13 / 131
馬になっちゃった!
ウィリアムsideフォルという馬
しおりを挟む
「ウィリアム、必ずフォルの追跡をする。お前の馬のお陰で、騎士団は騎士数人と二頭ほどが怪我を負っただけで済んだんだ。」
そう言って私の肩を掴んだ後、疲れた様子で足を引き摺って官舎へ戻って行く副指揮官は、それでも随分気落ちしている様子だった。私の側にきた馬丁のロイは言った。
「副指揮官がフォルを見出したのですから、きっと置いてきた事を後悔しているんでしょう。フォルも副指揮官に随分懐いてましたからね。
私達は、アイツが森の中で一頭だけで化け物の様な奴と立派に対峙したと聞いて、驚きましたけど、一方でアイツならやるかもしれないって妙に納得したんです。
フォルは若い馬でしたけど、賢くて、妙な馬でしたから。…残念です。」
そう言って、やはりロイも肩を落として寂しげに歩き去った。落ち着かない馬達の騒めきが今日は妙に寂しげに聴こえて、私は拳を握って官舎へ歩き出した。
結局どう考えても、あれ以上の方法は無かった。フォルの取った奇跡の様な行動は、私たちを死の淵からあっけなく救い上げたのだから。
主人である私を振り落とした時はどうしたのかと呆気に取られたけれど、あの時フォルは私の方をチラッと見たんだ。確かに私には聞こえた。『ごめんね、ウィリアム』って。
官舎へ戻ると、私を見て数人の騎士達が集まってきた。彼らは何も言わなかったけれど、私の肩を強く掴んで頷いた。頭に包帯を巻いたリーダーが、魔物狩りに行かなかった騎士たちにも聞こえるように声を張って言った。
「皆聞いてくれ。魔物狩りはいつもの様に順調だった。しかし、対峙したことの無いモンスターに我々の行手は阻まれた。剣は硬い皮で弾かれて、大きな鋭い角で私達は馬ごと薙ぎ払われた。
私も騎士になって十五年経つが、全く経験のない事だ。明日、怪我の無い者は追跡討伐に行く。今回は鉛も突き通すサーベルを各自持参する事。鉛の網や重りも持っていく。
考えつくだけの重装備の上、参加する様に。解散!」
私達は各々身を清めに行ったり、食事を摂るなど、銘々が疲れた身体を揺り動かして動き出した。呆然としている私の隣に、学生の頃からの友人の騎士、ケインが声を掛けてきた。
「ウィリアム、お前の特別な馬が、皆を助けたと聞いたぞ?…今は森の中で寂しがっているかもしれないな。明日は俺も参加する予定だ。一緒にあの馬を撫でてやろう。
さあ、お湯を浴びてメシ食うぞ。明日は置いて行かれたとあの馬が拗ねていたら、森から引っ張り出さなきゃいけないからな?」
私はケインの励ましに少し笑うと、明日無事にフォルに巡り会える様に、強く願った。
そう言って私の肩を掴んだ後、疲れた様子で足を引き摺って官舎へ戻って行く副指揮官は、それでも随分気落ちしている様子だった。私の側にきた馬丁のロイは言った。
「副指揮官がフォルを見出したのですから、きっと置いてきた事を後悔しているんでしょう。フォルも副指揮官に随分懐いてましたからね。
私達は、アイツが森の中で一頭だけで化け物の様な奴と立派に対峙したと聞いて、驚きましたけど、一方でアイツならやるかもしれないって妙に納得したんです。
フォルは若い馬でしたけど、賢くて、妙な馬でしたから。…残念です。」
そう言って、やはりロイも肩を落として寂しげに歩き去った。落ち着かない馬達の騒めきが今日は妙に寂しげに聴こえて、私は拳を握って官舎へ歩き出した。
結局どう考えても、あれ以上の方法は無かった。フォルの取った奇跡の様な行動は、私たちを死の淵からあっけなく救い上げたのだから。
主人である私を振り落とした時はどうしたのかと呆気に取られたけれど、あの時フォルは私の方をチラッと見たんだ。確かに私には聞こえた。『ごめんね、ウィリアム』って。
官舎へ戻ると、私を見て数人の騎士達が集まってきた。彼らは何も言わなかったけれど、私の肩を強く掴んで頷いた。頭に包帯を巻いたリーダーが、魔物狩りに行かなかった騎士たちにも聞こえるように声を張って言った。
「皆聞いてくれ。魔物狩りはいつもの様に順調だった。しかし、対峙したことの無いモンスターに我々の行手は阻まれた。剣は硬い皮で弾かれて、大きな鋭い角で私達は馬ごと薙ぎ払われた。
私も騎士になって十五年経つが、全く経験のない事だ。明日、怪我の無い者は追跡討伐に行く。今回は鉛も突き通すサーベルを各自持参する事。鉛の網や重りも持っていく。
考えつくだけの重装備の上、参加する様に。解散!」
私達は各々身を清めに行ったり、食事を摂るなど、銘々が疲れた身体を揺り動かして動き出した。呆然としている私の隣に、学生の頃からの友人の騎士、ケインが声を掛けてきた。
「ウィリアム、お前の特別な馬が、皆を助けたと聞いたぞ?…今は森の中で寂しがっているかもしれないな。明日は俺も参加する予定だ。一緒にあの馬を撫でてやろう。
さあ、お湯を浴びてメシ食うぞ。明日は置いて行かれたとあの馬が拗ねていたら、森から引っ張り出さなきゃいけないからな?」
私はケインの励ましに少し笑うと、明日無事にフォルに巡り会える様に、強く願った。
2
お気に入りに追加
1,051
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる