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婚約

政宗sideその時※

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 その日は来た。


 ほとんど葵のマンションで半同棲していた俺たちは、あのマンションの下見の次の日には入籍を済ませた。事後報告だったから俺の家族はともかく、如月家の面々には戸惑われた。

 けれども意外にも葵の兄が葵の両親に話を通しておいてくれたらしく、葵の発情期前に入籍した方が良いのだと言う言葉に納得はしてもらえた様だった。

 結婚式は両家の規模もあり、準備や日程調整に時間が掛かるのは分かっていたので、自分のマンションに帰りながら葵はクスクス笑った。

「やっぱり先に入籍しておいて正解だったね。結婚式を待ってたら、ずっと先になるところだったでしょ?」


 俺はハンドルから片手を離して隣の葵の手を握って言った。

「ああ、それはダメだ。葵のフェロモンを他のアルファに少しでも堪能させる気はないからな。自分でも知らなかったけど、俺は想像以上に独占欲が強いみたいだ。」

 やっぱり葵はクスクス笑っていたけれど、俺の指の間にひんやりした指先を入れてなぞった。

「政宗に独占されるのは悪い気しないよ。私も自分のアルファって響きが結構最近のお気に入りなんだ。ふふ。」

 お互いの事を独占したいという、そしてそれを承認し合えるこの関係に、俺は入籍すると言う契約書類一枚の重さと喜びを噛み締めていた。



 だから帰宅してマンションのチャイムを押しても反応が無く、出掛ける話も聞いてなかったせいで何かあったのかと怪訝な気持ちで鍵を開けて扉を開けた瞬間、俺は記憶にある泡立つような興奮を感じた。これはラットの前兆だ。

 嗅いだことのないむせ返る葵のゾクゾクする様な匂いに、靴を脱ぐのももどかしく部屋に駆け込んだ。

 寝室のベッドの上でヒートになった葵は赤い顔をして、服を足元やベッドに脱ぎ散らかして足首に下着が絡まっている有様だった。自分の手をぬめって光る足の間に差し込んで、苦しげに喘いでいた。


   「…!葵、連絡してくれれば!」

 葵はトロンとした顔を俺に向けて、手を伸ばした。

「さっき急に始まって…、もう直ぐ帰って来るって思って。政宗…。」

 俺は血がゴウゴウと鳴っている様な感覚を覚えながら、震える指先でスーツを剥ぎ取った。シャツのボタンを上手く外せないのに苛立って、一気にボタンを弾き飛ばして脱いだ。

 葵の腕の中へ転がり込むと、しっちゃかめっちゃかにお互いの口の中を舐め合った。あっという間にラットになった俺は体温が上がって一気に汗が滲んだ。くらくらするような感覚の中、もはや目の前のオメガである葵の中へ突き入れることしか考えられなかった。


 いつもより柔らかく吸い付く様な葵のそこは、痛いほど昂った俺を易々と呑み込んだ。その痺れる様な気持ち良さに、俺の腰も止まらない。目の前に突き出された尖った胸のてっぺんに吸い付くと、葵の嬌声はより大きくなって、俺に絡みつく葵の中はより締まった。

 くそ、持たない。けれど、俺のアルファとしての本能は更に奥へと自分を埋め込もうとせっついてくる。俺は無意識に葵をうつ伏せると、本能のままに更に奥へと沈み込んだ。


 途切れ途切れの甘い声が俺の耳を犯して、俺はチカチカする様な興奮の中根元が葵の中でグリっと硬くなったのを感じた。普段の交歓ではここまで意識することのないアルファの瘤が、自分の番を手に入れろと命令してくる。

 普段は柔らかいだけのその奥は、発情で子宮へと開通したのか柔らかくもコリッとした抵抗を感じる。この露出したオメガの子宮口に押し付ける様に俺は絶え間なく腰を揺さぶった。


 「ああぁ!噛んで、政宗、もっとちょうだい…!噛んでぇ…!」

 息を切らして必死に叫ぶ、その甘くて蕩けそうな葵のおねだりに、俺はガッチリと葵を押さえつけていきり勃った自分を追い立てた。そして痺れる様な射精感と共に、葵の白い頸を容赦なく噛んだ。

 その瞬間、葵はビクビクと仰け反って俺の下で暴れた。けれども俺も葵を逃す訳にいかずに、さっきよりも力を緩めながらも噛み付くのをやめなかった。

 ラットの射精は途切れる事がなくて、俺は腰を揺らしながらぐったりした葵の首の傷を何度も舐め続けた。


 鉄臭さと甘い味わい、えもいわれぬ高揚感に飛ばされて、俺は自分の番を優しく抱きしめた。過去にオメガの発情期の相手を頼まれてラットになった時とは明らかに違う葵との交歓は番になったせいもあるのかもしれない。

 コントロールしようと制御されたラットと、本能のままに突き進むラットではまるで別物だった。ようやく自分の吐き出しが終わる頃、ぐったりした葵が身動きして目を覚ました様だった。


 流石にあの痺れる様な興奮状態は、葵の気を飛ばさせていた。俺の吐き出しも終わったものの、そんなに直ぐに瘤も縮む訳もなくて、俺は葵にくっ付いたまま、しっとりと汗ばんだ身体をくっけて甘いキスで埋め尽くした。

「…痛むか?結構血が出たから…。」

 白い肌に浮かび上がる痛々しい俺の歯型は、まだ血が滲んでいた。思わず舌でなぞると、葵がぴくりと身体を震わせた。

「…ちょっとピリッとするね。さっき…、何て言うか、死んじゃうかと思うくらい飛ばされちゃって、怖いくらいだった。でも、もう私のアルファは政宗になったね?」


 俺は繋がったままそっと身体を正面に動かして、上気して気怠い葵の顔を見つめた。

「ああ。俺は一生葵のものだ。俺を殺さない限り葵から離れないからな?」

 少し目を見開いた葵は、次の瞬間面白そうに目を細めて俺の唇を軽く噛んだ。

「…ふふ、随分物騒だね。どちらかと言うとオメガである私のセリフかもしれないけどね?…でもひとつ約束出来るとすれば、私と一緒にいたら、政宗を一生可愛がってあげる…。それはちょっと自信があるんだけど?」


 俺は葵の艶かしい眼差しに心臓がドキドキして身体を硬くした。ああ、葵の強烈なフェロモンで肌が粟立つ。瘤が小さくなったのを確認すると、俺はゆっくり腰を引いた。

 葵と目を合わせながら、唇を触れさせてすっかり欲望で掠れた声で囁いた。

「まだ始まったばかりだ。…葵、覚悟は良いか?」

 浅い息をした葵は、俺の顔を両手で包んで言った。

「早く…、お喋りはもう良いから、掻き混ぜて…!」

 ああ、俺の番はやっぱり容赦ない。










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