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戦い

アーサーside満月の夜

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何だか胸騒ぎがするのは、窓から差し込むこの眩しい満月のせいだろうか。小さな頃から見慣れたこの月は今夜は妙に赤い。私は戦い続きで疲れているのにも関わらず、ベッドからむくりと起き上がった。

サイドテーブルにいつも置いてある水差しに手を伸ばしたが、もう少し強いものが飲みたくなって、私は立ち上がってキャビネットへ近づいた。


ふと、目の端に何かが動くのが見えた気がして、私は窓辺に近づいた。この夜中に動くものといえば…何もない筈だ。この戦い続きで、私の様に眠れない人間が起きて歩き回ってる可能性も無いとは言えないが…。

私は明日にでも懇意にしている若い騎士に閨の相手を頼もうかと思いながら、月明かりで明るさと影のコントラストがハッキリしている外に目を凝らした。


私の官舎からは正面右端に馬丁の宿舎が、その奥に馬場がかすかに見える。さっき動くものを感じたのは馬丁の宿舎の方だろうか。こんな夜中に馬丁が動き回るのは変だ。

何か馬にあったのだろうか。私はふと、戦場で捕獲してきたあの黒い馬を思い出した。あの黒い馬は接すれば接するほど、何となく違和感を感じた。


あの馬がわざと私から目を逸らしてる様に思えて、こちらに意識を向けさせようとすると、今度は妙に懐いてくる。そんな相反する反応をするのが、あえてそうしている気がして私にはそれが気になっていた。

なぜ今、その馬の事を思い出したのかは分からなかったけれど、私は馬場の方へと更に目を凝らした。すると一人の小柄な人間が何か箱のような物を持って馬場へと向かうのが見えた。


こんな時間に馬丁の見習いが何をしているんだ?私は不審に思って、無意識に椅子に掛けてある服を急ぎ着込んだ。確認した方が良いかもしれない。

私はもう一度馬場の方へ目をやると、急いで部屋を出て官舎の出口へ向かった。出口には警備の兵士が見張りをしていた。

「アーサー様、こんな夜中にいかが致しましたか?」


私は兵士に言った。

「何やら馬場の方で動きが見えたから確認しに行くだけだ。気が立って眠れなくてな。ああ、一人で十分だ。」

ついて行こうかと申し出る兵士に断りを入れると、私は足を早めて馬場へ向かった。馬丁の宿舎には灯りらしきものは一切ついていなかった。

もし馬丁見習いが用があって出たとしたら、出入り口の灯りくらいはついてるだろう。それに気づいて私は眉を顰めると、胸騒ぎを感じながら更に足を早めた。


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