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俺の祥一朗
鷹見side黒崎美玲との会話
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俺たちは周囲の喧騒に関心なく立ち去る祥一朗と黒崎美玲さんの弟らしい高校生を呆然と見送っていた。
「まったく、あの子の居るところはいつも騒がしいわ。…これからはもっとだわね。」
そう隣で呟いた黒崎美玲は、応明大学のマドンナとして注目されている人物だ。艶のある背中までの長い黒髪をなびかせて颯爽と歩く姿は、そのキリッとした美しさと真っ直ぐ射抜くような眼差しから、クールビューティーと名高い。誰にも媚びない、女王の様な印象を与えるせいか、取り巻きはまるで下僕然として見える。
「あの、黒崎さん。俺、鱗川の友人の鷹見なんだけど、鱗川が相手した発情期の子って、黒崎さんの弟さん…なんだよね?恵風学園の?」
俺が黒崎さんに話しかけると、下僕たちがチラッとマーキングのフェロモンを漂わせた。随分執着している様だ。俺は別に黒崎さんに手を出すつもりはなかったので、両手を上げてハンズアップした。黒崎さんが下僕たちに何か言うと、彼らは一歩下がって警戒を緩めた。
「ごめんなさいね。彼らに悪気はないの。ただ、私のことを心配してるだけだから。さっきの話だけど、ちょっと変わった子だけど私の弟よ。鱗川くんと関係してたのは、正直聞いてなかったの。
恵風学園は全寮制だから、最近会ってなかったし。でも驚いたわ。鱗川くんてあんな感じだったかしら。」
俺は首を振って言った。
「いや、まったく違う!黒崎さんに負けないくらいクールだったよ。あんな顔するなんて、見てるこっちが恥ずかしくなる。」
そう言う俺を見つめて、黒崎さんは妖艶に微笑んで言った。
「あの子の周りはいつもあんな感じよ。鱗川くんは取り巻きの一人に過ぎないの。ほんと無意識だから怖いわ、あの子。貴方はあの子に近寄らない方が良いわよ。近寄ったら一生離れられなくなるから。ふふ。」
そんなとんでもない事を言うと、踵を返してさっさと立ち去ってしまった。
「なぁ、鱗川が取り巻きの一人って本当かな…。俺ちょっと信じられないんだけど。」
俺の隣でやっぱり呆然としながら、黒崎さんを見送る熊谷の言葉を聞きながら、俺は何も言えずにいた。
さっき鱗川の側にいた黒崎さんの弟のことを、俺が妙に気になっている事をすっかり見透かされてしまった上に、とんでもない忠告を受けたんだ。
一生離れられなくなるって、鱗川はもうそうなってしまったというのだろうか?俺には分からない事だらけだった。でもあの蕩ける金属のような瞳は確かに俺の中に爪をたてて、柔らかな心の奥に食い込んでしまっていたんだ。
それは多分、隣に立っている熊谷も同じで。俺は熊谷から発するピリピリとしたフェロモンを微かに感じながら、二人の姿が見えなくなった正門を見つめていた。
「まったく、あの子の居るところはいつも騒がしいわ。…これからはもっとだわね。」
そう隣で呟いた黒崎美玲は、応明大学のマドンナとして注目されている人物だ。艶のある背中までの長い黒髪をなびかせて颯爽と歩く姿は、そのキリッとした美しさと真っ直ぐ射抜くような眼差しから、クールビューティーと名高い。誰にも媚びない、女王の様な印象を与えるせいか、取り巻きはまるで下僕然として見える。
「あの、黒崎さん。俺、鱗川の友人の鷹見なんだけど、鱗川が相手した発情期の子って、黒崎さんの弟さん…なんだよね?恵風学園の?」
俺が黒崎さんに話しかけると、下僕たちがチラッとマーキングのフェロモンを漂わせた。随分執着している様だ。俺は別に黒崎さんに手を出すつもりはなかったので、両手を上げてハンズアップした。黒崎さんが下僕たちに何か言うと、彼らは一歩下がって警戒を緩めた。
「ごめんなさいね。彼らに悪気はないの。ただ、私のことを心配してるだけだから。さっきの話だけど、ちょっと変わった子だけど私の弟よ。鱗川くんと関係してたのは、正直聞いてなかったの。
恵風学園は全寮制だから、最近会ってなかったし。でも驚いたわ。鱗川くんてあんな感じだったかしら。」
俺は首を振って言った。
「いや、まったく違う!黒崎さんに負けないくらいクールだったよ。あんな顔するなんて、見てるこっちが恥ずかしくなる。」
そう言う俺を見つめて、黒崎さんは妖艶に微笑んで言った。
「あの子の周りはいつもあんな感じよ。鱗川くんは取り巻きの一人に過ぎないの。ほんと無意識だから怖いわ、あの子。貴方はあの子に近寄らない方が良いわよ。近寄ったら一生離れられなくなるから。ふふ。」
そんなとんでもない事を言うと、踵を返してさっさと立ち去ってしまった。
「なぁ、鱗川が取り巻きの一人って本当かな…。俺ちょっと信じられないんだけど。」
俺の隣でやっぱり呆然としながら、黒崎さんを見送る熊谷の言葉を聞きながら、俺は何も言えずにいた。
さっき鱗川の側にいた黒崎さんの弟のことを、俺が妙に気になっている事をすっかり見透かされてしまった上に、とんでもない忠告を受けたんだ。
一生離れられなくなるって、鱗川はもうそうなってしまったというのだろうか?俺には分からない事だらけだった。でもあの蕩ける金属のような瞳は確かに俺の中に爪をたてて、柔らかな心の奥に食い込んでしまっていたんだ。
それは多分、隣に立っている熊谷も同じで。俺は熊谷から発するピリピリとしたフェロモンを微かに感じながら、二人の姿が見えなくなった正門を見つめていた。
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