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人間生活始まるよ〜?
ニックside黒の誘惑
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『黒の誘惑』最近ついた彼の二つ名だ。僕の同僚であるハルマは僕より若いのに仕事が出来る。出身の国が違うせいなのか、何かにつけて彼のする事は目新しい。
お陰でこの資金部の忙しさはどんどん和らいで、最近はティータイムも本当にリラックスできるものになった。以前は名目だけのもので、実際に休憩を取る暇なんてなかったのだからね。
彼はすっかり資金部のリーダーのお気に入りで、彼の提案する事は直ぐに検討されて取り入れられる様になった。最初やっかんでいた僕たちも、彼の効率のいいやり方には舌を巻いて、今はちょっと尊敬してるくらいだ。
そんな彼が『黒の誘惑』と呼ばれる様になったのは10日ほど前からだ。彼が資金部に来る様になって、彼は仕事もそうだけど、見た目の珍しさから直ぐに注目された。
じっと見つめられると目を逸らせない黒い瞳や、印象的な髪、そして何よりこの国では見たことの無い風貌。柔らかく微笑まれると僕たちはドキドキしてしまっていた。
しかし彼には手強い番犬がいたんだ。騎士のウィリアムは、辺境伯の跡取りで23歳という若手の中でも飛び抜けていると評判だった。いつも険しい顔をしつつもカッコいい彼は、事務方の僕たちにも人気があった。
その彼が、毎日仕事が終わるハルマを迎えに来るんだ。ウィリアムは僕たちをジロリと見つめると、不意に顔を緩めてさっさとハルマを連れ帰ってしまっていた。
僕たちはハルマと仲良くなる暇もなく、数日が過ぎた。ある週末明け、僕たちはヒソヒソと顔を寄せ合った。
「…あれってどう言うことだ?」
誰ともなくハルマの方をチラチラと見てしまうほど、ハルマは色っぽかった。内側から輝く様なその艶っぽさは何か週末にあったんだと、誰でも感じた様だった。
その日の昼休み、いつも夕方にしか顔を出さない騎士のウィリアムを見て、僕たちはその理由を知った。満面の笑みでハルマを迎えに来たウィリアムに、少し恥ずかしげに歩き寄るハルマ。
連れ立って食事に行った後ろ姿に、僕たちは顔を合わせると頷いた。そうか、あの二人デキたんだなと。しかし話はそれで終わらなかった。
食堂でも人目を憚ることなくイチャつくウィリアムに、恥ずかしがるハルマ。それは度々目撃されていて、一度は午後の就業時間に少し遅れてきたハルマの気怠さに、僕たちが色々想像して仕事に支障をきたしたのも記憶に新しい。
全部、騎士のウィリアムのせいだった。けれども、あのウィリアムを骨抜きにしたハルマを誰ともなく密かに『黒の誘惑』と呼ぶ様になったのは、まぁ当然だろうね。
お陰でこの資金部の忙しさはどんどん和らいで、最近はティータイムも本当にリラックスできるものになった。以前は名目だけのもので、実際に休憩を取る暇なんてなかったのだからね。
彼はすっかり資金部のリーダーのお気に入りで、彼の提案する事は直ぐに検討されて取り入れられる様になった。最初やっかんでいた僕たちも、彼の効率のいいやり方には舌を巻いて、今はちょっと尊敬してるくらいだ。
そんな彼が『黒の誘惑』と呼ばれる様になったのは10日ほど前からだ。彼が資金部に来る様になって、彼は仕事もそうだけど、見た目の珍しさから直ぐに注目された。
じっと見つめられると目を逸らせない黒い瞳や、印象的な髪、そして何よりこの国では見たことの無い風貌。柔らかく微笑まれると僕たちはドキドキしてしまっていた。
しかし彼には手強い番犬がいたんだ。騎士のウィリアムは、辺境伯の跡取りで23歳という若手の中でも飛び抜けていると評判だった。いつも険しい顔をしつつもカッコいい彼は、事務方の僕たちにも人気があった。
その彼が、毎日仕事が終わるハルマを迎えに来るんだ。ウィリアムは僕たちをジロリと見つめると、不意に顔を緩めてさっさとハルマを連れ帰ってしまっていた。
僕たちはハルマと仲良くなる暇もなく、数日が過ぎた。ある週末明け、僕たちはヒソヒソと顔を寄せ合った。
「…あれってどう言うことだ?」
誰ともなくハルマの方をチラチラと見てしまうほど、ハルマは色っぽかった。内側から輝く様なその艶っぽさは何か週末にあったんだと、誰でも感じた様だった。
その日の昼休み、いつも夕方にしか顔を出さない騎士のウィリアムを見て、僕たちはその理由を知った。満面の笑みでハルマを迎えに来たウィリアムに、少し恥ずかしげに歩き寄るハルマ。
連れ立って食事に行った後ろ姿に、僕たちは顔を合わせると頷いた。そうか、あの二人デキたんだなと。しかし話はそれで終わらなかった。
食堂でも人目を憚ることなくイチャつくウィリアムに、恥ずかしがるハルマ。それは度々目撃されていて、一度は午後の就業時間に少し遅れてきたハルマの気怠さに、僕たちが色々想像して仕事に支障をきたしたのも記憶に新しい。
全部、騎士のウィリアムのせいだった。けれども、あのウィリアムを骨抜きにしたハルマを誰ともなく密かに『黒の誘惑』と呼ぶ様になったのは、まぁ当然だろうね。
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