131 / 131
僕の未来
やっぱりそうでしょうね 【 完 】
しおりを挟む
僕が満月を眺めると馬に一晩変身する馬人間になったと聞きつけた第二王子が、いそいそと僕を王宮に呼びつけた。
「ハルマ、お前は先日の満月の夜に、人間から馬に舞い戻ったらしいね。一体どうしたというのかな?まだ呪いが掛かっているのだろうか。」
僕はあの夜から、一人考えていた事を王子に話すことにした。
「殿下、私の元の世界には狼男という伝説があるのです。満月の夜、男が満月を見つめていると、その身体は1匹の狼になってしまうという伝説です。
私の身に起きたことはまさにそれの馬仕様の様です。美しい満月に魅入られて、私は馬のフォルになってしまいました。けれども、朝日が昇るのと同時に人間に変幻したのです。」
王子は僕の話を興味深く聞きながら、ニヤリと笑って言った。
「なるほど。では、私にもその変幻を見せてくれ。ははは、満月の夜にだけ馬の走りを楽しめるとは、月の悪戯にしては趣きがあるね。そうは思わないか?」
僕は王子にゲンナリとした顔を思わず見せてしまった。絶対王子はそう言い出すに違いないと思っていたからだ。
「私は、もう一度それをやるには少し勇気がありませんが。もし戻れなかったらと思うと…。」
すると王子が目を光らせて言った。
「大丈夫だ。現にハルマはこの世界の人間として残れただろう?全くハルマは異世界の特別な贈り物だ。面白さだけでなく、実際に有益な情報もくれるのだからな?
何か褒美に欲しいものはあるかい?」
僕は側に居るウィルの顔をチラッと見て、思い切って言った。
「殿下、ひとつだけお願いしても宜しいでしょうか。私は現在事務方の宿舎に部屋がございますが、騎士団の官舎へ住まいを移したいと願っているのです。
夜番の騎士たちの目を盗んで、事務方の私が忍び込んで行くのは、常々居た堪れない思いなのです。」
殿下はクスクス笑いながら、指揮官に話を振った。
「ハルマの貢献を考えると、多少の我儘も呑んでやろうか。確かに1人住まいの部屋に、細いといえどもハルマが入り浸っていたのではウィリアムも狭かろう。指揮官、広い部屋に移してやりなさい。」
僕の明るい顔と、ウィルの赤い顔と、指揮官の困惑した顔、そして殿下の楽しげな笑いが王宮を響かせた。僕はこの時に、殿下が僕にたっぷり差し出した飴を受け取ったせいで、一日馬人間を後日お披露目せざるを得ない羽目になるんだ。
やっぱり王族って抜け目がないよ。
でもおかげで僕は毎日ウィルと寝起きを共にして、騎士団で仲間たちと相変わらず楽しい毎日を過ごしている。平凡な大学生だった僕が、突然この世界に馬として生まれてから色々な事があったけど、どれひとつとして退屈とは縁遠いものだったね。
父さん、母さん、妹よ、僕はそちらへは戻らないけれど、それはどうか許してください。その代わり、僕はこの世界で愛する人と、楽しく幸せに生きていけそうです!
【 完 】
『馬の皮をかぶった大学生ですが、なにか?』ついに完結しました❤️
131話、約137000文字の、そこそこ長いこの作品に最後までお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました♡
馬が出てくる作品が書きたくて、書き始めたこの作品を沢山の方に楽しんでいただけて、本当に嬉しいです!
何とか毎日更新出来たのも、皆様の応援のお陰でございます!読者の皆様が、ことの他馬生活を楽しんで頂けて、私もニヤニヤしました♡馬の魅力が少しでも伝えられたのなら嬉しいです!
同時長編連載の『僕が獣人?いいえ、人間です。内緒ですけど。』と主人公の名前がゴッチャになってしまったりと、読者様にコソッと教えて頂いたりとなかなかのやらかし具合でしたが、完結できてホッとしています!
思いついたらどんどん書いちゃうぞ⁉️の勢いで、丁度一年間書きまくってここまで量産して来ました。きっとまた変わりなく、思いついたら書いてしまうと思います。笑
忙しい毎日の、ちょっとしたティーブレイクのお供になる様な、ニマニマ、ワクワク、ほっこりした作品をこれからも書いていければなぁと思っています(〃ω〃)どうぞこれからもよろしくお願いします❤️
「ハルマ、お前は先日の満月の夜に、人間から馬に舞い戻ったらしいね。一体どうしたというのかな?まだ呪いが掛かっているのだろうか。」
僕はあの夜から、一人考えていた事を王子に話すことにした。
「殿下、私の元の世界には狼男という伝説があるのです。満月の夜、男が満月を見つめていると、その身体は1匹の狼になってしまうという伝説です。
私の身に起きたことはまさにそれの馬仕様の様です。美しい満月に魅入られて、私は馬のフォルになってしまいました。けれども、朝日が昇るのと同時に人間に変幻したのです。」
王子は僕の話を興味深く聞きながら、ニヤリと笑って言った。
「なるほど。では、私にもその変幻を見せてくれ。ははは、満月の夜にだけ馬の走りを楽しめるとは、月の悪戯にしては趣きがあるね。そうは思わないか?」
僕は王子にゲンナリとした顔を思わず見せてしまった。絶対王子はそう言い出すに違いないと思っていたからだ。
「私は、もう一度それをやるには少し勇気がありませんが。もし戻れなかったらと思うと…。」
すると王子が目を光らせて言った。
「大丈夫だ。現にハルマはこの世界の人間として残れただろう?全くハルマは異世界の特別な贈り物だ。面白さだけでなく、実際に有益な情報もくれるのだからな?
