上 下
115 / 131
人間のままでいられますか?

驚きの話

しおりを挟む
それから王子が語ってくれた秘密の書にまつわる話は、僕にとって驚くべきものだった。黒髪、黒目のミハルという名前の若い男が馬として王弟と出会って、やがて人間に変幻する。それはまるで僕と同じ状況だった。

「先帝の王弟の日記によれば、馬から人間に変幻するのはハルマの家の呪いの様だね。そして彼は四度目の変化の後、元の世界に戻ってしまった様だ。」


王子がそう言うと、僕とウィルは顔を見合わせた。僕がウィルを置いてここから居なくなる…?確かにミハルという名前の、お祖父さんの歳の離れたお兄さんは兵士として戦争に行っている間、行方不明になった事があると聞いている。

一年後、丁度終戦の頃にミハル兄さんは、全然違う場所の引き上げ列車に乗って戻って来たのだとお祖父さんは話してくれた事があった。


それからミハル兄さんは修験道の修行で山に籠ったという話だった。それから数年後、ふと山を降りてお祖父さんのところにふらりと現れると、このネックレスを託してまた修行に戻ったという事だった。

それから直ぐに修行中に崖から転落して亡くなった。僕が知っているのはそれだけだ。僕は王子の話とどこかしら繋がっていると思った。


もし行方不明になっている間に、この世界で馬になっていたとしたら…。あり得る。それはこの僕が証明できる。僕は一人俯いて考え込んでいた。

「…ルマ。ハルマ?」

ウィルに呼び掛けられてハッとした僕は周囲を見回した。皆が僕を見つめていた。僕は今思い出したについてを王子に話した。


王子は頷きながら考え考え、呟いた。

「さっきハルマが、ミハルは若くして亡くなったと話してくれた時に何か因果がある様な気がしたけれど、当たっていた様だね。多分王弟が戦闘で戦死した時と、ミハルが事故で亡くなった時期が重なると思うんだ。

運命の二人は、死をもって遠く離れた世界の二人を繋いだのかもしれない。」


僕は王子の話に目を見開いた。お祖父さんはあまり自分の兄について多くを語らなかったけれど、時々僕をじっと見つめて言ったんだ。

「お前の名前にハルを使ったのは良くなかったかもしれない。成長するにつれて、ハルマは私の兄によく似て来た。それが、私には少し恐ろしいんだ。」

そう言って僕を悲しげに見つめていたのをふと思い出したんだ。




しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

上司と俺のSM関係

雫@3日更新予定あり
BL
タイトルの通りです。

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...