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第3章 高島さんから僕へ1回目の告白

第36話 青ヶ島本島最大のお祭り<2220.08.16>_うっとり

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 高島さんは僕の背中からおりるとすぐに、僕らから離れて一人どこかに行ってしまった。周りをいくら見渡してもどこにも姿は見えない。植木代表夫妻と相談した結果、大人だから迷子になることはないだろうという結論になった。探さないというより、そっとしておくのがいいだろうとの暗黙の了解だった。
 ただ、突然高島さんがいなくなったことに僕はかなり動揺しており、ひとりででも探しに行きたかった。ただ、そうしてしまうと土地勘(鑑)のないところでのこと、かえって混乱することになる。だから結局のところ状況の推移を見守る以外に方法がなかった。

(まずかったのかな? どうしよう…………どうやって謝ろうか…………)

 強引なことをしてしまったのが悪かったのかという不安もあった。

☆☆☆☆☆

 高島さんの性格ははっきりしているので、自分の意思に反して何かを強要されるようなことはない。ただ、こうした場面で高島さんが見せる振る舞いに強い気性はまるでなく、それが当時の僕にはどう受け止めていいのかがまるで分からなかった。あまりに普段と違い過ぎて理解が追い付いかなかったからだ。
 高島さんの立場に立ってこの時の彼女の気持ちを考えると…………この視点ではとても理解できない。ただ、この場面で逆に僕が彼女におんぶされたとしたら、自分の感情をコントロールできなくなっていたと思う。そして、これがこの時の高島さんが急にいなくなってしまったことの答えでもあり、それをこの後すぐに確認することになる。

☆☆☆☆☆

 踊りを堪能した僕らは、さきほどの屋台を見に行くことにした。
 踊りを見ていた場所から屋台までは少し離れているので、屋台までの道すがら、さっきはできなかった、趣がある建物やまわりの景色をゆっくり見ながら歩くことにした。ただ、僕の目は高島さんの姿を探していた。
 いくらか歩いたところに開放されている木造の洋館があったため、中に入ってみることになった。この建物がなぜ開放されていたのか、どんな建物だったのかはまったく思い出せない。建物の中に入っても高島さんの姿を探すことで頭がいっぱいだったからだ。時間が経てば経つほど不安が大きくなっていく。建物内をゆっくり歩いて高島さんの姿を探しても結局見つけることはできなかった。
 外に出ると屋台の灯りがすぐそこに見えていた。
 屋台を横目にここに来た時の道順を逆にゆっくりと歩みを進めていく。
 どれほど歩いたのか、そしてどれほどの時間が経ってからか、高島さんと再会することができた。
 高島さんは、艶やかな衣装を着せてもらっていた。高島さんに近づいていってみたときに見せた、彼女の僕に向けた目は”うっとり”としていた。
 
(ど、どうしちゃったんだろう…………大丈夫……かな…………)

 あまりのことで、持ってきていた一眼レフカメラを彼女に向けることで動揺する気持ちを抑えることにした。
 この時の写真が残っている。高島さんの僕に向けている目は彼女自信の気持ちを隠そうともせず、じっと僕だけを見つめて続けていた。
 そんな目をする高島さんに、僕は動揺することしかできなかった。彼女の気持ちの変化に追い付けないばかりか、怒っているのではないかと思っていた状況と実際との違いが開きすぎていて、言葉を掛けることもできないでいた。
 高島さんの変化は動きにも表れており、それは手の先まで女性らしい、しなやかな動きになっていて、もはや別人のようだった。
 今ここで僕が何かすることが正解なのだろうけど、どうしても気性の強い高島さんのイメージから離れることができない。そのため動揺することしかできずに、ただ高島さんを見ていることしかできなかった。
 ここから先の記憶がほぼない。この時の出来事が強すぎたのだと思う。
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