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鱗族

見慣れぬのはお互い様

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私は侍女らしき女たちに世話を焼かれながら注意して観察していると、一見青い皮膚にも微妙な色の違いがあることに気がついた。彼女たちはバージルより濃い青々とした色味で、多分立場によって紋様の複雑さも違う。位が高い方が複雑なのはそうらしい。バージルほどの紋様は誰にも見られなかった。

面白いのは、彼女たちは彼らの中では妙に白く感じる私の皮膚に興味津々と言った風で、機会あらば触れてこようとする。そして触れると一様に驚きの表情で、私の顔を見上げてもう一度自分の触れている私の感触を確かめる。

私はまるで、妙なモルモットになった気がして苦笑しながらも、ただここで拒否しても先延ばしになるだけのような気がして、あえて堂々と触れさせていた。


「ルリ様はとても不思議なお身体の造りをなされてますね。」

そう言いながら侍女長らしき落ち着きのある女性が、私に着替えを見せながら話しかけてきた。彼女の視線が私の胸に向けられているのを感じて、私も同様に相手の胸元に目をやった。

侍女たちよりも質のよい、トロミのあるギリシャ神話に出てくるような衣装をまとった彼女の胸元は、少しの膨らみはあるものの、せいぜい胸の膨らみ始めた少女の様な大きさだった。


バージルの態度を見ても、私の様な胸は見たことがないのだろう。私はまるで乳牛のホルスタインになった様な気分でため息をついた。元の世界でも胸に注目されて気まずい思いをしてきたというのに、ここでは更に注目を浴びてしまうなんて。

しかしそんな気持ちも、侍女長の差し出した着替えを見て吹っ飛んでしまった。

「え!待って。無理だから!そんな服着れません!」


細い紐の様な下着を見せられて、侍女の衣装の下から現れた見本は、何とも卑猥なものだった。胸のポッチを隠す三センチほどの幅の布が首から両胸に降りてきて、お腹の前でクロスされて腰に回っていた。下半身は飾られた三角のミニふんどしの様な下着で、私は思わず呻いてしまった。


最悪ふんどしはビキニ感覚で着られるとしても、トップスはダメだ。つるぺたな彼女たちでさえ、美しいけれど直視できない卑猥さを感じるというのに、私がそんなものを身につけたら逮捕間違いなしだ。ここに警察はいないけど。見せてはいけないレベルなのは間違いない。


けれど侍女長はにこやかに言った。

「これはこの国では普通のものです。特におかしな事には…、なりませんから、先ずは身につけてみられたらいかがでしょう。」

私は彼女が一瞬言葉を止めたのに気づいたけれど、着てみたら彼女にも私が拒否した理由が分かるだろうと渋々身につけた。開き直って身につけては見たものの、彼女たちが一様に息を呑んだのが証拠だろう。私は肩をすくめて言った。

「ね?やっぱり無理でしょう?お願いですから何とかなりそうな他のものを用意して頂けますか?」


その時侍女たちの視線が私の後ろに向いた気がして、私は嫌な予感に身を硬くした。

「いや、そのままが良い。…お前たちは下がって良い。」

ああ、とんでもない格好なのに、まずい相手が来ちゃった!







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