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人間に戻っちゃった!
ウィリアムside騒めく心
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器用に泳ぎ戻って来る黒髪の青年を、呆然と見つめていた私は、彼が浅瀬で姿を現し出すと慌てて自分の上着を脱いだ。さっきまで腰に巻き付いていたツルで出来たものが無くなっていたからだ。
彼はその事に気づいているのかどうか、無頓着にさっきより嬉しそうな表情で、濡れた身体の雫を手ではらっていた。その姿はすっかり私の目に焼きついてしまった。
しなやかな無駄のない筋肉美の裸体。この国ではほとんど見ることの無い、しっとりと濡れた黒い髪が肩まで垂れていた。そして体毛がほとんど感じられないその身体。加えて言うならば中心にも、体毛がなかった。
体毛が無いせいで目立つシンボルは、身体に見合った大きさで、なんて言うか綺麗というか…、あまり使われていない感じがした。それは私をドキドキとさせて、同時に他の騎士たちに見せたく無いとも思わせた。
上着の留金が難しいのか、上手く留められなくて眉をしかめていた青年に手を貸した私は、青年にジロジロと見つめられた。どうにも居心地が悪い。青年が私にお礼を言ってくれたが、言葉選びも何だか変だった。
結局私の愛馬のフォルは銀のリボンだけ残して忽然と姿を消してしまった。泉の周囲には蹄の足跡が見当たらなかったのだ。副指揮官は気落ちした顔を私に向けた。
私は後ろ髪を引かれながら、これ以上ここに居てもフォルが姿を現さない気もして、王都へ戻る事に同意した。行方不明のフォルと同期の栗毛のビッツの持ち主の騎士は、昨日負傷してしまったので、今日は私がビッツに乗ってきた。
この青年と二人で乗って戻るしか無い。ビッツが嫌がるだろうか。私たちがビッツの側に近寄ると、青年は嬉しそうにビッツに顔を寄せて、何かコソコソと話しかけた。
するとビッツは見たこともない顔をして、怯えた様に二、三歩後ろへ後ずさった。私はビッツをなだめながら、青年を鞍へ押し上げた。青年は馬に乗り慣れていない様子だったが、問題は下半身が丸見えだったことだ。
流石に誰も予備のズボンは持っていなかった。だから乗る時に思いっきりお尻が見えてしまったし、鞍の上にクッション代わりに挟んだ革製の水袋も、尻を突き出して間に挟んでくれと私に頼んでくる。
騎士団は男色が盛んで、女性も男性もいけるとなるとその率は八割にも上る。女性しか愛さないという騎士はかなりの少数派なのだ。
だから、この黒髪の青年は無意識にも騎士たちからその様な眼差しで値踏みされていたのだった。私はそれがしょうがない事だとは思ったが、なぜか許せない気がして、モンスターの検証班の脇を通り過ぎる時も騎士たちの視線をかわす様にさっさと通り過ぎた。
そして気がつけば青年は疲れていたのか、私の腕の中で眠ってしまっていた。私は少し乾き始めた彼の髪から、甘い匂いを感じながら少し泡立つ胸の騒めきを自覚していたんだ。
彼はその事に気づいているのかどうか、無頓着にさっきより嬉しそうな表情で、濡れた身体の雫を手ではらっていた。その姿はすっかり私の目に焼きついてしまった。
しなやかな無駄のない筋肉美の裸体。この国ではほとんど見ることの無い、しっとりと濡れた黒い髪が肩まで垂れていた。そして体毛がほとんど感じられないその身体。加えて言うならば中心にも、体毛がなかった。
体毛が無いせいで目立つシンボルは、身体に見合った大きさで、なんて言うか綺麗というか…、あまり使われていない感じがした。それは私をドキドキとさせて、同時に他の騎士たちに見せたく無いとも思わせた。
上着の留金が難しいのか、上手く留められなくて眉をしかめていた青年に手を貸した私は、青年にジロジロと見つめられた。どうにも居心地が悪い。青年が私にお礼を言ってくれたが、言葉選びも何だか変だった。
結局私の愛馬のフォルは銀のリボンだけ残して忽然と姿を消してしまった。泉の周囲には蹄の足跡が見当たらなかったのだ。副指揮官は気落ちした顔を私に向けた。
私は後ろ髪を引かれながら、これ以上ここに居てもフォルが姿を現さない気もして、王都へ戻る事に同意した。行方不明のフォルと同期の栗毛のビッツの持ち主の騎士は、昨日負傷してしまったので、今日は私がビッツに乗ってきた。
この青年と二人で乗って戻るしか無い。ビッツが嫌がるだろうか。私たちがビッツの側に近寄ると、青年は嬉しそうにビッツに顔を寄せて、何かコソコソと話しかけた。
するとビッツは見たこともない顔をして、怯えた様に二、三歩後ろへ後ずさった。私はビッツをなだめながら、青年を鞍へ押し上げた。青年は馬に乗り慣れていない様子だったが、問題は下半身が丸見えだったことだ。
流石に誰も予備のズボンは持っていなかった。だから乗る時に思いっきりお尻が見えてしまったし、鞍の上にクッション代わりに挟んだ革製の水袋も、尻を突き出して間に挟んでくれと私に頼んでくる。
騎士団は男色が盛んで、女性も男性もいけるとなるとその率は八割にも上る。女性しか愛さないという騎士はかなりの少数派なのだ。
だから、この黒髪の青年は無意識にも騎士たちからその様な眼差しで値踏みされていたのだった。私はそれがしょうがない事だとは思ったが、なぜか許せない気がして、モンスターの検証班の脇を通り過ぎる時も騎士たちの視線をかわす様にさっさと通り過ぎた。
そして気がつけば青年は疲れていたのか、私の腕の中で眠ってしまっていた。私は少し乾き始めた彼の髪から、甘い匂いを感じながら少し泡立つ胸の騒めきを自覚していたんだ。
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