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俺の生きる理由

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ーー 侯爵邸王妃 side


私はスミス侯爵の妹で現国王の第二王妃。

ここ一年ほどで兄の領地が格段に発展し始めた。

まず目を引くのがすごい技術で作られた品々。

どこの国でも見ることができない芸術的な食器やグラスに心地よい寝具や布地。

さらにはベッドやソファーと言うものから馬車まで、寝心地、

座り心地に、乗り心地が、今までとは数段違う技術に取引が間に合わないと聞いている。


街の中は夜でも昼のような灯りが灯り安全さをアピール。

屋敷内はいつでも春のような気持ちよさ。

食べ物や飲み物も見たことも聞いたこともないほど洗練された美しさや美味しさがあり、

デザートに至っては芸術品といえる。


その発展の立役者が新興貴族のハルト男爵という人物。


まだ16歳ほどの人物ながら魔法も剣も知識も一流以上という噂。

兄が留め置くために爵位をあたえたのも頷ける。

まだ独身のハルト男爵に私は娘のミラージュをあわせることにした。


この男はどんな家宝よりも上等で貴重な存在と思えたからだ。

しかし今度出来上がったジャグジーというお風呂はまた凄くいいものだった。

王家以上の生活を謳歌する兄上の家族が羨ましく思ったことは、

最近とても多いがきっと見返してみせるわ。





ーー 異世界に居場所を見つけた人生



俺は今とても充実している、日本で第一の人生を終え残りの余生を趣味に生きようと。

田舎暮らしをしていたが自分の中に、ここまでやりたい気持ちが隠れていたとは実際気づいていなかった。

体が若返り姿形が変わり別人の新しい人生を歩み出した俺。

魔法という道の力を得て望むことが次々に実現できる今、

どこまでやれるか挑戦したいと思い出してきた。


ここで新しい家族を持ち骨を埋めるのもいいかもしれない。

しかしこの世界はまだまだ住みにくいことが多く、少しでも安全で安心な生活ができるように、

文明を広めたいものだ。


今回王妃とその娘の王女が遊びにきているが、王家でもこの侯爵家の発展は目を惹きつけるもののようで、

流行という手段で文化や文明を知らしめるのもいいかもしれない。


侯爵令嬢のクリスティーナ、メジーナ嬢が俺に、

「明日は魔道馬車で温泉に連れていってくださいまし」

と王女を連れて温泉に行くよう要求してきた。


王女様も新しい物好きで頭が柔らかいそうだ。

それなら王都でも流行らす覚悟でエスコートしてみようと思う俺だった。


ログハウスに泊まった3人を魔道馬車(キャンピングカー)に乗せ最近見つけて掘り当てた温泉に向かう。


温泉は簡単な仕切りを備えたもので、まだ完成していないがキャンピングカーを使えば十分寛げると考えている。

しかも魔法の腕も上がり空間拡張の付与をつけたので、かなり豪華な車内になっている。

「この馬車は馬がいないではないですか!」

不思議な箱型の馬車を見て王女が呟く。


さらに走り出すとその乗り心地に驚きながら、車内の設備に見るもの触れるもの全てに感動していた。

「こんな馬車があるなんて知りませんでしたわ」

という言葉を何度口に出したことか。


温泉は水着を着せて入ってもらった。

その後キャンピングカー内のシャワーを浴びてもらい、

食事をしながら移動をする。

水力発電のダムや発電所を見たいそうだ。

「こんな湖を人の手で作ったなんて」

ダムを見て驚く王女、自慢げに披露する侯爵令嬢の姿がおかしかった。

ダムを見学していた時にはぐれのワイバーンが現れた。

王女は驚き恐怖に顔を引き攣らせていたが、他の侯爵令嬢や騎士などは全く動じていなかった。


俺は速やかに始末するため収納からライフルを取り出し、向かってきたワイバーンをヘッドショット。

落下したワイバーンに風魔法で首を切り落とすと収納した。



一連の作業が数分間で終了すると王女は


「私の見間違いでなければ先程の魔物はワイバーンというAランクの魔物で、

下手すると小さな街など壊滅すると言われる魔物ではなかったですか?

 それをあっという間に打ち落とし首を跳ね何処かに消し去る魔法は、おとぎ話の勇者様のようでした」

という言葉に俺は

「所詮は魔物、適正な武器と戦い方を工夫すれば殆どの魔物は恐るに及びません」

と答えた。


王女はその何でもないような言葉と対応に口だけでは無い自信を感じ、

これからも対応を考え直さずにはいられなかった。





ーー この世界に根を下ろすには・・



今俺はこの世界と現代日本を行き来して文化レベルの差を縮めようとしている。

その理由にこの厳しい世界の人々を少しでも危険から守れる仕組みを作りたいからだ。

特に子供の将来を考えると俺の責任は大きいと思える。

知らなければしなくても良いが知っていればしないのは罪だ。


ログハウスで寛ぎながら次の一手を考えるのが、癖になりつつある生活も意外と悪くはない。


次は食糧自給安定化を試みるか。


3日後王妃らが出発するのを見送り俺は日本に向かうため転移した。


入り口を越え隧道に出ると家の倉庫に転移、倉庫内を見るとまた荷物が届いていた。

「これは注文していたあれか、これは・・やっと来たか。」

などと呟きながら荷物を確認する俺。


今挑戦しているのは大型プラントをあの世界に持っていけるのかと言うことだ。

技術的問題がありどうしても既製品を持ち込みたいと言うところがあるのだ。


食糧を安定して供給するには、水や温度や肥料などを管理するか生育にあった物を適正な時期に、

育てることが重要で、魔法がある世界では促成栽培も可能である。


ただしそのために魔法師がある一定以上必要という条件が出てくる。


よって管理できるプラント式の栽培を導入することに決めた。


ただし大量栽培はできないが安定栽培は問題ない、よってスミス侯爵領限定となるだろう。


もう一つ太陽光発電の効率化と蓄電池の大容量化を、

お大金を投じて研究してもらっていたが何とかなったようだ。



ーー プラントの建設と利用


実は最近スミス侯爵領に隣接する小さいが領地を王家からいただき領地持ちの男爵となった。

そこには人がほとんど住んでいない不毛の土地で二束三文の価値しかないと思われていた。

しかし俺の鑑定でここの地下深くに原油がかなりの量埋蔵されていることが判明。

今回精油用のプラントも購入して来ている。


電力の確保どうしても現代化学は電気を消費することが多い。

従来からすると発電量10倍の太陽光発電のメガソーラーを設置した。

容量が5倍ほどに増えた電気を、蓄電池に貯めるため大量の蓄積電池を設置し、電力の確保はできた。

基礎を深く厳重に敷設すると精油プラントを設置した。


地下埋蔵原油の上からボウリングよろしく土魔法で掘削しあっけないほど簡単に到達した。

噴き上がる原油をパイプラインでプラントに接続し、

ガソリンや重油、軽油などに精油しアスファルトの元やプラスチックの原料を確保する。


現代日本では脱炭素や脱プラスチックなどと叫ばれているが、

魔法のあるこの世界ではあっという間に分解し無害にできるのが便利だ。


大きな体育館のような建物の中に完全コンピュータ制御の水耕栽培のプラントだ。


棟を20棟ほど建て、青物野菜からキノコ類まで栽培している、これで季節関係なく生鮮食品が確保できるのだ。

その横には大きな池のような養殖プラントだ。

海の回遊魚やチョウザメやトラフグなどを養殖している。

意外と技術が確立しているのでお金さえあれば何とかできた。


その横は放牧と食肉工場だ。

牛や豚鳥を放牧し一定以上になると食肉工場でほぼ無人で食肉として捌かれ冷凍加工される。

よって、その横に巨大な冷凍庫が建てられている。


食糧の生産加工が出来ればそれらを保管や流通させる手段が必要となる。

簡単な方法は鉄道の敷設であり自由度から言えばトラック輸送だ、どちらも手配済みなので問題ない。

これらの計画が開始され完成するまでに3年かかったのは人材不足だ。

人材はなかなか育たないことこそが大問題でそのために、

孤児や子供を幼い頃から教育して人材の確保を行なっているが、俺でも3年かかったのだ。



ーー これからが俺の力の見せ所だ


18歳になった俺は王国への貢献で子爵に叙爵していた。

不毛の土地と嘲笑っていた貴族らにその土地の食糧やエネルギーは届くことはないだろうが、

笑う奴は笑えと無視をする。


領地があるのでそこに領主邸を建てたらと言われ俺は考えた。

広さは大島ほどの広さで一人で住むには十分広い。

当然プラントで働く従業員には、社宅という名の豪華なオール電化住宅が無料で貸し出されている。

一応領主邸用の土地は確保してあるので現代に戻ってから、

