12 / 131
馬になっちゃった!
ウィリアムside私の馬の機転
しおりを挟む
そいつは突然現れた。魔物退治も無事終わり、こちらの損害も最低限で済んで、私達はホッとして王都目指して森を抜けようと歩き出していた。
耳をつんざく恐ろしい鳴き声が辺りを響かせたと思った時には、目の前に居た数人の騎士や馬が吹っ飛ばされていた。それでも私達は、魔物ではない、見たことのない大きなモンスターに間髪入れずに必死に剣を突き刺した。
しかし恐ろしく硬い皮に阻まれ、そして大きな鋭い角を振り回されて、そう、なす術がなかった。私達には逃げることしか出来なかったが、倒れている怪我人や負傷した馬たちを放っていけないのは明白だった。
しかもそのモンスターの足の速さも分からず、逃げることが得策かも判断出来なかった。私たちはある意味死闘を覚悟したのだ。
こいつが死ぬか、我々が死ぬか。私が剣を握り直した瞬間、私は勢い良く振り落とされた。フォルが身体を捻って勢い良く後ろ足で立ち上がったからだ。
私を振り落としたフォルは私をチラリと見ると、モンスターに向かって大きくいなないた。後から聞くところによれば、見ていた騎士曰く、大きく歯を剥き出してモンスターを威嚇したかの様だったらしい。
するとモンスターは標的をフォルにしたのか、勢い良く走り去るフォルを凄まじい勢いで追いかけ始めた。周囲の木々を薙ぎ倒しながら走るモンスターの姿は、もし私たちが逃げても直ぐに追いつかれただろうと明らかなほどの速さだった。
「今のうちに怪我人を救助!動けるものは動け!撤退!」
指揮官の号令で私達はハッとして、呆然と見ていた状況から覚醒して、慌ただしく撤退の準備をした。その時、私の側に副指揮官が来て言った。
「フォルは賢い馬だ。きっと、何か考えがあってあの様にしたのだろう。我々の時間稼ぎをしてくれたのかもしれない。今は何も考えず、フォルの作ってくれた貴重な時間を無駄にするな。」
私はもう一度フォルが走り去った、無惨になぎ倒された森を見つめると、歯を食いしばって目の前の作業に当たった。私達は明らかにフォルに助けられたのだ。
一頭の馬の機転で、私達の命が救われた。それは明白な事実だった。私達は沈痛な表情で黙々と怪我人を馬の背に乗せ、王都へと急ぎ歩み始めた。
私はどうしてもフォルを置いてこの場を立ち去るのが忍びなくて、もう一度フォルの消えた森を見つめた。
「…フォル、無事で居てくれっ。絶対に…迎えに来るからな!」
耳をつんざく恐ろしい鳴き声が辺りを響かせたと思った時には、目の前に居た数人の騎士や馬が吹っ飛ばされていた。それでも私達は、魔物ではない、見たことのない大きなモンスターに間髪入れずに必死に剣を突き刺した。
しかし恐ろしく硬い皮に阻まれ、そして大きな鋭い角を振り回されて、そう、なす術がなかった。私達には逃げることしか出来なかったが、倒れている怪我人や負傷した馬たちを放っていけないのは明白だった。
しかもそのモンスターの足の速さも分からず、逃げることが得策かも判断出来なかった。私たちはある意味死闘を覚悟したのだ。
こいつが死ぬか、我々が死ぬか。私が剣を握り直した瞬間、私は勢い良く振り落とされた。フォルが身体を捻って勢い良く後ろ足で立ち上がったからだ。
私を振り落としたフォルは私をチラリと見ると、モンスターに向かって大きくいなないた。後から聞くところによれば、見ていた騎士曰く、大きく歯を剥き出してモンスターを威嚇したかの様だったらしい。
するとモンスターは標的をフォルにしたのか、勢い良く走り去るフォルを凄まじい勢いで追いかけ始めた。周囲の木々を薙ぎ倒しながら走るモンスターの姿は、もし私たちが逃げても直ぐに追いつかれただろうと明らかなほどの速さだった。
「今のうちに怪我人を救助!動けるものは動け!撤退!」
指揮官の号令で私達はハッとして、呆然と見ていた状況から覚醒して、慌ただしく撤退の準備をした。その時、私の側に副指揮官が来て言った。
「フォルは賢い馬だ。きっと、何か考えがあってあの様にしたのだろう。我々の時間稼ぎをしてくれたのかもしれない。今は何も考えず、フォルの作ってくれた貴重な時間を無駄にするな。」
私はもう一度フォルが走り去った、無惨になぎ倒された森を見つめると、歯を食いしばって目の前の作業に当たった。私達は明らかにフォルに助けられたのだ。
一頭の馬の機転で、私達の命が救われた。それは明白な事実だった。私達は沈痛な表情で黙々と怪我人を馬の背に乗せ、王都へと急ぎ歩み始めた。
私はどうしてもフォルを置いてこの場を立ち去るのが忍びなくて、もう一度フォルの消えた森を見つめた。
「…フォル、無事で居てくれっ。絶対に…迎えに来るからな!」
23
お気に入りに追加
1,057
あなたにおすすめの小説

すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる