イバラの鎖

コプラ

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辺境の地で

ローレンスの秘密の指南※

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 「ローレンス!よく来たね。待ってたよ!」

 あの馬場競技以来、ローレンスと僕は頻繁に城を行き来する様になった。よく気がつくひとつ年上のローレンスには、僕も無理する必要が無かったせいもある。人より背が高くて恵まれた体格ながら、それでいていつも朗らかなローレンスに僕はすっかり懐いていた。

 いつもは談話室や温室でお茶を飲んだりカードをしたりする僕らは、ローレンスの希望でボードゲームをするために僕の部屋に移動する事になった。


 従者にお茶を一通り用意してもらうと、部屋の中を興味深げに眺めていたローレンスは、扉が閉まるのをチラリと見て言った。

「アンドレの部屋が思ったより私の部屋に似てて、なんて言うか残念?だったよ。」

 僕は窓の縁に寄りかかるローレンスを見つめて、首を傾げて笑った。

「え?一体どんな部屋だと思ったの?」

 ローレンスは自分の顎を指先で撫でながら楽しげに言った。

「そうだな。もうちょっと繊細で煌びやかな感じっていうか。アンドレって柔らかな雰囲気だから、勝手にそう思ってただけだけどね?」



 僕はローレンスの指先に目をやりながら、思わず言葉を発していた。

「ローレンス、君髭が生えてるの?」

 ローレンスはポカンとして僕を見つめると、それから自分の顔を撫でて笑った。

「何を言い出すかと思ったら。ああ、最近はカミソリを当てないとちょっとみっともないんだ。今朝はあたりがキツくて、少しヒリヒリして…。」

 僕はローレンスに近づいて、少し赤くなったそこを指先で撫でた。


「ここ?確かに少し赤くなってるね。僕はまだ髭なんて全然だから、ちょっと羨ましいよ。もう少し背が伸びれば生えてくるのかな。」

 覗き込んだ僕をじっと緑色の瞳で見下ろして、ローレンスは少し顔を赤らめて呟いた。

「そうかもしれない。私もアンドレ位の背の時はどこの毛も生えてなかったからね。」

 僕は自分の隠された悩みがローレンスにバレたかと思って、指を引っ込めて顔を逸らした。

「…そうなの?じゃあ、僕が生えてなくてもおかしくないのかな。流石にアランにも相談できなくて。」


 僕がそう言って照れ隠しに笑うと、真面目な顔をしたローレンスが小さな声で呟いた。

「…私が見てあげようか。そこを見れば大体の事が分かるから。汚れるの困るよね。ほら、私も最近通った道だろう?こんな事あまり大人に相談できないし。実際私も友人と話して解決したからね。」

 ローレンスが言わんとしている事が何となくわかって、僕は顔を赤らめた。本当の悩みがバレたんだろうか。ここ一週間ほど、朝になると時々汚れる下穿きが最近の悩みだった。

 かと言ってアランに聞くのも躊躇われて、今朝も汚れていないと胸を撫で下ろした所だった。


 一瞬の躊躇いの後、アランに相談するよりはマシな気がして僕は決心した。誰も居ないのに部屋の中をキョロキョロして、僕はローレンスの手を引っ張って奥まった寝室へ向かった。

 流石に窓の日差しが差し込むソファの側で股間を曝け出すのは躊躇われた。

 けれど、寝室でローレンスに向き合うと、それはそれで何だか気不味さを感じて来た。するとローレンスがベッドに座って目の前に立った僕に言った。

「脱いで見せてごらんよ。」


 そう明るく言われてしまえば、僕はもう思い切ってズボンを下穿きと共に脱ぎ下ろすしか無かった。覆われていないと随分心細く感じる。ローレンスの視線が僕に股間に注がれるのを感じて、僕は急になぜこんな事になったのだろうと混乱し始めていた。

 僕がズボンをもう一度履こうと屈もうとした時、ローレンスは僕の手を掴んで阻止した。

「随分綺麗な色だね。…あまり触ってない?自分で出した事はある?その様子だと無さそうだね。朝下穿きが汚れるのは、自分で処理しないせいだよ。自分で適当に出しておけば、少なくとも朝汚れることは滅多にないんだ。」


 ローレンスの言ったことを頭の中で忙しく解読した僕は、肝心な事を聞けていない事に気づいていた。

「…あの、処理って?」

 するとローレンスは自分の額を指で擦りながら、少し迷いながら言った。

「…滅多にそんな事はしないけど、アンドレには特別に教えてあげようか。じゃあここにそっちを向いて座って?」

 そう言うとローレンスはベッドの奥へとお尻を移動させると僕が座るスペースを作った。ローレンスの拡げた足の間に座れば良いのだろうか。汚れるかも知れないからとズボンを脱ぐように言われた僕は、処理の仕方を知る事が大事だとその事ばかりに意識が向いて、素直にローレンスの指示に従った。


 後ろから僕を抱え込んだローレンスは、僕の股間に手を伸ばすと優しく触れた。僕はびっくりして慌ててローレンスの手を押さえたけれど、耳元でローレンスが囁いた。

「大丈夫。やり方を教えるだけだから。こうやってそっと擦るんだ。最初はあまり強いと痛いからね?皮を脱がせる様にゆっくり。ほら、自分でもやってご覧よ。」


 僕はローレンスが触れた自分のあそこがムクムクと持ち上がるのを感じて、同時に妙な感覚を覚えた。朝の目覚めの前の気持ち良さと少し似ているそれは、目覚めているだけあってもっと強く感じた。

 手を取られて、僕の手の上に重ねられたローレンスの指がくすぐる様に先端を突くと、ビクンと腰が動いてしまう。

「あっ、ローレンス。なんか…!」


 熱い何かが迫り上がって来て、僕は止めることもできずにローレンスの手の中に半透明な白いものを吐き出していた。

「上手に出来たね。こうやって出せれば朝も安心だよ。」

 そうローレンスは言って、僕のこめかみに優しく唇を押し当てた。僕は今の衝撃にぼんやりしてしまって、ローレンスが自分の濡れた手をハンカチで拭うのを見つめることしか出来なかった。

 それから何事もなかった様にローレンスは僕とボードゲームをしたけれど、僕はローレンスの顔を見ることができなくて、いつもよりこっぴどく負けてしまった。


 「…アンドレが負けるのは当然だね。今日は大人の男への第一歩を踏み出して気が散ってたんだろうから。アンドレ、また困ったことがあったら私に相談してね。

 それと他の令息やアランにもこの手のことを相談しないと約束してくれよ?これは特別な秘密だから、誰でも良いわけじゃないからね?約束できるかい?」

 ローレンスがいつもの明るい表情ではなく、観たことのない真面目な顔をしているので、僕は何も問うこともなく無条件に頷いていた。そしてこれが僕とローレンスとの秘密の始まりだった。






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