何か褒美に欲しいものはあるかい?」
僕は側に居るウィルの顔をチラッと見て、思い切って言った。
「殿下、ひとつだけお願いしても宜しいでしょうか。私は現在事務方の宿舎に部屋がございますが、騎士団の官舎へ住まいを移したいと願っているのです。
夜番の騎士たちの目を盗んで、事務方の私が忍び込んで行くのは、常々居た堪れない思いなのです。」
殿下はクスクス笑いながら、指揮官に話を振った。
「ハルマの貢献を考えると、多少の我儘も呑んでやろうか。確かに1人住まいの部屋に、細いといえどもハルマが入り浸っていたのではウィリアムも狭かろう。指揮官、広い部屋に移してやりなさい。」
僕の明るい顔と、ウィルの赤い顔と、指揮官の困惑した顔、そして殿下の楽しげな笑いが王宮を響かせた。僕はこの時に、殿下が僕にたっぷり差し出した飴を受け取ったせいで、一日馬人間を後日お披露目せざるを得ない羽目になるんだ。
やっぱり王族って抜け目がないよ。
でもおかげで僕は毎日ウィルと寝起きを共にして、騎士団で仲間たちと相変わらず楽しい毎日を過ごしている。平凡な大学生だった僕が、突然この世界に馬として生まれてから色々な事があったけど、どれひとつとして退屈とは縁遠いものだったね。
父さん、母さん、妹よ、僕はそちらへは戻らないけれど、それはどうか許してください。その代わり、僕はこの世界で愛する人と、楽しく幸せに生きていけそうです!
【 完 】
『馬の皮をかぶった大学生ですが、なにか?』ついに完結しました❤️
131話、約137000文字の、そこそこ長いこの作品に最後までお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました♡
馬が出てくる作品が書きたくて、書き始めたこの作品を沢山の方に楽しんでいただけて、本当に嬉しいです!
何とか毎日更新出来たのも、皆様の応援のお陰でございます!読者の皆様が、ことの他馬生活を楽しんで頂けて、私もニヤニヤしました♡馬の魅力が少しでも伝えられたのなら嬉しいです!
同時長編連載の『僕が獣人?いいえ、人間です。内緒ですけど。』と主人公の名前がゴッチャになってしまったりと、読者様にコソッと教えて頂いたりとなかなかのやらかし具合でしたが、完結できてホッとしています!
思いついたらどんどん書いちゃうぞ⁉️の勢いで、丁度一年間書きまくってここまで量産して来ました。きっとまた変わりなく、思いついたら書いてしまうと思います。笑
忙しい毎日の、ちょっとしたティーブレイクのお供になる様な、ニマニマ、ワクワク、ほっこりした作品をこれからも書いていければなぁと思っています(〃ω〃)どうぞこれからもよろしくお願いします❤️
5
お気に入りに追加
1,052
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(39件)
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
空は遠く
chatetlune
BL
素直になれないひねくれ者同士、力と佑人のこじらせ同級生ラブ♥ 高校では問題児扱いされている力と成績優秀だが過去のトラウマに縛られて殻をかぶってしまった佑人を中心に、切れ者だがあたりのいい坂本や落ちこぼれの東山や啓太らが加わり、積み重ねていく17歳の日々。すれ違いから遠のいていく距離。それでもやっぱり惹かれていく。
釣った魚、逃した魚
円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。
王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。
王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。
護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。
騎士×神子 攻目線
一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。
どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。
ムーンライト様でもアップしています。
田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです
真山さん!追いかけて来てくださったんですね〜♡嬉しいです。私も釣られて読み直してしまいました笑
作品を書いた後は、二度とこんな話はかけないと思いますし、実際何とかなっている色々な場面は書いている時は、本当にどうにもならないって頭を悩ませた記憶があります。
楽しんでいただけて、読後感がほっこりしていただけたら、本当に本望です♡感想ありがとうございます♪
完結お疲れ様でした!
この作品がすごく好きだったので、終わってしまって寂しく思います(>_<)
ビッツが好きだったので、ビッツの話しも読んでみたいです。
馬達が驚いて走り出したりなど、読んでいて光景が浮かんできました( ˶˙ᵕ˙˶ )
乗馬クラブを辞める前日、担当馬達に挨拶していた時に、私の競技馬してくれていた子は私の胸の服を噛んで離してくれず、涙をポロリと流しました。
馬は感情豊かでとても美しい生き物です。
また余力がありましたら、番外編お待ちしてますので、是非お願いしますm(_ _)m
この作品を楽しんでいただいて、本当にありがとうございました♡
私も馬生活のシーンは楽しく癒されながら書いてました。ミーコ様の実体験は本当にイメージ湧きます!
ビッツ意外にも人気馬ですw私は聖騎士団のリーダー馬のキリッとした感じも結構ツボです。馬の動画を見ていると本当に個性溢れてますよね。余力がある時に番外編も書きたいと思います!
リクエストなんて良いんでしょうか!!なんという寛大な。。
ビッツの視点からのハルマとか、ウイルの実家の話や、ハルマに恋なんかしちゃてるモブ視点などなど。。ああ、キリがないです。すみません!ーー
おお、沢山ネタが!笑。
余力が無いと書けませんが、気長に待っていてくださると嬉しいです♬
いつもありがとうございます(≧∇≦)