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再びの学校生活へ

聖の想いは

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名残惜しそうに聖の部屋まで送ってくれた椿に礼を言うと、俺は聖の部屋を見回した。案外几帳面さを感じる部屋は、普段の物事を深く考えない様に思えた聖とは違って見えた。

「そう言えば、俺誰の部屋にも入ったことなかったんだな…。」

俺は棚に置いてある複雑な色味のメタリックな球体のオブジェを手に取ると、窓から差し込む光に翳して見ながら言った。俺のそんな姿を眩しそうに見つめながら、聖は大きなソファに座って言った。


「雪は俺たちでさえ警戒していたところがあったからな。今考えると、雪なりに発情期を怖がって、うっかりスイッチが入らない様に用心していたんだとわかるけどな。

気を許している間柄だとフェロモンに影響されやすいのは確かだ。実際俺たちは雪にこっそりフェロモンを出してたんだ。でもゆきは全然感じなくて。しかも高校になったら雪は益々綺麗になって、何となく雪の側にいると気もそぞろになるって言うか。


そんな時に三年の獅子系やら、鷹系が絡んで来てたろ?実際焦ったよ。フェロモンも強さで言えば、大人に近い方が強く出せるのは間違いないからな。俺たちはずっと雪を守ってきたのに、ポッと出の奴らに横取りされるとか…、我慢出来なかった。

だから、雪が発情期になる直前に消えた時は、悔しくて眠れなかった。雪は俺たちの事、信じてくれてなかったのかって。雪にも考えはあっただろうけど、俺は今でもあの時の事を思い出すと手の中にあった大切な何かが砂になってこぼれてくような恐怖を感じるんだ…。」


そう言って両手で顔を覆って項垂れる聖の姿を見て、いつも俺の事を気遣ってくれていた優しい聖を、俺がズタズタに傷付けてしまったのだと目の当たりにした。俺は手に持っていたオブジェを元に戻すと、ゆっくりと聖の側に近づいた。俺が側にきた事に気づいた聖は、立っている俺の腰に抱きついて言った。

「もう、二度とあんな思いはしたくないんだ。頼むから、俺たちの、俺の側にいてくれ。」

俺は聖の短い触り心地の良い髪を撫でると屈んで抱きしめた。そして、出た声は掠れてしまった。


「聖、ごめん。俺、お前に甘えてたんだ。お前はいつもおれの我儘を許してくれたから。でも、信じてなかったわけじゃないよ。ただ、単純にその手のことが苦手だっただけだ。お前達が近すぎて、自分をさらけ出し過ぎてしまいそうで怖かったんだ。ごめん。」

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