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騒がしい日々
オアシス
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結局私はバージルの寝室で寝起きをする様になってしまった。とは言え、昼間は皇子として忙しいバージルは、目が覚めたら既に居ない事が多かったし、夜の睦み合いが激しくて、私自身もとてもじゃないけどバージルの朝に付き合っては起き上がれなかった。
「このままでは死んでしまうわ…。」
思わず呟いた言葉に、私の専任になった侍女長のセリアが微笑んで答えた。
「この様なバージル様の寵愛は見たことがありませんから。大抵は一度きりで、ここ数年は有力者から送り込まれる方ばかりでした。ご自分で望まれるのは初めてでは?」
そう言われると、どことなく浮き立つ気がするのは、私も随分絆されてるのか、初めての相手だからなのか自分でも分からなかった。
「ルリ様、本日は庭園までお出掛けしましょうか。」
そう言われて、私は顔を顰めた。
「でも、この格好じゃ絶対嫌よ。行きたいけど…。」
相変わらず卑猥な下着に薄い衣は、この世界の上位の女たちの衣装だとは分かって来たが、胸の存在感がありすぎる私にはとてもじゃ無いが人前に出る格好では無かった。するとセリアが後ろにかしづいていた召使いから包みを受け取って、バージル様に言われてようやく仕立て終わったのだと、その中身を私に見せた。
「不思議だわ…。この砂岩ばかりの場所にこんな草地があるなんて。」
庭園は瑞々しくて、まさにオアシスの風態を成していた。やはり水辺だから国が成り立つのだろうけれど。
「ルリ様、ここ風の国はこの恵まれたオアシスのお陰で、豊かな大国のひとつなのですよ。この国の恵みは周辺国の垂涎の的です。もちろん強い王族の力あってのものですが。特にバージル皇子の戦術の強さは周辺国でも名を轟かせていますから、滅多なことでは侵略もありません。」
私は冴え冴えとした美しいバージルを思い浮かべた。私を征服するあの逞しさは、皇子としても名を馳せているそれと重なった。不意に身体が疼く気がして、私は少し狼狽して咳払いすると、裸足になって一歩足を踏み出した。
しっとりとした柔らかな芝の様な感触は、私を酷く懐かしくさせた。気づかなかったけれど、私はすっかり心も乾き切っていた。乾いた大地と、乾いた空気は、未だ慣れないものだったから。
私が足元の感触を楽しんでいると、建物の方から騒めきが聞こえて来た。セリアの少し慌てた声に私は何事かと振り返った。そこには一目で選ばれし者と分かる、華やいだ女たちが数人、私の方を酷く険しい顔で見つめていた。
ああ、もしかして修羅場…!?
「このままでは死んでしまうわ…。」
思わず呟いた言葉に、私の専任になった侍女長のセリアが微笑んで答えた。
「この様なバージル様の寵愛は見たことがありませんから。大抵は一度きりで、ここ数年は有力者から送り込まれる方ばかりでした。ご自分で望まれるのは初めてでは?」
そう言われると、どことなく浮き立つ気がするのは、私も随分絆されてるのか、初めての相手だからなのか自分でも分からなかった。
「ルリ様、本日は庭園までお出掛けしましょうか。」
そう言われて、私は顔を顰めた。
「でも、この格好じゃ絶対嫌よ。行きたいけど…。」
相変わらず卑猥な下着に薄い衣は、この世界の上位の女たちの衣装だとは分かって来たが、胸の存在感がありすぎる私にはとてもじゃ無いが人前に出る格好では無かった。するとセリアが後ろにかしづいていた召使いから包みを受け取って、バージル様に言われてようやく仕立て終わったのだと、その中身を私に見せた。
「不思議だわ…。この砂岩ばかりの場所にこんな草地があるなんて。」
庭園は瑞々しくて、まさにオアシスの風態を成していた。やはり水辺だから国が成り立つのだろうけれど。
「ルリ様、ここ風の国はこの恵まれたオアシスのお陰で、豊かな大国のひとつなのですよ。この国の恵みは周辺国の垂涎の的です。もちろん強い王族の力あってのものですが。特にバージル皇子の戦術の強さは周辺国でも名を轟かせていますから、滅多なことでは侵略もありません。」
私は冴え冴えとした美しいバージルを思い浮かべた。私を征服するあの逞しさは、皇子としても名を馳せているそれと重なった。不意に身体が疼く気がして、私は少し狼狽して咳払いすると、裸足になって一歩足を踏み出した。
しっとりとした柔らかな芝の様な感触は、私を酷く懐かしくさせた。気づかなかったけれど、私はすっかり心も乾き切っていた。乾いた大地と、乾いた空気は、未だ慣れないものだったから。
私が足元の感触を楽しんでいると、建物の方から騒めきが聞こえて来た。セリアの少し慌てた声に私は何事かと振り返った。そこには一目で選ばれし者と分かる、華やいだ女たちが数人、私の方を酷く険しい顔で見つめていた。
ああ、もしかして修羅場…!?
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