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味方の元へ

おかしなビッツ

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皆から離れたところでポツンと立っているビッツに、思わずかけた声は届かなかったのかな。僕はもう一度声を張って呼んでみた。

『ビッツ!怪我したって聞いたよ?大丈夫なの?それに元気がないって…。』

僕がそう言いながら、ビッツの側へ柵を辿りながら歩み寄って行くと、ビッツはハッとして不意に走り出した。僕から逃げるように走るビッツに釣られたのか、なぜか他の馬たちも走り出した。


いや、気持ちは分かるけど…。僕も馬の時は他の馬が走り出すと、必要もないって分かってるのに、一緒に走らないと胸がザワザワしたんだ。馬人間の僕でさえそうなんだから、生粋の?馬である皆は走らずにはいられないだろう。

それにしてもビッツはどうしたって言うんだ。僕が半ば呆然として走る彼らを眺めていると、ロイさんとジャックが側に来て言った。

「どうもビッツと仲の良いハルマ様でも、あいつの機嫌は治らないみたいですねえ。」


僕たちがビッツのことを話しながら馬場を見ていたら、ビッツがリーダーの後をついてこっちにやって来た。リーダーは笑いを堪えた表情で僕に言った。

『後でこいつが話があるんだってさ。寝る前にちょっと顔出してくれよ。あ、手土産よろしくな。』

そう言っていななくと、さっさと皆のところへ戻って行った。僕はリーダーを見送りながら、ジャックの側に近寄りながらもこちらに耳をそば立てているビッツを見た。


ビッツはジャックからりんごを貰って、喜んでいたけれど、落ち着かない様子で僕の方を気にしていた。僕はさっきのリーダーの話に従った方が良さそうだと思って、ジャックに撫でられているビッツに声を掛けた。

「ビッツ、後でもう一回来るからね?」

『…うん。』

それ以上は話が聞き出せそうもなかったし、二人、いや、二頭?だけで話も出来なさそうだったので、僕は先に自室に戻った。



それから寝支度の前に僕は自室を出て、馬場へと向かった。ウィルは今日遅番だからまだ戻ってくる時間じゃない。僕は丁度良かったと思いながら、人が少なくなった馬場への道を進んだ。

馬場は馬丁たちも宿舎に戻ったのか、ひと気が無かった。僕は柵に近づいて周囲を見回して声を掛けた。

「ビッツ?僕だよ、フォルだ。話したいことがあるんだろう?」

そう言うと、軽やかな足音を立てながらビッツがやって来た。僕はモジモジしながら近づいて来るビッツに、満面の笑みを浮かべて言った。


『やっと近くに来てくれたね?ビッツ心配かけたよね?ごめんね。』
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