上 下
111 / 131
人間のままでいられますか?

真夜中の秘密

しおりを挟む
「…其方が本当にさっきまでフォルだったのか?」

第二王子にそう尋ねられて、僕はウィルの顔を見て、また驚きに満ちた王子の顔を見つめて頷いて、礼を取ると言った。

「…はい。ハルマ シミズと申します。殿下にご挨拶できる事を嬉しく存じます。先だってフォルの時は、色々とご無礼があったかもしれませんが、そこは馬の成せること。お許しくださいます様にお願い申し上げます。」


第二王子は堪えていた息を吐き出すと、声を上げて笑い出した。

「フォル!確かに其方の醸し出す雰囲気はフォルのままだ!何とも不思議なことだ。それに其方の見慣れぬ風貌も、私の持っている秘密の書に類似点を感じるぞ。

ああ、早く其方と検証したいものだ。何がどうなってこの様な不可思議な事が起きるのかと。」

王子の興奮冷めやらない感じは、いつまでも続きそうだった。しかし指揮官がそっと王子に声を潜めて言った。


「殿下、今宵は夜も遅く人目に着くのは何かと問題になるやもしれません。明日以降時間を持って対処頂ければ幸いに存じます。」

第二王子は指揮官の言葉にハッとすると、頷く従者と聖騎士を振りあおぐと、僕を見つめて苦笑して言った。

「よい。分かった。明日は私も都合が悪い。では明後日以降で調整して、是非とも検証させてくれ。良いか、ハルマ?」

僕は殿下に跪くと胸に手を当てて言った。


「はい。我が事ながら、自分でも今の移ろいゆく身の状況に振り回されるばかりでございます。是非殿下と共に検証に参加させて頂きたいと存じます。」

そう僕が返答したのを機会に、その夜の秘密の場は解散になったのだった。僕は薄い美しいローブ一枚の自分の姿に、急に恥ずかしさを覚えた。


指揮官たちは後ろ姿を見せながら、僕とウィルに手を振りながら言った。

「ウィル、明日は午後からの出勤で良いぞ。ハルマは一日休みだ。明日以降は王子に振り回されそうだから、ゆっくり休め。ハハハ。」

僕たちは彼らが妙に気を利かせてくれた事があからさまだと、照れ臭い気分だった。ウィルが僕をぎゅっと抱きしめると、僕は嬉しさ半分、馬臭さで気もそぞろで、そっと手を伸ばして押し退けると言った。


「ウィル、僕自分が凄く馬臭い気がして…。湯を使わせて?そうじゃないと、ちょっとウィルとくっつけないって言うか…。」

多分赤くなっているだろう僕の顔をなぞってウィルは言った。

「まったく、ハルになった途端にこれだ。ふふふ、綺麗好きなのは良いけど、そんなに臭いわけじゃないよ?」

僕は膨れツラをしてウィルに言った。

「ウィルは良くても、僕が無理なの!それに早くイチャイチャしたい…から、ね?」


しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

まるで生まれる前から決まっていたかのように【本編完結・12/21番外完結】

有泉
BL
【特殊能力・変身・人外・忠犬的苦労性攻 × 振り回し系我儘王子受】【溺愛・無自覚一目惚れ】 架空のファンタジー世界を舞台にした、わりとゆっくり関係が深まっていくタイプのラブストーリーです。そういうのがお好きな方に。ハッピーエンド&ラブH確約。 「きみよ奇跡の意味を知れ」(本編完結) https://www.alphapolis.co.jp/novel/887890860/321426272 と同世界観ですが、これ単体でも読めます。 ☆ ☆ ☆  成望国が有する異形「騏驥」は、人であり馬でありそして兵器である。  そんな騏驥に乗ることを許されているのは、素質を持った選ばれし騎士だけだ。  ある日、護衛をまいて街歩きを楽しんでいた王子・シィンは、一人の騏驥と出会う。  彼の名はダンジァ。  身分を隠して彼に話しかけたシィンだったが、ダンジァの聡明さに興味を持つ。  親しくなる二人。  何事にも「一番」にこだわり、それゆえ「一番の騏驥」に乗りたいと望むシィンは、ダンジァに問う。 「お前たち騏驥の間で『一番』は誰だ?」  しかしその問いにダンジァは言葉を濁す。  それまでとは違う様子に、シィンはますます彼が気になり……。  ☆直接的な行為及びそれなりの意図を持った性的シーンについては、タイトル横に*印がついています☆ 【「ムーンライトノベルズ」にも同作を投稿しています】

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

空は遠く

chatetlune
BL
素直になれないひねくれ者同士、力と佑人のこじらせ同級生ラブ♥ 高校では問題児扱いされている力と成績優秀だが過去のトラウマに縛られて殻をかぶってしまった佑人を中心に、切れ者だがあたりのいい坂本や落ちこぼれの東山や啓太らが加わり、積み重ねていく17歳の日々。すれ違いから遠のいていく距離。それでもやっぱり惹かれていく。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

処理中です...