紋様皇子が私の毒を喰らったと訴えてきます

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
上 下
6 / 29
夢の中

バージルside可愛い戦利品

しおりを挟む
王都の門に到着する頃には、私の後ろに付き従って来たギルたちが、興味津々に私の抱えているマントの膨らみを見つめてきた。私はうるさい視線に閉口してため息をつくと、手を振って解散させた。

私とギルが竜馬止めで降りると、ギルは黙っていられないと言った具合で私に尋ねた。

「皇子、お願いですから教えて下さい。一体何を見つけたんですか?」

私は一瞬考え込むと、片眉を上げてギルに言った。

「何だろうな。私にも分からぬ。見たことのない生き物だ。少し怪我をしている様だ、医者を呼んでくれ。」


ギルは驚いた顔で私をマジマジと見て呟いた。

「皇子がその様な楽しげな様子は久しぶりに見ました。しかし、大人になっても生き物を拾って来るのはどうかと思いますがね。まぁ良いでしょう。では皇子の部屋でよろしいのですか?それとも洗った方がいい位、汚れていたりしますか?」

私は艶めく黒い髪を思い出して首を振った。

「いや、綺麗だった。とりあえず、私の部屋に医者を寄越す様に手配してくれ。先に行くぞ。」

私はマントに注がれるギルの眼差しに苦笑して、踵を返して自分の部屋に戻った。早く腕の中のこれをじっくり眺めたい気持ちで、知らず知らず足早になってしまった。


部屋に着くと、ベッドの上に腕の中のそれをそっと下ろした。目の前に横たわるそれは、見たことも無いつるりとした白っぽい薄い皮膚に覆われていた。見れば見るほど、我々と似ている様で似ていなかった。これは鱗族ではないのだろう。

砂だらけの白と黒のたっぷりとした布を苦労して脱がせると、全身を薄い黒い布の様な物に覆われていた。身体に張り付いたそれを引っ張ると、その布は良く伸びた。チラリと見えた白い腕を指でなぞると、やはり柔らかい。


しかも、胸元の黒い布の下には膨らみがあった。思わず布ごしに指で触れると、破裂してしまいそうな弾力があって、慌てて手を引っ込めた。これが弾け飛んだら勿体ない。

目を足元へとに辿ると、脚の間はつるりと何も無いので、多分これは女型なのだろう。腹から股間、腿まで布ごしに手のひらで撫でれば、やはり経験の無い柔らかさを感じた。


目を閉じた顔を眺めると、ぼってりとした唇が赤く色づいていた。私たちも唇はあるけれど薄くて色味が無い。まるで美味しそうな果実の様に見えるそれは、もしかして毒があるのかもしれない。魅惑的なものほど毒が含まれているというのが、この世界では常識だ。

全てが可愛らしく柔らかな、魅力的な戦利品を満足気に眺めていると、部屋の扉がノックされてギルの声がした。

「皇子、入りますよ。医者を連れて来ました。皇子、考えたんですけど、鱗族じゃ無いとすれば、医者じゃ用無しなんじゃ無いですか?まったく、皇子の気まぐれにも…。皇子!…これ何ですか?」


ギルが私のベッドに横たわる戦利品を見つめて驚きの表情を浮かべた。ギルを押し退けてベッドに近づいて来た医官のマージがやはり目を見張って、興奮した様にそれをざっと調べると、ため息をついて呟いた。

「…これは驚いた。皇子、これが何かご存知か?これは多分、別の種族の亜人に違いありません。でもこの世界に別の亜人が居るなんて聞いたこともありません。一体どこからやって来たんでしょう。」

私とギルはマージの興奮に釣られる様に、目を見開いてベッドに横たわるそれを見つめた。確かにそれは身に付けているものも、身体の特徴も我々とは少しづつ違って、結局似ている様で全然似ていなかった。人型と言う以外は。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

王子の逆鱗に触れ消された女の話~執着王子が見せた異常の片鱗~

犬の下僕
恋愛
美貌の王子様に一目惚れしたとある公爵令嬢が、王子の妃の座を夢見て破滅してしまうお話です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。 ※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

処理中です...