イバラの鎖

コプラ

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交差

逃避※

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 僕を抉る兄上の逞しいそれに翻弄されながら、僕は声を殺して重なる快感に耐えた。別邸ではないこの屋敷で、あられも無いこの爛れたやり取りが漏れ出すことを僕は酷く恐れた。

 けれど、そんな僕の必死の努力を嘲笑う様に、兄上は容赦なく僕を攻め立てる。

 ぐりっと手前の敏感な場所を擦られて、突っ伏した僕は悲鳴に似た喘ぎをシーツに逃した。兄上に掴まれた腰が高く引き上げられて、僕は経験のあるその先を期待して両手でシーツを握りしめた。


 けれど、兄上は殊更ゆっくり僕の奥へと挿れると、味わう様に小さく動いた。ああ、それは何だか悶える様な気持ち良さと少しの苦しさ、そして不安を連れてくる。

 時々驚く様な快感が散りばめられたその動きに、僕は我慢できなくて肩越しに振り返って兄上を見た。

 少し口を開けて、興奮で強張った顔をした兄上がそんな僕に気づいて、重なったそこをピッタリと押し付けて僕にのし掛かって来た。その体勢が与える快感に呻きながら、僕はどこかホッとした気持ちで兄上の体温を感じた。


 背中から肩、首へと兄上の唇が甘やかに触れて、僕は強請る様に横を向いてそれが唇まで到達するまで待った。ようやく唇同士が重なると、僕は待ちきれない様に兄上の舌を吸った。

「…アンドレ。随分美味しそうに私を味わうね…。」

 掠れた兄上の声に、僕はヒクリと下半身を疼かせた。今やグチグチと小刻みに動く兄上からもたらす気持ち良さは、僕の息を浅くした。

「好き…、兄上っ!」


 溢れ出した僕の感情の望み通りに、兄上とピッタリと重ねられた身体はすっかりシーツにへばりついて、僕の中の良い場所を撫で立てる兄上の動きに揺さぶられて、自分の昂りもまたシーツに擦られて甘い快感を重ねた。

 その重なる刺激に、僕はもう声を殺す事もできずに身体が熱くなるばかりだった。

「兄上っ!もう、いっちゃうっ…!」

 僕の切羽詰まった懇願に、兄上は腰を掴んで僕を引き上げると容赦のない挿出で、濡れた破裂音を部屋に響かせた。


 僕の奥へ挿れる度に肌が触れ合って鳴る卑猥な音が部屋に響いて、僕はそのいやらしさにますます興奮が止まらない。兄上を咥え込んだ僕の窄みは、兄上の手が僕自身を激しく扱くのと同時に馬鹿みたいに兄上を締め付けた。

 頭の奥が痺れる様な強烈な絶頂に、僕は声にならない悲鳴でそれを称賛した。兄上もそれに少し遅れて苦しげな呻き声と共に容赦ない動きで僕を更に追い詰めるから、僕は終わらない苦しさと紙一重の絶頂に死んでしまいそうだった。


 不意にズルっと兄上の重いそれが僕から引き摺り出されて、窄みに押し付けながら熱い飛沫を吐き出してる時、僕はこの上なく興奮と幸福を感じる。それが兄上の僕への執着の様に感じるからだ。

 兄上が塗りつける欲望に、僕は独占欲を感じて胸の奥が疼いた。本当は僕の中へ吐き出して欲しいそれは、兄上曰くは僕の身体には良くない事だとあまりしてくれない。

 ああ、でも僕は本当はそれを望むんだ。そうして欲しくて、僕は屋敷でこうやって身体を重ねる様になっても別邸へと足を運ぶのをやめられない。


 「どうした…?激しすぎたか、アンドレ。」

 肘を立てて僕から少し身体を浮かして覗き込む兄上が僕に優しく尋ねた。僕はぐったりとして開かない瞼をくっつけながら口を開いたけれど、掠れ声しか出なかった。

「…ん。…中に出して欲しかっただけ。」

 思わず言ってしまった本音に兄上は笑いを含んだ口づけを僕に落とした。

「まったく、アンドレは私を喜ばすのが上手いな。どうしたってアンドレに負担になるだろうに…。今度別邸でたっぷり味わって貰うさ。アンドレが可愛すぎて、私も一度じゃ満足出来ない…。」


 起き上がった兄上が布で汚れた僕の身体の表面を拭いながら、ごろんと仰向けた僕の濡れた股間をギラついた眼差しで見ている。いつの間にか兄上の逞しいそれも持ち上がって来ているのが分かって、僕は兄上の手から布を奪い去って床に放った。

 それから兄上の胸に手を伸ばして、興奮で尖ったその可愛い粒を爪で弾いて笑った。

「…どうして我慢するの?僕ももっと欲しいのに。」

 困った奴だと欲望を滲ませて凄みのある顔で微笑む兄上に僕はゾクゾクさせられて、覚えさせられた素晴らしい快感のお代わりをしてしまった。



 屋敷では朝まで僕の部屋に残るわけにいかない兄上が、薄れていく意識の端っこで部屋を出ていくのを感じながら、僕は引き寄せられる睡魔に抗う事なく自分から飛び込んだ。

 決して許されるわけでは無いこの禁断の関係から目を逸らせるなら、僕は簡単にそうした。

 まだ子供だった僕は、兄上の苦悩まで想像する事も出来ずに、目の前の覚えたての愛と欲望に溺れてどっぷりと浸かり込んでいたんだ。冷静になれば、僕らのしていることは誰にも言える事では無いと簡単に分かることだった。


 僕らは兄弟だった。義理とはいえ、それは紛れもない事実で、公表出来る関係では無かった。それを僕より良く分かっていた兄上は、僕と交わる度に苦悩を積み重ねていた。

 僕が現実から目を逸らしている間も、兄上がそれを見つめていたのを知ったのは随分後だったけれど。

 シモン、僕は何て子供だったんだろう。一人で悩ませて、苦しませてごめんね。
















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