作ってやっただろうが。」
と言うと首を横に振り
「違うの、背中を流しにきたの。お母さんや皆んなの御礼を兼ねて。」
と言いながらタオルに石鹸をつけて泡立て始めた。
「そうか、それなら洗ってもらおおう。」
と言うと湯船から出て、背中を見せて座った。

ソーニャは一生懸命に洗い始めた、途中から前まで洗い始めて
「そこは背中じゃないだろうが」
と言うが聞かなかった。仕方ない。
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