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真実

番外編 アーサーside黒い馬

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今回の敗戦の検討など、もうすっかり飽き飽きしていた。なのにまだ足りない様で、明日もまた王都から役人が来るのだとか。私は疲れた頭を癒すために、少し馬駆けしてこようと、馬場まで足を伸ばした。

馬丁頭のハワードに馬を頼むと、ハワードが尋ねた。

「アーサー様の馬は今調整してまして、他の馬でも宜しいですか?」


私は頷いて馬丁見習いが連れてくる芦毛を見つめた。芦毛は私を見ると少しいなないて足踏みした。馬丁見習いがなだめようとしたけれど、いまいち落ち着かない。

ハワードが手綱を取ると、嘘の様に大人しくこちらへと引かれて来た。私は芦毛とよく一緒にいた、あの黒い馬を思い出していた。

「ハワード、あの黒い馬はまだ見つからないのか?」

ハワードは申し訳なさそうな顔で私と芦毛を見て言った。


「ええ。あの美しい馬は、本当に魔法の様にかき消えたままでさ。不思議なんですが、あの黒い馬とこいつが馬場から出たのははっきりしてるんで。

やっぱり、アーサー様の追った密偵が、馬場の外から止金を降ろしたんでしょうね。アーサー様が密偵を追った時に、黒い馬は見掛けなかったんです?」


私の頷きを見つめながら、ハワードは言った。

「返すもがえすも、あの馬は惜しかったですね。賢さと落ち着きがピカイチでしたから。あれで新馬なんですから、それこそ育ったらどんなに良い馬になったか。

実はあの馬は伝説の馬じゃないかって、馬丁内で未だに話題なんですよ。【千里を駆ける人馬、輝きの印、危機に人の助けとなる】って馬丁に伝わる話があるんですが、あの馬は額に星の様なキラキラした白い毛が生えてました。


今考えると伝説の馬だったのかなってワシは思います。人馬ってのは人の様な馬ですからね。もしかしたら今は人になってるって事もあるかもしれませんや。まぁ、これはワシ達のお決まりの冗談なんですがね。ハハハ。

きっとこの芦毛なら、全部知ってるんじゃないかって思ったりもするんですが、なんせ話が出来ませんからねぇ。」


私はこの芦毛に乗って走り抜けた、黒髪の密偵を思い出していた。魔物から逃れようと私の前に飛び出したあの時、私はあの者と目が合ったのだ。未だに忘れられない魅せられるようなあの黒い瞳は、そう、まるで…。

私はハワードの話から連想した馬鹿な考えを頭から振り払うと、ハワードが鞍付けした芦毛を撫でて目を合わせながら尋ねた。

「お前は知ってるのか?あの黒い馬がどこに行ったのか…。」

芦毛は私をじっと見つめると、ヒヒンと楽しげにいなないた。それがまるで内緒だと言われてるようで、私は思わず苦笑したのだった。
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