上 下
2 / 131
馬になっちゃった!

僕の馬生活

しおりを挟む
夕方になって、僕たち子馬は屋根付きの特別な寝床に集められた。もうご飯も終わったし、水も飲んだし、眠るだけだ。僕がいつもの場所でしゃがみ込むと、隣に栗毛の子馬がやってきて、僕の身体に鼻先を押し付けた。

『なぁに?もう寝なきゃだめだよ?』

栗毛の栗ちゃんはもう一度僕に甘える様に鼻先を押しつけると言った。


『黒ちゃん、僕、今日ね、白ちゃんに噛まれそうになったんだよ?白ちゃん嫌な奴。黒ちゃん怒って?』

僕は、はにわ目になりながら言った。

『栗ちゃん、また白ちゃんに意地悪したんじゃないの?白ちゃんが好きだったら優しくしてあげないと。明日ごめんねしよう、ね?一緒に謝ってあげるからさ。』

栗ちゃんはぶつぶつ言ってたけど、最後は本当に一緒に謝ってくれる?って僕に言いながら、いつの前にか隣で眠ってしまった。


僕はキリルさんが作ってくれたふわふわの寝床に横たわって、夜の生き物たちが立てる音を聞きながら乾いた清潔なワラの良い匂いを楽しんだ。

さしずめ僕が人間なら、この状況はアルプスの少女ハイジがペーターと寝転んだ小屋のワンシーンだなと思いながら。ま、今は人間じゃないけどね。



前世があるなら、僕は大学二年生だった。大学生活を満喫していて、バイトもして、後は彼氏でも出来ればパーフェクトだった。そう、僕は恋愛対象が男だったから、それは一番ハードルが高かったけどね。

ゲイにありがちな、ファッションにうるさく、身だしなみには気を遣っていた。見た目は悪くなかったから、お陰で女子からは何度もお誘いや告白があったけれど、残念ながら僕はお友達以上にはなれない。


イケメンが誘ってくれないかなと、あの日もそんな事を考えながら慣れた街角を曲がったんだ。そしたら足元の地面がポッカリ空いていて、僕は吸い込まれる様に落ちた。周囲にいた人達の悲鳴が聞こえたよ。

僕自身は声も出なくて、次に襲い掛かる衝撃を覚悟して身体を丸めたんだ。でも突然グイッと大きな力に引っ張られた。次の瞬間には、びっくりする事に僕はふんわりとした場所に落ちた。しかも温かくて、布団の中みたいだった。


でも周囲を見回そうにも身動きは取れないし、目も開かない。何なら身体をぎゅっと規則的に押されて苦しいし。しばらくそれが続いたと思ったら、手の先に光を感じて、それから急にグイって引っ張られたんだ。

相変わらず目が開かなかったし、よく聞こえなかったけど、身体中を乱暴にゴシゴシって擦られてびっくりしたんだ。目が開く様になったら、目の前でガタイの良い外国人が僕の身体をあちこち調べていた。


僕は何⁉︎って言った筈なのに、僕から出たのは弱々しいヒンだった…。そーなんだよね、僕は、穴落ちからぁの、馬に生まれ変わり!みたいなんだ。何言ってるのかって?本当、自分でも何言ってんだって感じだよね?









しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。 第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!

処理中です...