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第5章 高島さんから僕へ2回目の告白

第62話 体験と結婚の話<2220.11.上旬>

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 高島さんが結婚するという噂を話を耳にした後、高島さん本人から、ある商品の販売をすると聞かされた。聞かされたのは、11月上旬にあった公演の前日だったと思う。何故このタイミングでと思った記憶があるのでほぼ間違いない。
 この手の話が極端に苦手な僕としては、行きたくはなかったのだけど、高島さんのことを考えると行かない選択肢はない。
 この商品販売の話を本人から聞いたことで、高島さんが結婚するという噂が本当なのだとわかった。例外はあるにしても、基本的に公務員は自営副業を営むことは禁止されているので、高島さんが結婚するという話と繋がったのだ。退職して結婚して、その商品の販売をする、そういう筋書きなのだと思った。
 行動範囲が狭くなってしまうことを嫌う高島さんは、誰かに依存する生き方はできない性格なため、退職して結婚しても収入を得る手立てが欲しかった。だからこの商品販売は公務員を退職することによって失う収入を得る手段になる。
 結婚しても公務員を続けることも選択肢になりそうなものの、多忙な仕事であるため、結婚後夫婦としてまともな生活が営めないと判断したのだろうと思う。
 本気度を感じることはできたけど、お付き合いもしていないのに結婚することになっていることにはとまどうしかなかった。
 こうしたことからも、僕が高島さんの気持ちを正しく理解してくれていると彼女が信じていたことがわかる。

              ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆              

 早朝出発して、高島さんの自宅で高島さんをひろって、3回目の告白のとき高島さんと一緒に行った喫茶店へ。お店に入ってみると、僕と同じように商品を体験するために多くの人が集まっていた。ここに一旦集まってから、東青ヶ島県の体験会場に移動することになっていた。しばらく待ったところでみんなが集まったらしく、会場に向けて出発することになった。
 会場へはそれぞれの車で移動することになっていた。ただ、僕の車にはもう一組男女2人が同乗することになっていた。若い男女だったけど、恋人だったのか、ご夫婦だったのか、そいう関係でもない男女だったのか、今でもわからない。そもそも、このお二人が同乗することをいつ知ったのかも覚えていない。
 同乗されるお二人から荷物を僕の車の荷室に乗せて欲しいと言われた。運転席で後ろの荷室を開けて、後ろまで戻って荷室のドアを開けようとしたその時、高島さんから「どうぞ」と身振りと一緒に思わぬ言葉が。
 決して、でしゃばったことをするような人ではない。であれば、やはり高島さんの僕との結婚の意思は相当に現実的であったことがわかる。半ば夫婦のつもりだったのだろうとさえ思える。夫婦であれば、でしゃばった行為とはならないだろうし。そして高島さんと同じレベルで僕も高島さんの想いを理解していると考えてもいた。一方的にそう想っているだけだと、でしゃばった行為になってしまう。
 こうしたことは、当時そのまま理解はしていた。ただ、一目惚れから2年経ってもその時のままの距離感でしかなかった僕からすると、その理解に気持ちがまったく追い付かなかった。嬉しさもあった。驚きもあった。でも現実を受け止めきれない気持ちが強かった。
 高島さん本人から僕に結婚の意思を理解できることを言われたことは1度もなかったので、むしろ不安のほうが大きかった。どう考えても高島さんの結婚相手は僕だとは思うけど、その当事者の僕がそれを知らないとなると、そうでない可能性もあることになるのではという不安が大きかったのだ。その不安から今自分におきている現実を受け止めきれるわけもなかった。

              ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆              

 東青ヶ島県の会場までは車で1時間強。ちょうど昼食時間と重なったため、コンビニでおにぎりを買って車中で食べることになった。運転している僕は、運転しながらおにぎりを食べることになる。コンビニを出て走り始めてすぐに、後部座席の女性から高島さんに声がかかった
「高島さん、おにぎりあけてあげたらぁ~……」
「………………」
 僕はハンドルを握りながら、包装してあるビニールからおにぎりを出して、一人でおにぎりを食べていたのを見かねたのだと思う。でも高島さんは無言だった。後ろの女性に言われて袋をあけるのは嫌だったのだろうと思う。僕に言って欲しかったのかもしれない。
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