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人間のままでいられますか?
魔の森
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僕たちは魔の森の中へと進んで行った。僕はビッツに乗せてもらって一応戦闘部隊からは外してもらっている。まぁ、実際戦えないからね、人間の僕は。
僕の後ろには王子たちの一団が騎士団に守られて進んでいる。エリート馬達も、僕が目の前を進んでいるせいか、森の入り口にいた時よりはリラックスしているみたいだ。
『案外魔物なんて、滅多に出てこないのかもしれないよね。』
『まぁ出てきたとしても、私たちは騎士団が頑張ってるのを見てれば良いんだからね。気楽だよ。』
『フォルが大袈裟に話しただけなんじゃないの?』
僕は咳払いすると、チラッと後ろを振り返った。エリート馬たちは、ブルルと知らんぷりしているけれど、しっかり聞こえてましたから。
ビッツは顔を振り上げながら、背中の僕をチラッと見て笑った。
『散々な言われ様だな、フォル。でも、王宮の奴らと案外仲良くなったんだな?』
僕は肩をすくめてビッツの揶揄いをスルーした。と、その時僕たちはハッと身構えた。馬の様子に騎士団の皆も緊張したのが伝わってきた。
「来るぞ!」
直ぐ前の副指揮官が鋭い笛の音と共に声を張り上げた。僕は後ろを向いてエリート馬たちに叫んだ。
『騒がないで!』
エリート馬たちや王子たち一団が、後ろで緊張を滲ませたのを感じた。僕はあの吐き気を催すような酷い匂いが近づくのを感じた。
次の瞬間副指揮官の真横の森から、獣型の魔物が禍々しい軋む音を発しながら飛び出してきた。身構えていた騎士達が次々に剣を突き刺して、魔物の体液が飛び散った。
うぇ…。馬体質のせいか多分人間レベル以上に鼻の良い僕には、地獄の様だった。騎士たちに誘導されて、僕たちは後ろへと下がった。目の前では騎士達が素早い動きで2mを越す獣型魔物を斬りつけて行った。
きしみ音が酷くなった後、ドウッと魔物が後ろに倒れた。やった!副指揮官が、死亡確認と、魔石を取り出して僕たちは再び隊列を組み直してまた歩き出した。
僕は近くにきた副指揮官に尋ねた。
「副指揮官、泉までは後どれくらいの距離か分かりますか?」
副指揮官はチラッと王子の方を見つめて言った。
「殿下、今の様に時々魔物と遭遇すると思いますがご安心下さい。我々には造作もない事です。泉には残り半分と言う所でしょうか。」
殿下は少し前に寄ってきて興奮した様に目を輝かせて言った。
「良い。何とも言えぬ匂いではあるが、なかなか血が踊る体験だったぞ?兄上にも経験させた方が良のではないかな?ははは。」
無邪気な殿下の発言に、騎士たちが顔を顰めたのを見て、僕はお疲れ様ですって目配せしたんだ。だってどう考えても王族に魔物を出くわして万が一の事があったら不味いよね?誰かの首が飛ぶよ。きっと。
僕の後ろには王子たちの一団が騎士団に守られて進んでいる。エリート馬達も、僕が目の前を進んでいるせいか、森の入り口にいた時よりはリラックスしているみたいだ。
『案外魔物なんて、滅多に出てこないのかもしれないよね。』
『まぁ出てきたとしても、私たちは騎士団が頑張ってるのを見てれば良いんだからね。気楽だよ。』
『フォルが大袈裟に話しただけなんじゃないの?』
僕は咳払いすると、チラッと後ろを振り返った。エリート馬たちは、ブルルと知らんぷりしているけれど、しっかり聞こえてましたから。
ビッツは顔を振り上げながら、背中の僕をチラッと見て笑った。
『散々な言われ様だな、フォル。でも、王宮の奴らと案外仲良くなったんだな?』
僕は肩をすくめてビッツの揶揄いをスルーした。と、その時僕たちはハッと身構えた。馬の様子に騎士団の皆も緊張したのが伝わってきた。
「来るぞ!」
直ぐ前の副指揮官が鋭い笛の音と共に声を張り上げた。僕は後ろを向いてエリート馬たちに叫んだ。
『騒がないで!』
エリート馬たちや王子たち一団が、後ろで緊張を滲ませたのを感じた。僕はあの吐き気を催すような酷い匂いが近づくのを感じた。
次の瞬間副指揮官の真横の森から、獣型の魔物が禍々しい軋む音を発しながら飛び出してきた。身構えていた騎士達が次々に剣を突き刺して、魔物の体液が飛び散った。
うぇ…。馬体質のせいか多分人間レベル以上に鼻の良い僕には、地獄の様だった。騎士たちに誘導されて、僕たちは後ろへと下がった。目の前では騎士達が素早い動きで2mを越す獣型魔物を斬りつけて行った。
きしみ音が酷くなった後、ドウッと魔物が後ろに倒れた。やった!副指揮官が、死亡確認と、魔石を取り出して僕たちは再び隊列を組み直してまた歩き出した。
僕は近くにきた副指揮官に尋ねた。
「副指揮官、泉までは後どれくらいの距離か分かりますか?」
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「殿下、今の様に時々魔物と遭遇すると思いますがご安心下さい。我々には造作もない事です。泉には残り半分と言う所でしょうか。」
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「良い。何とも言えぬ匂いではあるが、なかなか血が踊る体験だったぞ?兄上にも経験させた方が良のではないかな?ははは。」
無邪気な殿下の発言に、騎士たちが顔を顰めたのを見て、僕はお疲れ様ですって目配せしたんだ。だってどう考えても王族に魔物を出くわして万が一の事があったら不味いよね?誰かの首が飛ぶよ。きっと。
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