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秘密

ウィルsideハルの秘密

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馬場の方角へ向かうハルの後ろ姿を見かけた私は、驚かせようとこっそりと後をつけた。案の定、馬場の柵のそばにたどり着いたハルの発した言葉に、私は愕然とした。

「ビッツ?僕だよ、フォルだ。話したいことがあるんだろう?」

今私の耳に飛び込んできたのは聞き間違いだろうか。ハルは自分の事をフォルだと言わなかったか?私は急に胸がドキドキと速くなるのを感じた。


目の前のハルはビッツを撫でた後、私には聞き取れない言葉で何やらヒソヒソとビッツを抱きしめながら話をし始めた。ジャックは最近ビッツが元気がないと言っていた。けれど、ハルの前のビッツは以前と変わりなく元気な様子を見せていた。

しばらくすると、リーダーの馬がハルとビッツに近づいていななくと、揃って私の方を振り返った。私にはそれがリーダーが何か言って、それに呼応した様子にしか見えなかった。


私は慌てて手を上げると、二頭を撫でてからハルの手を引いて歩き出した。いつまでも馬場にハルを置いておくのが何だか嫌な気がしたんだ。

自分の事をフォルだと言ったハル。私は不意に、ある夜にハルが話したおとぎ話を思い出した。人間になった鳥が結婚したけれど、自分の鳥の姿がバレて飛んでいってしまった話。


あの時ハルはなんて言った?

『きっとその妻は怖かったんじゃないかな。自分が鳥人間だなんて知られて、愛する夫に怖がられたらきっと心が死んでしまうだろうから。…僕にはそんな逃げ出した妻の気持ちが分かる気がするよ。』

そんな風にハルは夜空を見上げながら言ったじゃないか。私は心臓の音がドクリと音を立てて速くなるのを感じた。ハルが居ない時にしか現れないフォル。同様に、フォルがいる時はハルは居ない。



もしハルとフォルが同じ存在だったのなら、おとぎ話の様に、ハルが馬に変幻するという事なんだろうか。私はこのあり得ない考えが、まるで事実であるかの様に、現実と符号を合わせてパチリパチリとはまっていく気がした。

黙りこくった私を、ハルはにこやかに可愛らしい真っ黒い、つぶらな瞳で覗き込んで声をかけてきた。

「ウィル?どうしたの?随分考え込んでいて。僕をお迎えに来てくれてありがとう。僕のいる場所が分かるなんて、ウィルは僕のこと随分わかってるんだね?」


そう言ってクスクス笑うその甘やかな可愛らしさは、私の良く知る愛しい人で、そして同時にその真っ直ぐにこちらを見つめる黒い瞳の輝きは、私の愛馬であるフォルそのものだったんだ。





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