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第3章 高島さんから僕へ1回目の告白

第24話 見学旅行(北青ヶ島県)<2220.05.連休>

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 北青ヶ島県でシンキロウと同じような活動をしている団体の見学をさせてもらうことになった。
 実家の目の前が駅だったことから、僕が北青ヶ島県までの切符の手配をすることになった。
 切符の手配だけとはいえ、こうしたことはあまり得意ではないので、不手際のないように気を使いながら予約したものの、ひとつ問題がおきた。
 往路でどうしてもひとり連続しない座席しか取れなかったのだ。見学に行く8人のうち7人までは隣接した座席を予約することができたものの、1人だけ同じ車両の遠く離れた座席になってしまったのだ。

(こういう場合どうしても手配した僕が座席の貧乏くじひくんだろうなぁ……嫌な予感しかない。誰か自分がその席を……なんてならないだろうな……きっと……時間を割いて手間暇かけて気を使って代金を立て替えて、頑張ったのになぁ……たまたま駅が目の前だからって、そんなのなんか納得いかないなぁ……)

 理屈ではそれが仕方ないことだと分かってはいた。誰かが悪いわけでもないことも分かってはいる。でも理屈に感情が合わない。行く前から楽しさが半減した気分だった。

☆☆☆☆☆

 出発当日。
 駅に集まった皆に”事情を説明”して切符をそれぞれ渡していく。どこか期待していた。誰か離れた席を希望してくれる人のいることを。順調に切符が減っていく。1枚また1枚と。何事もなく連続した座席の切符がみんなに行き渡って、僕に離れた座席の切符だけが残った。

(だ、だよな。そりゃそうだよな。わざわざひとり遠く離れた席になんて座りたくはないよな。だよな……)

 不安が現実になった。残った切符を手に乗車した車両の遠く離れた座席に座った。
 だいぶ離れたいるうえにみんなの座席は車両の後方になるので、みんなの様子はわからないけど、気のせいか賑やかに談笑しているような声が聞こえるようだった。

(いいなぁ、これから4時間近くどうしよう。やることない上に通路側だから車窓からの景色も楽しむこともできないしなぁ……考えてもみれば、こんな思いするくらならひとりで先に現地に行っておけばよかった。何もわざわざ一緒にいかなくても。実際一緒じゃないし……はぁーもぉー、ツ・マ・ラ・ナ・イ、オ・モ・シ・ロ・ク・ナ・イ)

 僕の座った座席の窓側にはおじさんが座っていた。出発してからまもなく、その知らないおじさんから、おじさんの昔話を聞かされることになった。それでも最初はそれなりに楽しかった。その人の人生の出来後を聞くのは子供の頃から好きだったので。
 でも、1時間経っても2時間経ってもおじさんのお話を一方的に聞くだけで、流石に疲れてきた。いくら好きでも長時間一方的に聞くだけなのは流石に辛い。それでもどうにか目的の駅まで頑張ろうと、こちらからも話しかけるなどの工夫をしてみたものの、どうにもこうにもほぼ一方的に話を聞くだけの状況を変えることができないでいた。
 やがて限界をこえるところまできてしまった。

(無理)

 おじさんには申し訳ないと思ったものの、僕のほうが限界なので思い切って、荷物を持って座席を立って食堂車に向かった。食堂車は僕らの乗車している車両より前の車両になる。
 座席を立つときに、車両後方にいる彼女達7人の方を見てみようと思ったけど、見た結果はどう転んでも面白くない結果になるとしか思えないので諦めた。
 それでもせめて、席を立ってから車両を出るまではわずかな時間で”自分の席を放棄した僕”を見ていてくれないかと期待した。

(でもなぁ、座席を放棄したってどうやったら分かる……無理か……)

 荷物を持って席を立ったとはいえ、ひとりで座っているわけなので、トイレの可能性も否定できないし、普通はそう思うだろうから、もう自分の座席に帰ってこないと決めて席を立ったと考える人はいない。だから、そうした決意で席を立ったと気付くとすれば、いつまでたっても帰ってこないほどの時間がたってからになる。

(自分でしたことで、自分で決めたことだから仕方ないとは思うけど……なんか割り切れない。なんで自分の座席にすらいられなくなるのか意味がわからないし、その結果が食堂車って……はぁー、つまらない)

 そこから食堂車で目的の駅まで一人で過ごした。それはそれで経験したことがなかったのでよかったと捉えられないこともなかった。でも今日は一人旅ではない。今回の旅行は、はじめから面白くない。

(みんな楽しいんだろうな。片道4時間近く。何を話しているんだろうか……もう、なんかそこに思いを馳せるだけでも更に嫌になるなぁー……)

 結局後半の2時間近く食堂車に居座って、目的の駅に到着した。
 駅に降り立ってみんなと合流した。合流したみんなから途中僕が座席からいなくなったことを突っ込まれたので、気をよくして嬉しくなったのを覚えている。でも、今にして思うと、楽しい会話の延長線の”話のネタ”になっただけだったのかとも思えるので、そう考えるとやっぱり面白くない。人として小さい……のか?
 やはりこうした幹事的な役割は無理なのだと思う。上手に立ち回れない。
 目的の駅に着いてからは、目的の施設まで徒歩での移動になった。でも、どれくらい歩いたのかは覚えていない。
 この旅行で高島さんは終始嬉しそうな表情をうかべていたけど、なんでだったのだろうか。
 この先帰路を含めてほぼ何も覚えていない……って、よほど面白くなったんだろうな自分。
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