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俺が譲れる事は

無茶苦茶だな

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俺は椿のクラスメイトの行動はどうだったかという問いかけに、眉を顰めて考え込んだ。そう言えば、休みじゃないのに時々居ない奴らが居たっけ。大概ハーレム系か、狐や狼系で。あ、兎系も頻繁に居なかったな。

もしかしてあれがそうだったのかな。俺は秋良の方を見ながら、そう言えば俺が発情期を迎える前には、こいつも時々居なかったなと思い出した。椿もハーレム用の部屋持ってたって秋良が言ってたし。


俺は過去のことは色々言うべきじゃないって分かってたけど、俺の感情はそれを許さなかった。何だか気分が落ち込んで、俺は急に食欲も無くなって立ち上がると、黙ってトレーを片付けに歩き出した。

「雪、ちょっと待ってろ。一緒に行くから。」

聖がそう言って俺を引き止めたけど、俺は何だかこいつらと距離を取りたくて、振り向かずに言った。

「もう、マーキングもついてるし、俺一人でも大丈夫なんでしょ。ちょっと一人になりたいから。誰もついて来ないで。」


そう言って後ろを見ずにトレーを返却口に下げると、寮の自室に向かって走り出した。

わかってる。俺が馬鹿みたいに考えすぎてることってくらい。明け透けに自分のエロ情報を公開するのも嫌だし、あいつらが過去にそれを当たり前の事としてやってたなんて、今更生々しく感じるとか。

やっぱり俺はこんな世界に違和感しか無くって、どうしようもない事にクヨクヨして、八つ当たりして…。そして、そんな自分に本当に嫌気が差すんだ。


俺が部屋のある棟までたどり着いた時には、がむしゃらに走ってきたせいか息が上がって、何なら涙まで出てたかもしれない。俺は部屋の廊下の角を曲がった時に、丁度正面から来た誰かと思い切りぶつかってしまった。

「す、すみません!大丈夫ですか⁉︎」

俯いて尻もちする俺に、そう言って手を差し出したのは見た事のない顔だった。制服を着てるから、きっと学年が違うんだろう。俺はそいつの伸ばした、しなやかな手を握って引き起こしてもらった。


目の前には鋭い金色の眼差しの、黒髪に赤茶色のメッシュを効かせた短髪の男が立っていた。背は俺と同じくらいだったけれど、賢そうな引き締まった口元と、額が印象的な男だった。

「…黒崎先輩。…あ、大丈夫ですか?」

さっきまでの鋭い眼差しは、今は丸い驚きに満ちた目になっていて、俺はその変わりように少し気がそがれた。


「あ、うん。悪い、前見てなくて…。怪我してないか?」

俺は自分がどんな状態かなんて気にしてなかったから、自分の破茶滅茶な行動が他人を巻き込んだことに、舌打ちでもしたい気分だった。

そいつは俺の顔をマジマジと見ていたが、一瞬の躊躇いの後に胸元から綺麗なハンカチを出すと俺に差し出した。俺は目の前に突き出されたハンカチとそいつを交互に眺めて言った。

「…なに?」

「え、…先輩、涙出てます。使ってください。…返さなくて良いんで。俺、もう行きますから。」

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