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はい。馬は2回目です。
人狼ではなく人馬です
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禍々しい橙色の大きな月は今夜は満月だった。僕は時々首を掲げて落ちて来そうな満月を見上げた。さっき僕は小屋のなかでじっとしていられなくて、ゾワゾワが過去最高値になった。
念のため急いで着ていた服を脱いで、持ち込んだ籠の中に入れると小屋に隠した。そして僕は裸のまま、小屋の外に出た。昼のように明るい満月が僕を照らした。
それから僕は狼人間さながら、馬に変身した…気がする。馬になった今となってはそこら辺は曖昧だ。僕はため息をつくと、まぁ実際はブルルと首を振ったんだけど、騎士団の厩舎目指して歩き出した。
僕はカポカポと懐かしい蹄の音を夜のしじまに響かせながら、時間を掛けてゆっくり歩き続けた。段々と馴染んできた馬の身体は楽しかった。バネ人間になった様な気がする。馬だけど。感覚はそんな感じだ。
僕は厩舎が見渡せる少し小高い丘に辿り着いて、辺りを警戒した。特に誰もいなさそうだ。僕は最初街で誰か知らない人間に保護されて、ここに来ることを考えた。
額に白い星のある騎士団の黒毛馬が行方不明になった事が、モンスターから騎士たちを救った英雄の馬の話と一緒に、かなり人々の間に広まっているのは知っている。
でも、その話を知らない人に捕まって、何処かへ連れて行かれたら?僕はこの蹄では、顔につけられたハミと手綱を外す事が出来ない。身動きが取れなくなるのは間違いないだろう。
僕は月明かりがあるとはいえ、馬になったせいか、よく見える視界を感じながら大きくいなないた。僕のいななきは厩舎に向かって響いて、放牧地の屋根の下から一頭、また一頭と仲間たちが姿を見せた。
『え?まじでフォル?』
『嘘だろ?あいつ人間だったじゃん。』
『あ、戻ってる。おーい!こっちこいよ。』
僕は仲間の会話を耳で拾ってクスクス笑いながら、丘を柵のそばまで駆け降りた。そんな僕の側に、仲間たちはわらわらと集まって来て、顔を擦り合わせて一頭づつ挨拶をしてくれた。
リーダーは歯を剥き出しにして僕を揶揄う様に言った。
『なんだ、お前馬に戻ったら人参の調達がもう無理だなぁ。まぁ、とりあえず、よく戻ったな。』
僕は皆の顔を眺めながら、これはこれで楽しいなと思いつつ、いなないた。
『みなさん、お久しぶりです。僕も訳がわからないんですけど、また馬生活に戻りましたので仲良くしてください。よろしくお願いします。この身体で走るのまじで楽しいですね。』
そう言って柵の側を速足で駆けた。僕について何頭かが笑いながら柵の側を駆けて来てくれたのも楽しかった。でもそんな僕を眺めながら、同期の栗毛のビッツが呟いたことを、僕はそれから思い知る羽目になるんだけどね。
『マジで帰って来たし。ていうか、あいつ走り方おかしくない?…なまってる?ウケる。』
念のため急いで着ていた服を脱いで、持ち込んだ籠の中に入れると小屋に隠した。そして僕は裸のまま、小屋の外に出た。昼のように明るい満月が僕を照らした。
それから僕は狼人間さながら、馬に変身した…気がする。馬になった今となってはそこら辺は曖昧だ。僕はため息をつくと、まぁ実際はブルルと首を振ったんだけど、騎士団の厩舎目指して歩き出した。
僕はカポカポと懐かしい蹄の音を夜のしじまに響かせながら、時間を掛けてゆっくり歩き続けた。段々と馴染んできた馬の身体は楽しかった。バネ人間になった様な気がする。馬だけど。感覚はそんな感じだ。
僕は厩舎が見渡せる少し小高い丘に辿り着いて、辺りを警戒した。特に誰もいなさそうだ。僕は最初街で誰か知らない人間に保護されて、ここに来ることを考えた。
額に白い星のある騎士団の黒毛馬が行方不明になった事が、モンスターから騎士たちを救った英雄の馬の話と一緒に、かなり人々の間に広まっているのは知っている。
でも、その話を知らない人に捕まって、何処かへ連れて行かれたら?僕はこの蹄では、顔につけられたハミと手綱を外す事が出来ない。身動きが取れなくなるのは間違いないだろう。
僕は月明かりがあるとはいえ、馬になったせいか、よく見える視界を感じながら大きくいなないた。僕のいななきは厩舎に向かって響いて、放牧地の屋根の下から一頭、また一頭と仲間たちが姿を見せた。
『え?まじでフォル?』
『嘘だろ?あいつ人間だったじゃん。』
『あ、戻ってる。おーい!こっちこいよ。』
僕は仲間の会話を耳で拾ってクスクス笑いながら、丘を柵のそばまで駆け降りた。そんな僕の側に、仲間たちはわらわらと集まって来て、顔を擦り合わせて一頭づつ挨拶をしてくれた。
リーダーは歯を剥き出しにして僕を揶揄う様に言った。
『なんだ、お前馬に戻ったら人参の調達がもう無理だなぁ。まぁ、とりあえず、よく戻ったな。』
僕は皆の顔を眺めながら、これはこれで楽しいなと思いつつ、いなないた。
『みなさん、お久しぶりです。僕も訳がわからないんですけど、また馬生活に戻りましたので仲良くしてください。よろしくお願いします。この身体で走るのまじで楽しいですね。』
そう言って柵の側を速足で駆けた。僕について何頭かが笑いながら柵の側を駆けて来てくれたのも楽しかった。でもそんな僕を眺めながら、同期の栗毛のビッツが呟いたことを、僕はそれから思い知る羽目になるんだけどね。
『マジで帰って来たし。ていうか、あいつ走り方おかしくない?…なまってる?ウケる。』
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