上 下
185 / 187
コントロール

仲直りのアップルティー

しおりを挟む
俺はやっぱり内緒で高山助教授と話をつけた事が良くなかったんだと、少々反省して祥一朗を見上げて言った。

「…さっきの研究室の話、ちゃんと説明するから祥一朗のマンションへ連れてって。」

祥一朗は少し顔を強張らせて、頷くと僕を車に乗せた。いつもの祥一朗と違って、妙に気が急く様な運転で僕はチラチラと祥一朗の顔を伺った。


部屋に入ると、祥一朗はキッチンで紅茶を淹れてくれた。俺がコーヒーより紅茶が好きだと知ってから、祥一朗のマンションには色々なフレーバーの紅茶が揃っている。

そんなところも俺への祥一朗の愛情が見え隠れする気がして、俺はくすぐったい気持ちになるんだ。

目の前に良い香りのアップルティーを差し出されて、俺はにっこりと香りの良い紅茶を楽しんだ。祥一朗の入れてくれる紅茶はどんなお店で飲むより美味しくて、こんなところにも有能さを発揮するのかと可笑しくなった。


目の前の祥一朗が、俺が話し出すのを待っている事に気づいて、紅茶のお礼を言うと繊細な器をそっとソーサーへ置いた。

「今日研究室で高山助教授と二人で話がしたかったのは、話の内容が助教授のプライベートに関わる事だったからなんだ。桐谷さんには聞かせられないし、内容的に祥一朗に知られたくなかったし。」

祥一朗はピクリと身体を強張らせた。俺は祥一朗が変に誤解してる気がして、祥一朗を俺の側に呼んで三人掛けのソファで隣り合った。そして祥一朗の手を握って話を続けた。


「言っとくけど、祥一朗が悩む様なことは何にも無いよ。…高山助教授が俺のことを好感以上の感情で時々見つめているのは分かってた。祥一朗たちもその事が気になっていたのも。

でも先生は俺を見つめているんじゃなくって、俺に重なる俺の父親、白山時也を見てる事に気づいたんだ。だってさ、俺の母親と眼差しが一緒なんだ。俺の中に父親の幻影を見てるっていうかさ。


それを先生に指摘したんだ。先生は俺を好きなわけじゃ無い、俺の父親が好きなんだって。

驚いた事に、先生の伯父さんが俺の父親の鎖の関係だったんだ。だから、先生は実りのない慕情を俺の父親にずっと抱いていたってわけ。ね?ちょっと二人でしか話せない内容だろ?」

祥一朗は黙って聞いていたけれど、急に俺を膝の上へ抱き抱えると俺の首元に額を押しつけてささやいた。


「私は、高山助教授に雪弥が取られるんじゃないかって気が気じゃなくって。どう考えても手強い相手だ。雪弥も実験の度に懐いてるし。

今日も凄まじくフェロモンが研究室に満ちていて、私にはどうやって高山助教授がフェロモンに振り回されないのか不思議に思うほどなんだ。」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

(…二度と浮気なんてさせない)

らぷた
BL
「もういい、浮気してやる!!」 愛されてる自信がない受けと、秘密を抱えた攻めのお話。 美形クール攻め×天然受け。 隙間時間にどうぞ!

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

とある隠密の受難

nionea
BL
 普通に仕事してたら突然訳の解らない魔法で王子の前に引きずり出された隠密が、必死に自分の貞操を守ろうとするお話。  銀髪碧眼の美丈夫な絶倫王子 と 彼を観察するのが仕事の中肉中背平凡顔の隠密  果たして隠密は無事貞操を守れるのか。  頑張れ隠密。  負けるな隠密。  読者さんは解らないが作者はお前を応援しているぞ。たぶん。    ※プロローグだけ隠密一人称ですが、本文は三人称です。

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~

雨雪
BL
スイマセン、腐男子要素どこいった状態になりそうだったんでタイトル変えました。 元、腐男子が王道学園に入学してみた。腐男子設定は生きてますがあんま出てこないかもです。 書いてみたいと思ったから書いてみただけのお話。駄文です。 自分が平凡だと本気で思っている非凡の腐男子の全寮制男子校での話。 基本思いつきなんでよくわかんなくなります。 ストーリー繋がんなくなったりするかもです。 1話1話短いです。 18禁要素出す気ないです。書けないです。 出てもキスくらいかなぁ *改稿終わって再投稿も終わったのでとりあえず完結です~

消防士の義兄との秘密

熊次郎
BL
翔は5歳年上の義兄の大輔と急接近する。憧れの気持ちが欲望に塗れていく。たくらみが膨れ上がる。

処理中です...