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戦い
ウィリアムside戦いの行方
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今日の戦いが終わって、砦に戻ると、さっきまで落ち着いていたフォルが急に足踏みし始めた。どうも神経質になっている様だ。フォルが気にしている方を見ると、怪我人が運ばれていくところだった。
私はフォルから鎧で重くなった身体を持ち上げて降りると、ハミにつながる顔飾りを引き寄せた。そして汗ばんだフォルの顔を覗き込んだ。
「フォル、フォルどうした?怪我人が心配か?ああ、お前は綺麗好きだから、こんな状況は嫌なのかもしれないな。さぁ、馬丁にお前の馬鎧を外してもらいに行こう。
ああ、あとざっと汗も流してもらうか?ハハ、本当にお前は綺麗好きだな。」
私は水浴びと聞いて、途端に機嫌良く顔を動かすフォルを連れて馬場まで行った。そこにはロイが来てくれていた。今回は騎士団の馬丁達も可能な限り連れて来ていた。
ロイは馬丁頭なので、本来は王都にいるべきだったのだが、自ら率先して今回の戦闘に参加してくれていた。忙しそうに他の馬丁達に指示を出していたロイは、フォルを見るなりホッとした表情でこちらに近づいてきた。
「ウィリアム様、フォル!ご無事でしたか!フォル、よく頑張ったな、今重いこれを外してやるからな。」
そう言ってフォルの身体から、馬鎧を外し始めた。私も一緒に手伝うと、身軽になったフォルが意気揚々と水場へと足を向けた。
「ロイ、フォルは水浴びが何よりのご褒美なんだ。簡単でいいからサッとやってやってくれ。」
ロイはニヤッと笑って頷くと、フォルの顔を撫でながら、水場へと連れ去った。私はフォルの後ろ姿を見送ると、疲れた身体を引き摺りながら、兵舎へと足を向けた。
それこそ自分も簡単に水浴びを済ませて、清潔な服に着替えると、先に食事を始めている仲間の騎士達と合流した。
「おいウィリアム、あの敵騎士の慌てぶり見たか?」
そう言って兵舎で、誇らしげに盃を掲げ上げたのはケインだ。私は近くの空いた席にどかりと座ると用意されていた盃を同様に掲げて飲み干した。
泡立つ紫色のリキッドは、疲れた身体にはよく効いた。私は大きく唸るとクラクラする頭を振って波が鎮まるのを待った。
「ふーっ、流石に戦いの後のリキッドは効きが違うな。というか、これ、普通よりきついんじゃないか?」
そう言いながら、私はこれを飲んで机に倒れ込んだハルを思い出していた。それはケインや他の騎士達も一緒だった様で、皆が優しい顔でハルのあの情けない姿をネタにひとしきり盛り上がった。
ハルがもし王都にいたら、きっと私のことを心配して不安に思った事だろう。そう考えると、故郷へ戻って詳細がわからない方がハルのためかもしれないなと、私はあの甘える様な黒い瞳を思い出して微笑んだんだ。
私はフォルから鎧で重くなった身体を持ち上げて降りると、ハミにつながる顔飾りを引き寄せた。そして汗ばんだフォルの顔を覗き込んだ。
「フォル、フォルどうした?怪我人が心配か?ああ、お前は綺麗好きだから、こんな状況は嫌なのかもしれないな。さぁ、馬丁にお前の馬鎧を外してもらいに行こう。
ああ、あとざっと汗も流してもらうか?ハハ、本当にお前は綺麗好きだな。」
私は水浴びと聞いて、途端に機嫌良く顔を動かすフォルを連れて馬場まで行った。そこにはロイが来てくれていた。今回は騎士団の馬丁達も可能な限り連れて来ていた。
ロイは馬丁頭なので、本来は王都にいるべきだったのだが、自ら率先して今回の戦闘に参加してくれていた。忙しそうに他の馬丁達に指示を出していたロイは、フォルを見るなりホッとした表情でこちらに近づいてきた。
「ウィリアム様、フォル!ご無事でしたか!フォル、よく頑張ったな、今重いこれを外してやるからな。」
そう言ってフォルの身体から、馬鎧を外し始めた。私も一緒に手伝うと、身軽になったフォルが意気揚々と水場へと足を向けた。
「ロイ、フォルは水浴びが何よりのご褒美なんだ。簡単でいいからサッとやってやってくれ。」
ロイはニヤッと笑って頷くと、フォルの顔を撫でながら、水場へと連れ去った。私はフォルの後ろ姿を見送ると、疲れた身体を引き摺りながら、兵舎へと足を向けた。
それこそ自分も簡単に水浴びを済ませて、清潔な服に着替えると、先に食事を始めている仲間の騎士達と合流した。
「おいウィリアム、あの敵騎士の慌てぶり見たか?」
そう言って兵舎で、誇らしげに盃を掲げ上げたのはケインだ。私は近くの空いた席にどかりと座ると用意されていた盃を同様に掲げて飲み干した。
泡立つ紫色のリキッドは、疲れた身体にはよく効いた。私は大きく唸るとクラクラする頭を振って波が鎮まるのを待った。
「ふーっ、流石に戦いの後のリキッドは効きが違うな。というか、これ、普通よりきついんじゃないか?」
そう言いながら、私はこれを飲んで机に倒れ込んだハルを思い出していた。それはケインや他の騎士達も一緒だった様で、皆が優しい顔でハルのあの情けない姿をネタにひとしきり盛り上がった。
ハルがもし王都にいたら、きっと私のことを心配して不安に思った事だろう。そう考えると、故郷へ戻って詳細がわからない方がハルのためかもしれないなと、私はあの甘える様な黒い瞳を思い出して微笑んだんだ。
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