93 / 131
真実
僕は馬です。馬人間です。
しおりを挟む
「ウィルに聞いてほしい事があるんだ。多分、びっくりして信じられないかもしれない。正直僕自身も、未だに信じられないから。」
部屋に戻って備え付けの茶を淹れてから、僕はひと口飲むとそう切り出した。もう次の満月まで時間がなかったし、秘密にするのは限界だと思った。
ウィルは何か言いたそうだったけれど、僕の強張った顔を見ると黙って頷いてやっぱりお茶をひと口飲んだ。何だかウィルの方がずっと緊張している気がして、僕はクスっと笑った。
「僕はそもそもこの国、いや、この世界の人間ではないんだ。僕はこことは全く違う文化の世界の学生だった。ある日街を歩いていると、目の前に大きな穴が空いていて、僕はそこに転がり落ちたんだ。僕は落ちながらやってしまったと思った。
きっと怪我をするだろうし、下手をすると命に関わるかもって。それくらい穴が深かった。僕の国では街角にそんな穴が空いてるなんて事は全く無いんだ。だから周囲の人の叫び声が聞こえたし、ほんと全然あり得ない事だった。
…でも僕は怪我などしなかった。だって気がつけば僕は馬として産まれるところだったんだから。僕の発する声はヒヒンだったし、産まれたての子馬だった。」
僕は呆然としているウィルにもっとお茶を飲む様に勧めると、自分ももうひと口飲んで話を続けた。
「馬になった僕は、馬生活を楽しんだ。だって他に何が出来る?ここの騎士団の馬になるまで、僕は只々毎日楽しく馬として暮らしていたんだよ。
もちろん馬になっても中身は僕のままだから、僕は人参が沢山食べられるって馬丁に聞いたその事だけで、選考会で副指揮官に気に入られる様に振る舞った。凄くちょろかった。ふふ。
そして僕は貴方に会った。フォルとしてね?僕は馬だったけれど、中身のハルマは目の前のウィリアムに恋をしたんだ。だから僕はあなたの命を救うために無茶もしてしまった。
ほんと怪物に追いかけられていたあの時は、僕も死ぬかと思ったけどね…。僕は馬としてずっとウィルの側に居られれば良かったんだ。でも、あの森の泉で目が覚めたら元の自分に戻っていたんだよ。僕本当にびっくりしたし、元に戻れて嬉しかった。
もっとも、騎士団のみんなも素っ裸の僕にびっくりしてたよね。ふふ、僕あの時、もし自分が馬のフォルだって話したら、いきなりバッサリ斬られると思ったんだ。
実際馬人間だなんて、僕の世界でもあり得ないし、多分この世界でも無いでしょ?僕ってほとんど魔物みたいじゃない?」
そう言って僕はウィルの目を見つめたんだ。
~お知らせ~
新作BL『逃げたい官吏と傲慢男、追いかけっこはどっちが勝ちますか?』公開開始しましたが、おかげさまでお気に入り100を達成しました♡
皆さんの応援のおかげです。ありがとうございます♪
絶賛_φ(・_・してますので更新回数を増やしてます。一気読み出来ますので良かったら覗いてみてください♡
結構奥行きのありそうな話に展開が転がって行ってますので、楽しんで頂けると思います。
よろしくお願いします(๑˃̵ᴗ˂̵)ガンバルー!
部屋に戻って備え付けの茶を淹れてから、僕はひと口飲むとそう切り出した。もう次の満月まで時間がなかったし、秘密にするのは限界だと思った。
ウィルは何か言いたそうだったけれど、僕の強張った顔を見ると黙って頷いてやっぱりお茶をひと口飲んだ。何だかウィルの方がずっと緊張している気がして、僕はクスっと笑った。
「僕はそもそもこの国、いや、この世界の人間ではないんだ。僕はこことは全く違う文化の世界の学生だった。ある日街を歩いていると、目の前に大きな穴が空いていて、僕はそこに転がり落ちたんだ。僕は落ちながらやってしまったと思った。
きっと怪我をするだろうし、下手をすると命に関わるかもって。それくらい穴が深かった。僕の国では街角にそんな穴が空いてるなんて事は全く無いんだ。だから周囲の人の叫び声が聞こえたし、ほんと全然あり得ない事だった。
…でも僕は怪我などしなかった。だって気がつけば僕は馬として産まれるところだったんだから。僕の発する声はヒヒンだったし、産まれたての子馬だった。」
僕は呆然としているウィルにもっとお茶を飲む様に勧めると、自分ももうひと口飲んで話を続けた。
「馬になった僕は、馬生活を楽しんだ。だって他に何が出来る?ここの騎士団の馬になるまで、僕は只々毎日楽しく馬として暮らしていたんだよ。
もちろん馬になっても中身は僕のままだから、僕は人参が沢山食べられるって馬丁に聞いたその事だけで、選考会で副指揮官に気に入られる様に振る舞った。凄くちょろかった。ふふ。
そして僕は貴方に会った。フォルとしてね?僕は馬だったけれど、中身のハルマは目の前のウィリアムに恋をしたんだ。だから僕はあなたの命を救うために無茶もしてしまった。
ほんと怪物に追いかけられていたあの時は、僕も死ぬかと思ったけどね…。僕は馬としてずっとウィルの側に居られれば良かったんだ。でも、あの森の泉で目が覚めたら元の自分に戻っていたんだよ。僕本当にびっくりしたし、元に戻れて嬉しかった。
もっとも、騎士団のみんなも素っ裸の僕にびっくりしてたよね。ふふ、僕あの時、もし自分が馬のフォルだって話したら、いきなりバッサリ斬られると思ったんだ。
実際馬人間だなんて、僕の世界でもあり得ないし、多分この世界でも無いでしょ?僕ってほとんど魔物みたいじゃない?」
そう言って僕はウィルの目を見つめたんだ。
~お知らせ~
新作BL『逃げたい官吏と傲慢男、追いかけっこはどっちが勝ちますか?』公開開始しましたが、おかげさまでお気に入り100を達成しました♡
皆さんの応援のおかげです。ありがとうございます♪
絶賛_φ(・_・してますので更新回数を増やしてます。一気読み出来ますので良かったら覗いてみてください♡
結構奥行きのありそうな話に展開が転がって行ってますので、楽しんで頂けると思います。
よろしくお願いします(๑˃̵ᴗ˂̵)ガンバルー!
1
お気に入りに追加
1,051
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる