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夢の中

これは夢でお願いします

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~18時間前~



柔らかい地面に手をついて、周囲を見渡した。ここは一体何処だろう。砂漠?手に触れるものは確かに砂みたい。そして目線の先には赤く色づいた岩場も見える。少しの緑も。

岩場の向こう側に見えるのは街の様だけど、私は眉を顰めた。あんな街知らない。見慣れない造形の建物がいくつも並んで、そのはるか奥に、まるでアラビアンナイトに出てくる様な一際大きな建物が建っていた。


あまりにも非現実的な光景に、私は思わず笑ってしまった。

「…何。どういうこと?夢なの?」

手の中の生々しい砂の感触は、これが夢ではないと私に囁いてくる。その時、勇ましい鬨の声を響かせて、地面を蹴るような地響きが聞こえて来た。ハッと顔を上げると、私は周囲を見回して急いで大きな岩場の陰に身を潜めた。


状況が分からないのに、むざむざと目立つ様な事はすべきじゃないと、私の危機管理が仕事をしたからだ。岩場の向こう側を、数頭の馬の様なものに乗った男達が、雄叫びを上げて走り去って行った。

「…何あれ。」

彼らは布を巻きつけた様なゆったりとした服を着ている様に見えた。あっという間に駆け抜けていったのでハッキリとは見えなかったけれど。…今の馬だった?


私は、岩場の影で蹲って考え込んでいた。さっきまで私は道場で練習をしていたはずだ。そう、本当にさっきまで。集中力が欠けていたから、頭を冷やそうと雪の降る外へ出たのは覚えてる。

あの時灰色の重い空から、ぼたん雪が絶え間無く落ちてくるのを、顔に冷たい雪を受けながらも見つめていた私は、そのままどんどん空に吸い込まれていく感覚に陥ったのを覚えている。


子供の頃から、私はその不思議な感覚が大好きで、今日もいつもの様に無心になってそれを感じていた、筈だった。けれどもふと気がつけば、私はこの感じた事のない熱い空気の中にいた。微かに湿っている濡れた髪が、やっぱり雪に打たれていた事を伝えていた。

私はここでじっとしていてもジリジリ焼け付く様な日差しに干からびるだけだと感じて、あの街のような場所へ行くしかないと、警戒しながら少しづつ歩き始めた。


足元を見ると、突っ掛けたサボが歩きにくい事この上無かったけれど、厚みのある底のせいで地面の熱が伝わって来なくてホッとした。

雪を見上げていた時は、積もり始めた雪に裸足が触れなくて、冷たくなくて良かったと思ったのに、今は熱い砂が触れなくて良いと思ってるなんて。自分の立っている場所が、まるで真逆になってしまったのを感じて思わず口元に笑みを浮かべた。


私笑えてる?笑える位なら、まだ大丈夫。夢の中だとしても私の頭は冷静だ。自分の身に何が起こったのか分からないけれど、でもここに立ち止まってしまえば、恐怖で二度と前にも後ろにも進めないのだけは感じていた。
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