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王都へ
崖っぷち※
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兄上のローレンスと僕の仲を探る様な追及に、僕は小さく息を吸って答えた。
「…普通に遊んでいただけです。兄上は何を聞こうとしているのですか?」
すると兄上は僕から目を逸らして呟いた。
「…何だろうな。アンドレがローレンスと特別な関係だったのか知りたいのかもしれない。指南はマリーとアランに済ませて貰ったんだろう?マリーは兎も角、アランがアンドレを指南するってことはそう言うことだろう。」
僕にはプライバシーなど何もない様だった。けれど、貴族というものは公然の秘密というものがあるからしょうがない。でも僕にそんな事を聞く前に、自分だって言うべき事があるのではないの?
僕はあの時の傷つけられた記憶が蘇って来て、むしゃくしゃした気持ちのまま兄上のグラスを奪うと一気に喉に流し込んで、案の定咽込んだ。
「おい!それは結構強いぞ…!」
少し慌てた兄上にしてやったりな気持ちが湧き上がって、僕は唇を歪めて言った。
「僕も知りたい事ならあります。と言うか、知りたくなかったのに教えられたんですよ。兄上はデミオとそう言う関係なんでしょう?ジニー卿のところに王都から来ていたデミオが、僕にわざわざ兄上に優しくして貰っているって言いに来たんです。
あの頃兄上は僕と目を合わせるのも避けていたのに。それをデミオから聞いて、僕がどんなに悲しくなったのか兄上には分からないでしょう?」
兄上は酔いが覚めたかの様に身を起こして、眉を顰めて僕の話を聞いていた。
「僕は兄上から弟だとも思われていないのは知ってますけど、だからって赤の他人にその事を指摘されたくもないです。」
咽込んだ酒のせいなのか僕の唇は閉じなかった。ここ数年抱えて来た兄上とのわだかまりを吐き出さなくては、急な兄上の変化に振り回され続けるのは目に見えてる。
僕の事を色々言うのなら、兄上だって僕に説明する必要があるんだ。僕は馬鹿みたいに強気になっていた。そんな僕をじっと見つめながら兄上は呟いた。
「…アンドレ、酔ってるな?」
確かに酔ってしまったかもしれない。喉の奥がまだ焼けつくみたいだ。だからサラリとした肩までの黒髪を、兄上が困惑した様子で額から掻き上げる様子から目が離せないでいるのも不思議じゃないんだ。
僕は兄上の探る様な深みのある灰色の瞳に視線を動かして、それこそ身動きできないほど囚われてしまった。兄上は素敵だ。普段あまり感情を乗せない瞳は、今も僕には何を考えているのか読み取れないけれど、誰でも兄上に見つめられたら目を逸らすことなど出来ないだろう。
「…酔ってません。王都に来てから、兄上は僕に期待させたんです。今までの様に冷たくあしらってくれたら良かったのに。優しくされたら、僕は…。」
兄上はますます僕を睨みつける様にして囁いた。
「…優しくしたら、どうなるんだ?」
僕はかろうじて自分が際どい所に立っている事を自覚した。このまま進んだら、僕が兄上に義兄弟以上の感情を持っている事がバレてしまう。それはせっかく近づいた今の関係をぶち壊してしまうだろう。ああ、でも今破壊してるのは僕なのかな?
僕は顔を逸らしてソファから立ち上がろうと、テーブルの上の本を二冊手に取った。その時僕より大きな形の良い手が伸びて来て手首を掴んだ。
「言いたい放題で言い逃げか?」
僕はボンヤリと少し湿った兄上の指の感触を味わいながら呟いた。
「…兄上の手は、アランとも違いますね。」
何故そんな事を言ってしまったのか分からない。やっぱり酔っていたんだろう。
急にグイッと引っ張られて、僕は簡単に兄上の腕の中に引っ張り込まれてしまった。
「…兄上?」
明らかに怒りを滲ませた兄上が、目を細めて僕を見下ろしていた。
「酔っているからって全てが許されるわけじゃないぞ。アンドレはアランやローレンスとどれだけ不埒な事に勤しんだ?きっと彼らはお前を離さなかっただろうな。今度はジェラルドも自分のものにするのか?
…私の側でそんな事は許さない!」
兄上が僕の事を誤解しているのは分かった。だけどまるきり何もなかった訳じゃないせいで、僕は違うとも言えなかった。そんな僕を見下ろしていた兄上は、自嘲めいた笑みを浮かべて言った。
「…私はこんなふしだらな美貌の義弟を溺愛していると世間では思われているんだ。だったら世間の考え通りにしても良いって事だな。所詮血は繋がっていないのだから、私たちは赤の他人だ。だから誰にでも身体を開くアンドレと楽しんでも良いのだろう?」
思いもしない事を言われて、僕はショックで固まってしまった。そんな僕に兄上が覆い被さって来て乱暴に唇を押し付けた。それは僕の気持ちなど無視したものだったと言うのに、僕は痺れる様な感覚を覚えてしまった。
ああ、どんな形であれ、僕は兄上と口づけるのを心底願っていたんだ。心の奥で喜びが湧き上がって来て、僕は従順に兄上からの傷つける様な口づけに従った。
不意に力が緩んで、癒す様な動きに変わった。僕は夢中になって、自分から強請る様に口を開けて舌を伸ばした。願い通り兄上の甘やかす様な舌が僕の弱い所をなぞって、僕は甘く呻きながらそれに応えた。
久しぶり過ぎて身体が張り詰めてしまったせいで、僕は無意識にズキズキする股間を兄上の腿に押し付けていた。すると顔を引き剥がした兄上は、嘲笑うかの様にガウンの間から手を差し込んで、下穿きの上から焦らす様に昂りを摩りながら言った。
「まったく、こんなにしてふしだらな奴だ。…だが他所で醜聞を撒き散らされるくらいなら、私が相手をしてやる。だが、ここで最後までするのは不味いな。私の別邸に近々招待しよう。
だがこうなってしまっては、今は収まりがつかないのだろう?私の手の中でビクついて…。」
そう言うと下穿きをずり下げて、直接触れられたから堪らない。僕は兄上にしがみついて噛みつくような口づけを受けながら、あっという間に兄上の手の中で果ててしまった。
ぐったりとした僕をドサリとソファに放る様に引き剥がした兄上は、ポケットからチーフを取り出すと濡れた手を拭って僕の方を見もせずに冷たく言い放った。
「部屋に戻れ、アンドレ。これ以上ここに居ても今夜はもう終わりだ。…近いうちに別邸へ呼ぶから、他の者とふしだらことはするな。それくらい我慢出来るだろう?」
現実に戻った僕は、震える手で慌てて身繕いをすると、ランプを手に部屋を飛び出した。興奮とショック、それに誤解された悲しみが襲って来て、自室に飛び込んだ時にはもう立って居られなかった。
僕は扉に寄り掛かってズルズルと座り込むと、顔を手で覆って声を殺して泣いた。
ああ、僕は馬鹿だ。あんな風に扱われて、それでも喜んでしまうなんて。
「…普通に遊んでいただけです。兄上は何を聞こうとしているのですか?」
すると兄上は僕から目を逸らして呟いた。
「…何だろうな。アンドレがローレンスと特別な関係だったのか知りたいのかもしれない。指南はマリーとアランに済ませて貰ったんだろう?マリーは兎も角、アランがアンドレを指南するってことはそう言うことだろう。」
僕にはプライバシーなど何もない様だった。けれど、貴族というものは公然の秘密というものがあるからしょうがない。でも僕にそんな事を聞く前に、自分だって言うべき事があるのではないの?
僕はあの時の傷つけられた記憶が蘇って来て、むしゃくしゃした気持ちのまま兄上のグラスを奪うと一気に喉に流し込んで、案の定咽込んだ。
「おい!それは結構強いぞ…!」
少し慌てた兄上にしてやったりな気持ちが湧き上がって、僕は唇を歪めて言った。
「僕も知りたい事ならあります。と言うか、知りたくなかったのに教えられたんですよ。兄上はデミオとそう言う関係なんでしょう?ジニー卿のところに王都から来ていたデミオが、僕にわざわざ兄上に優しくして貰っているって言いに来たんです。
あの頃兄上は僕と目を合わせるのも避けていたのに。それをデミオから聞いて、僕がどんなに悲しくなったのか兄上には分からないでしょう?」
兄上は酔いが覚めたかの様に身を起こして、眉を顰めて僕の話を聞いていた。
「僕は兄上から弟だとも思われていないのは知ってますけど、だからって赤の他人にその事を指摘されたくもないです。」
咽込んだ酒のせいなのか僕の唇は閉じなかった。ここ数年抱えて来た兄上とのわだかまりを吐き出さなくては、急な兄上の変化に振り回され続けるのは目に見えてる。
僕の事を色々言うのなら、兄上だって僕に説明する必要があるんだ。僕は馬鹿みたいに強気になっていた。そんな僕をじっと見つめながら兄上は呟いた。
「…アンドレ、酔ってるな?」
確かに酔ってしまったかもしれない。喉の奥がまだ焼けつくみたいだ。だからサラリとした肩までの黒髪を、兄上が困惑した様子で額から掻き上げる様子から目が離せないでいるのも不思議じゃないんだ。
僕は兄上の探る様な深みのある灰色の瞳に視線を動かして、それこそ身動きできないほど囚われてしまった。兄上は素敵だ。普段あまり感情を乗せない瞳は、今も僕には何を考えているのか読み取れないけれど、誰でも兄上に見つめられたら目を逸らすことなど出来ないだろう。
「…酔ってません。王都に来てから、兄上は僕に期待させたんです。今までの様に冷たくあしらってくれたら良かったのに。優しくされたら、僕は…。」
兄上はますます僕を睨みつける様にして囁いた。
「…優しくしたら、どうなるんだ?」
僕はかろうじて自分が際どい所に立っている事を自覚した。このまま進んだら、僕が兄上に義兄弟以上の感情を持っている事がバレてしまう。それはせっかく近づいた今の関係をぶち壊してしまうだろう。ああ、でも今破壊してるのは僕なのかな?
僕は顔を逸らしてソファから立ち上がろうと、テーブルの上の本を二冊手に取った。その時僕より大きな形の良い手が伸びて来て手首を掴んだ。
「言いたい放題で言い逃げか?」
僕はボンヤリと少し湿った兄上の指の感触を味わいながら呟いた。
「…兄上の手は、アランとも違いますね。」
何故そんな事を言ってしまったのか分からない。やっぱり酔っていたんだろう。
急にグイッと引っ張られて、僕は簡単に兄上の腕の中に引っ張り込まれてしまった。
「…兄上?」
明らかに怒りを滲ませた兄上が、目を細めて僕を見下ろしていた。
「酔っているからって全てが許されるわけじゃないぞ。アンドレはアランやローレンスとどれだけ不埒な事に勤しんだ?きっと彼らはお前を離さなかっただろうな。今度はジェラルドも自分のものにするのか?
…私の側でそんな事は許さない!」
兄上が僕の事を誤解しているのは分かった。だけどまるきり何もなかった訳じゃないせいで、僕は違うとも言えなかった。そんな僕を見下ろしていた兄上は、自嘲めいた笑みを浮かべて言った。
「…私はこんなふしだらな美貌の義弟を溺愛していると世間では思われているんだ。だったら世間の考え通りにしても良いって事だな。所詮血は繋がっていないのだから、私たちは赤の他人だ。だから誰にでも身体を開くアンドレと楽しんでも良いのだろう?」
思いもしない事を言われて、僕はショックで固まってしまった。そんな僕に兄上が覆い被さって来て乱暴に唇を押し付けた。それは僕の気持ちなど無視したものだったと言うのに、僕は痺れる様な感覚を覚えてしまった。
ああ、どんな形であれ、僕は兄上と口づけるのを心底願っていたんだ。心の奥で喜びが湧き上がって来て、僕は従順に兄上からの傷つける様な口づけに従った。
不意に力が緩んで、癒す様な動きに変わった。僕は夢中になって、自分から強請る様に口を開けて舌を伸ばした。願い通り兄上の甘やかす様な舌が僕の弱い所をなぞって、僕は甘く呻きながらそれに応えた。
久しぶり過ぎて身体が張り詰めてしまったせいで、僕は無意識にズキズキする股間を兄上の腿に押し付けていた。すると顔を引き剥がした兄上は、嘲笑うかの様にガウンの間から手を差し込んで、下穿きの上から焦らす様に昂りを摩りながら言った。
「まったく、こんなにしてふしだらな奴だ。…だが他所で醜聞を撒き散らされるくらいなら、私が相手をしてやる。だが、ここで最後までするのは不味いな。私の別邸に近々招待しよう。
だがこうなってしまっては、今は収まりがつかないのだろう?私の手の中でビクついて…。」
そう言うと下穿きをずり下げて、直接触れられたから堪らない。僕は兄上にしがみついて噛みつくような口づけを受けながら、あっという間に兄上の手の中で果ててしまった。
ぐったりとした僕をドサリとソファに放る様に引き剥がした兄上は、ポケットからチーフを取り出すと濡れた手を拭って僕の方を見もせずに冷たく言い放った。
「部屋に戻れ、アンドレ。これ以上ここに居ても今夜はもう終わりだ。…近いうちに別邸へ呼ぶから、他の者とふしだらことはするな。それくらい我慢出来るだろう?」
現実に戻った僕は、震える手で慌てて身繕いをすると、ランプを手に部屋を飛び出した。興奮とショック、それに誤解された悲しみが襲って来て、自室に飛び込んだ時にはもう立って居られなかった。
僕は扉に寄り掛かってズルズルと座り込むと、顔を手で覆って声を殺して泣いた。
ああ、僕は馬鹿だ。あんな風に扱われて、それでも喜んでしまうなんて。
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