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僕の未来

満月の泉

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相変わらず大きな満月だなぁと、僕は頭上を見上げた。泳いで渡った僕の身体は濡れていて、夜風が吹くと少し寒い。僕は御神木のある浮島に一人立っていた。

泉の淵ではかがり火が焚かれて、第二王子やお付きの聖騎士、騎士団長、副騎士団長、ウィルが僕の渡った浮島を見守っている。


僕は其方をチラリと見ると、さっきからザワザワする身体を感じながら手の中の銀色に光る馬蹄のネックレスを見つめた。これから何が起きるのか誰にも分からない。

ただ、僕がこの世界に人間として残れる様に願うだけだ。僕はいつも変幻する時はチリチリ、ザワザワがどんどん大きくなって、気づけば変幻し終わっている事が多いんだ。


実際その瞬間は記憶にないので、今回のいつもとは違うはずの、後のない変幻の瞬間に何が起きるのか全く予想がつかなかった。

心臓の鼓動がドキドキと波打つのを感じながら、僕は頭上を見上げた。その時、月が溶け出して僕に向かってキラキラと落ちてくる様に見えた。


僕が呆然とその美しくも恐ろしい情景を見つめていると、その溶け出した月の雫は僕の身体にポタポタと絡まり覆っていった。銀色のその金属の様な輝きは僕をコーティングしてしまった。

僕の手の中にあったはずのそのネックレスもそのドロリとした月の雫に溶かされて消えていく。僕は自分の身体がドクドクと激しく脈打つのを感じつつ、ふわふわとして立ってられなくなって、うずくまってしまった。


どんどん月の雫が天から垂れてきて、僕の背中に重さを増して降り積もって行く様だった。その時僕は、何だか自分が卵の中に入り込んだ気分で、小さく丸まっていた。

薄れる意識の中で、僕はウィルの顔を思い出した。僕が一番近くで生きていたいその人の顔を。それから僕は何も考えられない無の世界へと引き摺り込まれてしまったんだ。




気がつけば、僕は身体についたドロリとした銀色の溶液をウィルに掛き分けられていた。必死な様子のウィルは濡れた半裸で、僕の名前を呼びかけていた。側に副指揮官もまた同様の姿で僕を覗き込んでいた。

なぜかビッツまでもが僕を覗き込んでいた。僕がウィルに抱き起こされると、ウィルはぎゅっと僕を抱きしめた。…ああ、僕はこの世界に残れたんだ。

僕がウィルのひんやりした身体に触れて感じたのは、その安堵、それだけだった。




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