上 下
31 / 131
人間生活始まるよ〜?

王都の街へご主人様とデート

しおりを挟む
「さぁ着いた。ここだよ、ハルマ。」

ウィリアムに連れられて、今日は王都の仕立て屋に来ていた。サイズの合う騎士団の事務方の制服を作るためだ。騎士たちの制服は白地に紺のモールで縁取られているカッコいいものだ。

一方事務方の制服は濃いめのエメラルドグリーンの生地に黒のモールで縁取られている。僕はこっちもカッコいいと思う。黒がグッとニュアンスのある緑色を引き立てているからだ。


階級が上がっていくと肩の房飾りが金や銀になっていく。そんなところは分かり易いな。ちなみに僕は黒。下っ端はモールと同色なんだ。それでも十分かっこいいけどね。

ファッションにうるさい僕としてはこんな洒落た制服を着るのも気分が爆上がりで、我ながら単純だなと思う。ちょっとしたコスプレぽくってウキウキしてきた。


そもそもここの生活が、僕にとってはまったく現実味が無いんだよね。でも僕は今、仕立て屋の職人さんにサイズを測ってもらって、オーダーを受けてもらっている。

着々と地に足をつける準備をしてるんだ。それが僕には何だか馬になって生活していた時よりも不思議な気がした。多分、馬生活だと、そんなに色々考えるシチュエーションが無かったんだと思う。


だって、僕の関心といえば、どれだけ人参が食べられるかとか、走り回れて楽しい~とか、訓練何だろうとか…。うん、馬鹿みたいに単純な生活だね。それはそれで幸せな気がする…。

ウィリアムは僕を待っている間、手持ち無沙汰に飾ってある私服のベストやシャツを手に取って眺めていた。僕はウィリアムに尋ねた。

「ウィリアムさん、騎士団に居て私服を着る機会はありますか?僕も用意しておいた方が良いんでしょうか。」


ウィリアムは僕をチラリと見て考え考え言った。

「機会が有ると言えばある。例えば騎士団員だと知られたくない内密な外出の時や、こうやって王都に遊びに来る時とかな。制服は目立つから。」

僕はウィリアムの白い制服姿を見つめて言った。

「僕はウィリアムさんの制服姿好きです。とっても似合ってて、カッコいいです。」


ウィリアムはちょっとフリーズしていたけれど、頭を掻いてぶつぶつ何か呟いていた。照れているのかな。そんなウィリアムも僕の胸をキュンとさせるけどね。

それからウィリアムは何点か服をいくつか僕用に見繕うと、オーダーしてくれた。制服の仕上がりと一緒に出来上がるみたいだ。

僕はまだお給料ももらっていないし、ウィリアムに買ってもらうのは気が引けた。そこはやっぱり日本人気質が出てしまった。するとウィリアムは微笑んで言った。


「…ハルマは不思議だね。普通はそんな事気にもしない人間ばかりだよ。ふふ、心配しなくても私はお金がない訳じゃないから受け取ってくれ。

私も自分が誰かに服をあげるなんて、初めてなんだ。…だから断ってほしくないな。」

そう言って僕を見つめる緑色の瞳に、僕は身動き出来なかったんだ。




しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

処理中です...