上 下
61 / 187
再びの学校生活へ

家族関係

しおりを挟む
結局その日の夜は、椿たちからの差し入れをありがたく食べた。…ていうか何時間、俺と秋良はやってたんだ。俺の軋む身体がそれを教えてくれてるけど…。すっかり眠る時間になっていたので、俺たちは交代で風呂に入った。いつの間にか秋良が交換してくれたであろう、気持ちのいいシーツの上でゴロゴロしていた。

秋良は一緒に風呂に入ろうと煩かったけど、ここで承諾したら朝までコースになりそうで俺は頑張った。じゃあまた今度なって秋良は言ったけど、そんなにしょっちゅうマーキングって必要なのか?


俺はだだっ広いシーツの海に手足を伸ばして、ふと、さっき考えた普通の兄弟の事を思い出した。そういえば、秋良は腹違いだけど兄弟がいる。どんな感じなんだろう。普通って。俺の悪い癖は、聞きたくなったら率直に聞き過ぎることだ。

「なぁ、秋良って兄弟、祥一朗だけか?仲良いのか?」

柔らかい顔で俺を見つめていた秋良は、急に顔を強張らせて言った。

「…なんで。…はぁ。俺に兄貴の話は鬼門だとか、分からないかな…。まぁ、雪だからな。」


なんか凄いディスられた気がするけど…。俺はそれでも返事を待っていた。秋良は諦めたように話し出した。

「まぁ、仲悪いわけじゃない。俺と兄貴は元々立場が違うからな。兄貴はうちの会社の後継ぎだし、俺は自由な立場だし?好きな事が出来るから兄貴には感謝してるよ。母親も違うけど、一緒には生活してるから小さい頃はケンカもしたかな。他に兄弟は居ないな。なんでそんな事聞くんだ?」

俺は秋良からちょっと目を逸らして言った。


「俺、楓さんに色々聞いてて思ったんだけど、うちの家族普通じゃないかもって。だから普通ってどんな感じなんだろうって思っただけ。

うちは母親が居るけど…、母親の手料理とか食べた事ないし、なんか母親っていうより、管理者という感じなんだよね。秋良が俺に向けてくれる情とか?そんなの母親から感じた事無かったなと思って。でもそれが普通だったから、今まで、その事にも気付かなかった。他の子供と比べたことも無いし。…まぁ、今思うと俺の子供時代って寂しかったのかも。」

俺の話を黙って聞いていた秋良は、手を伸ばして俺を胸に抱きしめてまた尋ねた。

「姉貴が居るだろ?母親も一緒なんだろ?」

俺は秋良の腕の中で身体の力を抜くと、ホッと息を吐き出して話し続けた。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

消防士の義兄との秘密

熊次郎
BL
翔は5歳年上の義兄の大輔と急接近する。憧れの気持ちが欲望に塗れていく。たくらみが膨れ上がる。

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

水球部顧問の体育教師

熊次郎
BL
スポーツで有名な公明学園高等部。新人体育教師の谷口健太は水球部の顧問だ。水球部の生徒と先輩教師の間で、谷口は違う顔を見せる。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

処理中です...