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仲直りのアップルティー
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俺はやっぱり内緒で高山助教授と話をつけた事が良くなかったんだと、少々反省して祥一朗を見上げて言った。
「…さっきの研究室の話、ちゃんと説明するから祥一朗のマンションへ連れてって。」
祥一朗は少し顔を強張らせて、頷くと僕を車に乗せた。いつもの祥一朗と違って、妙に気が急く様な運転で僕はチラチラと祥一朗の顔を伺った。
部屋に入ると、祥一朗はキッチンで紅茶を淹れてくれた。俺がコーヒーより紅茶が好きだと知ってから、祥一朗のマンションには色々なフレーバーの紅茶が揃っている。
そんなところも俺への祥一朗の愛情が見え隠れする気がして、俺はくすぐったい気持ちになるんだ。
目の前に良い香りのアップルティーを差し出されて、俺はにっこりと香りの良い紅茶を楽しんだ。祥一朗の入れてくれる紅茶はどんなお店で飲むより美味しくて、こんなところにも有能さを発揮するのかと可笑しくなった。
目の前の祥一朗が、俺が話し出すのを待っている事に気づいて、紅茶のお礼を言うと繊細な器をそっとソーサーへ置いた。
「今日研究室で高山助教授と二人で話がしたかったのは、話の内容が助教授のプライベートに関わる事だったからなんだ。桐谷さんには聞かせられないし、内容的に祥一朗に知られたくなかったし。」
祥一朗はピクリと身体を強張らせた。俺は祥一朗が変に誤解してる気がして、祥一朗を俺の側に呼んで三人掛けのソファで隣り合った。そして祥一朗の手を握って話を続けた。
「言っとくけど、祥一朗が悩む様なことは何にも無いよ。…高山助教授が俺のことを好感以上の感情で時々見つめているのは分かってた。祥一朗たちもその事が気になっていたのも。
でも先生は俺を見つめているんじゃなくって、俺に重なる俺の父親、白山時也を見てる事に気づいたんだ。だってさ、俺の母親と眼差しが一緒なんだ。俺の中に父親の幻影を見てるっていうかさ。
それを先生に指摘したんだ。先生は俺を好きなわけじゃ無い、俺の父親が好きなんだって。
驚いた事に、先生の伯父さんが俺の父親の鎖の関係だったんだ。だから、先生は実りのない慕情を俺の父親にずっと抱いていたってわけ。ね?ちょっと二人でしか話せない内容だろ?」
祥一朗は黙って聞いていたけれど、急に俺を膝の上へ抱き抱えると俺の首元に額を押しつけてささやいた。
「私は、高山助教授に雪弥が取られるんじゃないかって気が気じゃなくって。どう考えても手強い相手だ。雪弥も実験の度に懐いてるし。
今日も凄まじくフェロモンが研究室に満ちていて、私にはどうやって高山助教授がフェロモンに振り回されないのか不思議に思うほどなんだ。」
「…さっきの研究室の話、ちゃんと説明するから祥一朗のマンションへ連れてって。」
祥一朗は少し顔を強張らせて、頷くと僕を車に乗せた。いつもの祥一朗と違って、妙に気が急く様な運転で僕はチラチラと祥一朗の顔を伺った。
部屋に入ると、祥一朗はキッチンで紅茶を淹れてくれた。俺がコーヒーより紅茶が好きだと知ってから、祥一朗のマンションには色々なフレーバーの紅茶が揃っている。
そんなところも俺への祥一朗の愛情が見え隠れする気がして、俺はくすぐったい気持ちになるんだ。
目の前に良い香りのアップルティーを差し出されて、俺はにっこりと香りの良い紅茶を楽しんだ。祥一朗の入れてくれる紅茶はどんなお店で飲むより美味しくて、こんなところにも有能さを発揮するのかと可笑しくなった。
目の前の祥一朗が、俺が話し出すのを待っている事に気づいて、紅茶のお礼を言うと繊細な器をそっとソーサーへ置いた。
「今日研究室で高山助教授と二人で話がしたかったのは、話の内容が助教授のプライベートに関わる事だったからなんだ。桐谷さんには聞かせられないし、内容的に祥一朗に知られたくなかったし。」
祥一朗はピクリと身体を強張らせた。俺は祥一朗が変に誤解してる気がして、祥一朗を俺の側に呼んで三人掛けのソファで隣り合った。そして祥一朗の手を握って話を続けた。
「言っとくけど、祥一朗が悩む様なことは何にも無いよ。…高山助教授が俺のことを好感以上の感情で時々見つめているのは分かってた。祥一朗たちもその事が気になっていたのも。
でも先生は俺を見つめているんじゃなくって、俺に重なる俺の父親、白山時也を見てる事に気づいたんだ。だってさ、俺の母親と眼差しが一緒なんだ。俺の中に父親の幻影を見てるっていうかさ。
それを先生に指摘したんだ。先生は俺を好きなわけじゃ無い、俺の父親が好きなんだって。
驚いた事に、先生の伯父さんが俺の父親の鎖の関係だったんだ。だから、先生は実りのない慕情を俺の父親にずっと抱いていたってわけ。ね?ちょっと二人でしか話せない内容だろ?」
祥一朗は黙って聞いていたけれど、急に俺を膝の上へ抱き抱えると俺の首元に額を押しつけてささやいた。
「私は、高山助教授に雪弥が取られるんじゃないかって気が気じゃなくって。どう考えても手強い相手だ。雪弥も実験の度に懐いてるし。
今日も凄まじくフェロモンが研究室に満ちていて、私にはどうやって高山助教授がフェロモンに振り回されないのか不思議に思うほどなんだ。」
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