79 / 187
再びの学校生活へ
聖の想いは
しおりを挟む
名残惜しそうに聖の部屋まで送ってくれた椿に礼を言うと、俺は聖の部屋を見回した。案外几帳面さを感じる部屋は、普段の物事を深く考えない様に思えた聖とは違って見えた。
「そう言えば、俺誰の部屋にも入ったことなかったんだな…。」
俺は棚に置いてある複雑な色味のメタリックな球体のオブジェを手に取ると、窓から差し込む光に翳して見ながら言った。俺のそんな姿を眩しそうに見つめながら、聖は大きなソファに座って言った。
「雪は俺たちでさえ警戒していたところがあったからな。今考えると、雪なりに発情期を怖がって、うっかりスイッチが入らない様に用心していたんだとわかるけどな。
気を許している間柄だとフェロモンに影響されやすいのは確かだ。実際俺たちは雪にこっそりフェロモンを出してたんだ。でもゆきは全然感じなくて。しかも高校になったら雪は益々綺麗になって、何となく雪の側にいると気もそぞろになるって言うか。
そんな時に三年の獅子系やら、鷹系が絡んで来てたろ?実際焦ったよ。フェロモンも強さで言えば、大人に近い方が強く出せるのは間違いないからな。俺たちはずっと雪を守ってきたのに、ポッと出の奴らに横取りされるとか…、我慢出来なかった。
だから、雪が発情期になる直前に消えた時は、悔しくて眠れなかった。雪は俺たちの事、信じてくれてなかったのかって。雪にも考えはあっただろうけど、俺は今でもあの時の事を思い出すと手の中にあった大切な何かが砂になってこぼれてくような恐怖を感じるんだ…。」
そう言って両手で顔を覆って項垂れる聖の姿を見て、いつも俺の事を気遣ってくれていた優しい聖を、俺がズタズタに傷付けてしまったのだと目の当たりにした。俺は手に持っていたオブジェを元に戻すと、ゆっくりと聖の側に近づいた。俺が側にきた事に気づいた聖は、立っている俺の腰に抱きついて言った。
「もう、二度とあんな思いはしたくないんだ。頼むから、俺たちの、俺の側にいてくれ。」
俺は聖の短い触り心地の良い髪を撫でると屈んで抱きしめた。そして、出た声は掠れてしまった。
「聖、ごめん。俺、お前に甘えてたんだ。お前はいつもおれの我儘を許してくれたから。でも、信じてなかったわけじゃないよ。ただ、単純にその手のことが苦手だっただけだ。お前達が近すぎて、自分をさらけ出し過ぎてしまいそうで怖かったんだ。ごめん。」
「そう言えば、俺誰の部屋にも入ったことなかったんだな…。」
俺は棚に置いてある複雑な色味のメタリックな球体のオブジェを手に取ると、窓から差し込む光に翳して見ながら言った。俺のそんな姿を眩しそうに見つめながら、聖は大きなソファに座って言った。
「雪は俺たちでさえ警戒していたところがあったからな。今考えると、雪なりに発情期を怖がって、うっかりスイッチが入らない様に用心していたんだとわかるけどな。
気を許している間柄だとフェロモンに影響されやすいのは確かだ。実際俺たちは雪にこっそりフェロモンを出してたんだ。でもゆきは全然感じなくて。しかも高校になったら雪は益々綺麗になって、何となく雪の側にいると気もそぞろになるって言うか。
そんな時に三年の獅子系やら、鷹系が絡んで来てたろ?実際焦ったよ。フェロモンも強さで言えば、大人に近い方が強く出せるのは間違いないからな。俺たちはずっと雪を守ってきたのに、ポッと出の奴らに横取りされるとか…、我慢出来なかった。
だから、雪が発情期になる直前に消えた時は、悔しくて眠れなかった。雪は俺たちの事、信じてくれてなかったのかって。雪にも考えはあっただろうけど、俺は今でもあの時の事を思い出すと手の中にあった大切な何かが砂になってこぼれてくような恐怖を感じるんだ…。」
そう言って両手で顔を覆って項垂れる聖の姿を見て、いつも俺の事を気遣ってくれていた優しい聖を、俺がズタズタに傷付けてしまったのだと目の当たりにした。俺は手に持っていたオブジェを元に戻すと、ゆっくりと聖の側に近づいた。俺が側にきた事に気づいた聖は、立っている俺の腰に抱きついて言った。
「もう、二度とあんな思いはしたくないんだ。頼むから、俺たちの、俺の側にいてくれ。」
俺は聖の短い触り心地の良い髪を撫でると屈んで抱きしめた。そして、出た声は掠れてしまった。
「聖、ごめん。俺、お前に甘えてたんだ。お前はいつもおれの我儘を許してくれたから。でも、信じてなかったわけじゃないよ。ただ、単純にその手のことが苦手だっただけだ。お前達が近すぎて、自分をさらけ出し過ぎてしまいそうで怖かったんだ。ごめん。」
21
お気に入りに追加
1,202
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる