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騒がしい日々

バージルのお迎え

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私の息抜きは結局短い時間だけだった。血相を変えて走って来たバージルに捕まってしまったのだ。


「バージル?何をそんなに慌てているんですか?」

私は少し赤らんだ色の石造りの家の入り口で、農夫の奥さんらしき人にひんやりした美味しいお茶を頂いていた。素朴な家の中は、居心地良さげに整えられていて、この世界の彼らは表情からして幸せそうに見えた。

そんな私に拍子抜けしたのか、バージルはため息をつくと恐縮している農夫の奥さんに自分の分のお茶も頼んで、椅子に座った。勧められても居ないのに勝手に座るなんて、さすが王族だわ。鼻持ちならない。


「ルリはどうしてここに居るんだ。泉に落ちたのではないのか?」

バージルがそう言うと、途端に周囲で遠巻きにしていた農夫達がざわざわと恐ろしげに顔を見合わせた。私はそれを不思議に思いながら答えた。

「ええ、落ちました。綺麗な貴方の元カノ達に身体を触れられて、嫌になって身体を捻ったらうっかり落ちてしまったんです。でも私は泳げたので、いい機会だからちょっと一人になろうと思ってそう遠くない対岸へ登ったんです。ダメでしたか?

私いつも人に囲まれていて、息が詰まっちゃって。侍女達は親切ですけど、私も自由が欲しかったっていうか。岸を上がったらあの場所に出て、彼らにサンダルを借りたんです。砂漠にこんな場所があるなんて思わなかったわ。彼らもとても親切にしてくれて。」


そう言うと、バージルは何も言わずに私に釣られる様に周囲を見回した。目の前には作物らしきものが生い茂る畑が広がっていて、居住区には同じ様な造りの住まいが並んでいた。そしていつの間にか子供達が楽しげにこちらを覗き込んでいた。

バージルは銀色の髪を編み込んでいるけれど、同じ髪色の人は居なかった。もしかして王族色なのかしら。彼らは明るい茶色が多くて、泉の側で見たピンク色や青紫色の髪も居なかった。


「ルリに親切にしてくれてありがとう。」

そう農夫らに言うと、バージルは立ち上がって私に手を差し出した。ああ、もう一人歩きは終了なのかしら。私は渋々手を取ると、彼らにお礼を言って子供達に手を振ってバージルと元来た道を歩き出した。前方には従者達が私達を待っている様だった。

「ごめんなさい。もしかして心配掛けちゃったのかしら。私もあっという間に服が乾いたものだから、泉に落ちた事もすっかり忘れちゃって。この国の人は水の中を泳いだりしないのかしら。」

そう一人で喋っていると、バージルは私を横目で見て言った。


「ああ。元々水場はあの泉しかないし、あそこにはガリウリが住んでいるから誰も入ろうとはしない筈だ。まして泳ぐなど、ガリウリに食べられにいく様なものだ。ルリがなぜ無事だったのか不思議なくらいだ。」

私はバージルの口から飛び出た話の内容をなぞった。ガリウリに食べられる?もしかして私やばかったの?











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