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馬になっちゃった!
ご主人様と戦闘訓練
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はぁはぁ、マジで辛い。もう一歩も動けないんだけど。僕は今、絶賛森の中を彷徨っている。どうしてこんな事になったんだろう。しかもまだあいつが追ってくる気配を感じるんだよね。
もしかしてまだ諦めていないのかな。僕はかすかに頭をよぎる、馬を襲う熊とか、獣の話のクライマックスを思い出していた。でもこの世界はもっとやばい。僕は中世の世界にタイムリープしたのでは無かったんだ。
さっき僕が体験したのは、明らかにファンタジーの世界特有のアレだった。ゲームの世界だったら楽しいけど、実際目の前で感じる魔物の存在はマジでおぞましさ満載だった。
理科室にあった、寄生虫の標本が目の前で何倍にも大きくなってえぐい動きをする様な、とっても鳥肌な感じといえば良いだろうか。ま、僕は馬肌?
冗談のひとつでも言わないとちょっと正気を保っていられない。かすかに聞こえる物音は、多分結構距離があるんだと思う。だって僕は馬だからね。人間より聴覚は優れてるはずだ。
それでも僕は、さっきご主人様の身代わりをやり切ったせいで、アドレナリンが出ているんだろう。まだまだ必要なら走れる気がする。とはいえ、僕が今ピンチなのは変わらないよ!
僕が一目惚れした若い騎士は、僕のご主人様になった。まぁ、僕の恋は報われないだろうけど、取り敢えず自分のタイプの相手と一緒に行動できるのは役得だと思った。
今日は一緒に戦闘訓練する初めての日だった。いつも駆け回るだけだったから、ちょっと飽きていた僕は、好奇心を覗かせた。先輩馬達が張り切っていたから、結構楽しい1日になるかもしれないなって。
でも、そんな僕の予想は後々、大いに裏切られる事になったんだ。
戦闘訓練というのは、一時間ぐらい一緒に、それこそ馬上騎馬戦的な模擬戦だった。実は僕は高校時代、騎馬戦の大将をやったおかげで、戦略とかも相当研究してたんだ。
戦国時代の戦法まで調べ出した僕に、友人達は呆れていたけれど、今になってあれが大いに役に立った。僕は馬達の動きを見ながら、馬上のご主人様に誘導されるふりをして、上手い場所へとこっそり誘導した。
模擬戦の結果は大成功で、ご主人様は皆から随分褒め称えられていた。そんなご主人様は、僕を綺麗な緑色の瞳でじっと見つめながら、汗ばんだ僕の首筋を優しく撫でて言った。
「フォル、お前は素晴らしい馬だね。私がほとんど命じていないのに、お前は勝手に先読みの場所へと私を連れ出した。この結果はお前の手柄だ。今日は人参を増やそう。」
僕はご主人様の逞しい指先を感じながらも、人参に反応してしまった。ああ、すっかり僕って馬っぽい。色気より食欲にシフトしてしまって。
いや、今の馬生活では色気よりも生活の質が大事だよ。うん。しょうがない。開き直った僕は直ぐに馬らしさ全開でご主人様に甘えた。顔を手に擦り寄せて、もっと撫でてとアピールしちゃおう。
「ウィリアム、お前の黒馬は凄いな。場外から見ていたが、この馬が戦略を知ってるかの様に動いていたぞ。お前自身は手綱をそんなに引いてないだろう?」
もしかしてまだ諦めていないのかな。僕はかすかに頭をよぎる、馬を襲う熊とか、獣の話のクライマックスを思い出していた。でもこの世界はもっとやばい。僕は中世の世界にタイムリープしたのでは無かったんだ。
さっき僕が体験したのは、明らかにファンタジーの世界特有のアレだった。ゲームの世界だったら楽しいけど、実際目の前で感じる魔物の存在はマジでおぞましさ満載だった。
理科室にあった、寄生虫の標本が目の前で何倍にも大きくなってえぐい動きをする様な、とっても鳥肌な感じといえば良いだろうか。ま、僕は馬肌?
冗談のひとつでも言わないとちょっと正気を保っていられない。かすかに聞こえる物音は、多分結構距離があるんだと思う。だって僕は馬だからね。人間より聴覚は優れてるはずだ。
それでも僕は、さっきご主人様の身代わりをやり切ったせいで、アドレナリンが出ているんだろう。まだまだ必要なら走れる気がする。とはいえ、僕が今ピンチなのは変わらないよ!
僕が一目惚れした若い騎士は、僕のご主人様になった。まぁ、僕の恋は報われないだろうけど、取り敢えず自分のタイプの相手と一緒に行動できるのは役得だと思った。
今日は一緒に戦闘訓練する初めての日だった。いつも駆け回るだけだったから、ちょっと飽きていた僕は、好奇心を覗かせた。先輩馬達が張り切っていたから、結構楽しい1日になるかもしれないなって。
でも、そんな僕の予想は後々、大いに裏切られる事になったんだ。
戦闘訓練というのは、一時間ぐらい一緒に、それこそ馬上騎馬戦的な模擬戦だった。実は僕は高校時代、騎馬戦の大将をやったおかげで、戦略とかも相当研究してたんだ。
戦国時代の戦法まで調べ出した僕に、友人達は呆れていたけれど、今になってあれが大いに役に立った。僕は馬達の動きを見ながら、馬上のご主人様に誘導されるふりをして、上手い場所へとこっそり誘導した。
模擬戦の結果は大成功で、ご主人様は皆から随分褒め称えられていた。そんなご主人様は、僕を綺麗な緑色の瞳でじっと見つめながら、汗ばんだ僕の首筋を優しく撫でて言った。
「フォル、お前は素晴らしい馬だね。私がほとんど命じていないのに、お前は勝手に先読みの場所へと私を連れ出した。この結果はお前の手柄だ。今日は人参を増やそう。」
僕はご主人様の逞しい指先を感じながらも、人参に反応してしまった。ああ、すっかり僕って馬っぽい。色気より食欲にシフトしてしまって。
いや、今の馬生活では色気よりも生活の質が大事だよ。うん。しょうがない。開き直った僕は直ぐに馬らしさ全開でご主人様に甘えた。顔を手に擦り寄せて、もっと撫でてとアピールしちゃおう。
「ウィリアム、お前の黒馬は凄いな。場外から見ていたが、この馬が戦略を知ってるかの様に動いていたぞ。お前自身は手綱をそんなに引いてないだろう?」
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