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痛み

エイデンside悪いニュース

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「エイデン、聞いたか?サミュエルが寝込んで屋敷に連れ戻されたって。アルバートが短い休暇届けを出してたから、ちょっと深刻なんじゃないか?何も聞いてない?」

そうマシューに尋ねられて、私は心臓がぎゅっと握られた気がした。近いうちにサミュエルと会って話をしようと昨日思えたばかりなのに、侯爵家に連れ戻されている?病気?


私の顔を見て、マシューは驚いた様に大丈夫かと尋ねたけれど、大丈夫ではなかった。今となっては、今すぐにでもサミュエルの顔を見に行きたい。そこにアルバートが居ようとも…。

私は唖然としているマシューを置き去りに、急遽半休をもぎ取ると急ぎヴィレスク侯爵家へと急いだ。先触れもなく押しかけるのはどうかと思ったが、はやる心はそれさえも構って居られなかった。


屋敷に到着すると、執事が控えの間に通してくれた。少し屋敷内が騒ついている気がするのは、何か良くない兆候なのだろうか。不安が押し寄せて来て、じっとしていられなくて、私は部屋の中を歩き回った。

扉がノックされて開いたそこには、アルバートが立っていた。一瞬で胸を掻きむしるドス黒い何かが湧き上がって来たけれど、アルバートの青褪めた顔を見て、直ぐにそれどころでは無いのだと理解した。


「…エイデン。今は余計な話をしている暇はない。サミュエルに会いに来たのだろう?こっちだ。」

それだけ言うと、アルバートは先に立って歩き出した。

「…サミュエルはどうも悪い風邪に罹って、胸を患ってしまった様なのだ。もう一週間も意識が朦朧としている。かろうじて水分を飲ませる事が出来るが…、咳き込むのでそれもままならない。このままでは命が危ぶまれるのではないかと、私は恐ろしくてしょうがないのだ。」


アルバートがこんな風に心の内を言うのは珍しかった。それほどサミュエルの状態が悪いのかもしれない。私は心臓がドキドキしてきて、嫌な汗を背中に感じた。

使用人が出入りする、気持ちの良い一角にサミュエルの部屋があった。窓の外には、これから夏に向かうみずみずしい緑あふれる光景がひろがっていた。


けれども、天蓋の薄い布の向こうのベッドに横たわるサミュエルは、布ごしでも明らかに痩せて顔色も良くなく、最後に会った時のサミュエルとは明らかに面変わりしていた。

あれは20日ほど前だった筈だ。私は布を捲り上げると、自分でも強張っているのが分かる声で、サミュエルに話しかけた。

「サミュエル、エイデンだ。目を覚ましてくれ…。サミュエル。」

目の前のサミュエルは私の呼びかけに、何の反応も示さずにぐったりとベッドに縫い付けられていた。その瞼は震えることもなく、ぴったりと閉じられていた。
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