城でも購入して移築しようかとも考えているがどうしよう。


一つだけ早めに作り稼働している施設がある。

それは周囲の国から孤児や奴隷の子供を集め、高い教養と技術を身に付けさせる総合孤児院の設立だ。

宗教をあまり利用すると意外に横槍が入るため、信教については自由にし他人に強制しないと決めている。

そろそろ結果が出る頃なので期待している。


今日も奴隷商を廻って目的に合った奴隷を購入する予定だ。

こう言うと忌避感を感じるものもいるが、綺麗事では生きてはいけないことを知らない者の戯言と思う。




ーー 奴隷商ミカド


王都に移転で移動して奴隷商ミカドと言う店に来た、注文は、

・若い奴隷

・身体の欠損や病気は問題ない

・人種や外見にこだわりはない

と言うもので予約していた。

店に入ると店主が直々に対応し、

「こちらが注文の条件に合う奴隷たちです、20人ほどいますが全部見ますか」

と言う問いに「是非に」と答える。


10人ずつ部屋に入れ一人ずつ自己紹介させながら鑑定で確認すると、

いつものごとくスパイが居る。


どうやら俺の秘密が知りたいものが送り込むようで毎回1人2人がいる。

20人を鑑定し、5人ほど候補を絞り店主に、

「もう一つの条件の者は何人いる」

と聞けば「3人」と答えたのでこれからそれを見にに行く。


地下等のような場所に今回の奴隷たちはいる。

激しく抵抗するために手足を折られたり身動きができないようになっている者や、

魔法力が強くその為詠唱できないようにしているものや呪いを受けているものなど色々だ。


「ここから人部屋に一人ずつおります。これが鍵ですが大丈夫ですか?」

と言う言葉に「問題ないと」答え鍵を持ち中に入る。


一つ目、

手足を肘膝から切り落とされている戦士のような奴隷だが女性のようだ、

少し鱗のようなものが見えるのでドラゴーニュ族かもしれない。

鑑定するとレベル150のドラゴーニュであった。

「俺はハルト、お前の本当の望みを言え、多分今回が最後のチャンスだ」

と言いながらその目を見ると潰されていたので回復魔法で癒して再度聴くと反応が違う。

今度は耳を回復魔法で癒して再度問うと、

「私の望みをお前が叶えるとでも言うのか」

と吐き捨てるように言うと目を逸らしたので、

「たかがレベル150程度のドラゴーニュが粋がるな!それならここで朽ちるが良い」

と目と耳を元の状態に戻すと、女は慌てて、

「頼む、いやお願いだここで朽ちるわけにはいかない。どうか私を買い取ってください」

と懇願し始めた。



次の部屋は顔が焼かれた女だった。

種族さえ分からぬほどの火傷で、目さえも見えないようだった。

ただ音に反応するので、

「俺はカムイ、お前の本当の望みは何だ、これが最後のチャンスと思え」

と言うと

「ううう・・・」

と唸りながら喉を指差すので回復魔法で喉と舌を癒すと、

「ええ!話せる・・私を買い取ってください死ぬまで仕えます。」

と言うので「分かった」と答え次に移動する。



次に部屋にいたのは、手足を根本から切断され、目を抉られ、耳を潰された性別も分からぬ芋虫のような者。

この者には俺は念話でこう言った。

「俺が助けてやるその後はお前のしたいことをすれば良い。俺についてくるなら合図を遅れ」

と、するとその者は激しく体を動かした。


その地下牢を後にして店主のところに戻った俺は、

「先ほどの5人と今の3人を買う手続きを」

と言って金を積み上げた。


その後屋敷に連れてこられた5人の奴隷たちを俺は、屋敷にいるメイド達に、

風呂と着替えと食事をさせるように命じた。

残りの3人は俺の私室に運ばせた。

一人ずつ回復魔法をかけ完全に身体を治してゆく。

目を治されここが見たこともないことに驚く者。

耳を治され自分の声が聞こえて驚く者。

手足を治され立ち上がり泣き出す者、それぞれが辛い経験をしたと思う。

焼かれた顔を元に戻し焼かれて禿げた髪が戻ると泣き出した女は

「生まれ変わった気持ちです」

と言って何事か考えていた。

手足が動けるようになり一度反抗的な反応をしたドラゴーニュの女は、

「あなたのレベルをお聞かせください」

と言うので

「250」と答えると

「・・250・・回復魔法・・、この命貴方のために」

と頭を下げた。


イモムシのような者は完全に治すと美少女であることが分かった。

魔力もかなり有る耳が長いな、と思ってると、

「私は元西のエルフ国の王女。これからは貴方の横に立つ者ですよろしくお願いします」

と言うので

「まあ頑張れよ」

と答えた。
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