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雪豹として
奴らのお迎え
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「それで、母親とは色々話せたのか?」
隣に座った秋良に聞かれて、俺は頷いた。
「うん。詳しくは後で祥一朗のマンションで話すけど、行って良かったよ。姉貴とも話が出来てさ、和解っていうのかな、初めて兄弟っぽい感じで話が出来て、行った甲斐があったっていうか。…連れてきてくれてありがとう。ひとりじゃ中々行けなかった気がするから。」
前の座席に座っている椿が眉をひそめて俺の方を見て言った。
「‥なんか、ゆきちゃんが素直で変な感じ。」
聖が吹き出すと頷いて言った。
「確かに。雪って言えばいつもツンツンしてるからな。」
俺は口を尖らせて反論した。
「俺がツンツンしてるのは、子供の頃から下手に笑ったりすると変な奴らに付き纏われがちだったからだ。俺の母親も無表情なのは希少種の処世術だって言ってた。どっちかっていうと希少種なのにウエルカムな椿が珍しいんだよ。そうだろ?」
椿はちょっと考え込んで言った。
「俺がウエルカムなのは、獅子系だからってのもあるし、あと爺様の守りが鉄壁だったせいで特に困った経験が無かったんだよなぁ。」
俺は椿の御曹司ぶりをまざまざと見せつけられた気がして、肩をすくめた。
「俺はツンツンしてる雪の方がいい。これ以上ライバル増やしたくないし、時々デレるのが最高に良いじゃないか。」
そう言って秋良は俺を引き寄せると、優しく口付けた。俺は鎖の効果なのか、秋良にもっとキスして欲しくて、無意識に秋良の首に手を回して強請ってしまった。秋良の舌が俺の口の中を優しくくすぐると、俺はすっかり夢中になってしまった。
「もう着いたぞ!」
聖の声が耳元で聴こえて、俺はハッとして顔を上げた。目の前の甘やかな眼差しの秋良の顔を見て、急に恥ずかしくなってしまった。俺マジで何やってんだろ。うわー!恥ずい。
車から降りると、椿が腰に手を当ててぶつぶつ怒ってる…。
「どうゆう事?ゆきちゃん、そんな子じゃなかったでしょ。くそー、羨ましいんですけど!ゆきちゃん、俺ともチューしよ?ね?」
俺はグダグダ言ってる椿を交わすと、秋良と聖に挟まれてマンションの中へ入って行った。
後ろで聞こえる文句が泣きごとに変わる頃、俺たちは祥一朗のマンションのドアの前に立っていた。俺は久しぶりに会う祥一朗を思って少し緊張していた。初めての発情期を一緒に迎えてくれた相手というのは、やっぱり少し違う気がする。俺の緊張感が伝わったのか、三人も顔を見合わせていた。
ドアが開くと、そこには満面の笑みの祥一朗が立っていて、俺は祥一朗が広げた腕の中に飛び込んでいた。
隣に座った秋良に聞かれて、俺は頷いた。
「うん。詳しくは後で祥一朗のマンションで話すけど、行って良かったよ。姉貴とも話が出来てさ、和解っていうのかな、初めて兄弟っぽい感じで話が出来て、行った甲斐があったっていうか。…連れてきてくれてありがとう。ひとりじゃ中々行けなかった気がするから。」
前の座席に座っている椿が眉をひそめて俺の方を見て言った。
「‥なんか、ゆきちゃんが素直で変な感じ。」
聖が吹き出すと頷いて言った。
「確かに。雪って言えばいつもツンツンしてるからな。」
俺は口を尖らせて反論した。
「俺がツンツンしてるのは、子供の頃から下手に笑ったりすると変な奴らに付き纏われがちだったからだ。俺の母親も無表情なのは希少種の処世術だって言ってた。どっちかっていうと希少種なのにウエルカムな椿が珍しいんだよ。そうだろ?」
椿はちょっと考え込んで言った。
「俺がウエルカムなのは、獅子系だからってのもあるし、あと爺様の守りが鉄壁だったせいで特に困った経験が無かったんだよなぁ。」
俺は椿の御曹司ぶりをまざまざと見せつけられた気がして、肩をすくめた。
「俺はツンツンしてる雪の方がいい。これ以上ライバル増やしたくないし、時々デレるのが最高に良いじゃないか。」
そう言って秋良は俺を引き寄せると、優しく口付けた。俺は鎖の効果なのか、秋良にもっとキスして欲しくて、無意識に秋良の首に手を回して強請ってしまった。秋良の舌が俺の口の中を優しくくすぐると、俺はすっかり夢中になってしまった。
「もう着いたぞ!」
聖の声が耳元で聴こえて、俺はハッとして顔を上げた。目の前の甘やかな眼差しの秋良の顔を見て、急に恥ずかしくなってしまった。俺マジで何やってんだろ。うわー!恥ずい。
車から降りると、椿が腰に手を当ててぶつぶつ怒ってる…。
「どうゆう事?ゆきちゃん、そんな子じゃなかったでしょ。くそー、羨ましいんですけど!ゆきちゃん、俺ともチューしよ?ね?」
俺はグダグダ言ってる椿を交わすと、秋良と聖に挟まれてマンションの中へ入って行った。
後ろで聞こえる文句が泣きごとに変わる頃、俺たちは祥一朗のマンションのドアの前に立っていた。俺は久しぶりに会う祥一朗を思って少し緊張していた。初めての発情期を一緒に迎えてくれた相手というのは、やっぱり少し違う気がする。俺の緊張感が伝わったのか、三人も顔を見合わせていた。
ドアが開くと、そこには満面の笑みの祥一朗が立っていて、俺は祥一朗が広げた腕の中に飛び込んでいた。
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