34 / 187
発情期
秋良side兄からの電話
しおりを挟む
それは一本の電話だった。カフェテーブルの上で震える俺のスマホにみんなの顔が釘付けになるくらい、俺たちはピリついていた。
俺たちは雪弥が居なくなって4日目、今夜会えなければ5日目の今、何も出来ない不甲斐なさに焦れついていた。どこかで雪弥が顔も知らない誰かと発情期を過ごしてると思うと、悔しさと情けなさが湧き上がってくる。しかも無事かどうかも分からないんだ。監禁とかされてたらどうするんだ。それは俺ばかりじゃなくて、顔色の悪いこいつらも多分同じで、充分に眠れてないんだろう。
液晶には祥一朗とあったので、俺は二人に口パクでアニキと言いながら通話ボタンにタッチした。
『今から来れるか?…出来れば椿と聖も一緒に。今彼らと一緒じゃないのか?…雪弥は心配ない。…ここに居る。元気だ。じゃあ、急いで来いよ。』
兄貴は言いたいことだけを言って切ってしまった。俺との会話を断片的に聞いていた二人は、顔を見合わせた。椿が苦いものでも食べた様な顔で言った。
「…どうゆうこと?ゆきちゃんが祥一朗先輩のとこにいるの…?」
聖は呆然とした顔で呟いた。
「まさか。まさか、知人て生徒会長⁉︎ 確かに、去年助けてもらったけどさ!ええっ⁉︎まさかだろ⁉︎」
聖、まさかって言い過ぎ、と馬鹿なことばかり気づく俺は相当やばい顔をしていたらしい。椿が心配そうな顔で俺に言った。
「…秋良。気持ちはわかるけど。それで何だって?」
俺は椿の柔らかな口調に、少し気を取り直して言った。
「…ああ。俺たち全員で直ぐに兄貴のマンションに来いって。それしか言わなかった。あ、…雪は元気だってさ。…行くしかないだろな。…雪がそこに居るなら。」
俺たちはしばらく誰も何も言わなかった。心の中で色々な思いが渦巻いているのはお互い承知の上で、あえて口に出すのが憚られたのだ。口火を切ったのは椿だった。
「…それにしてもさ、ゆきちゃんが祥一朗先輩と今も繋がってたなんて思わないじゃん?多分ゆきちゃんから今回頼んだだろうし。あーぁ、なんかしてやられた感が凄いんだけど。…ゆきちゃんに会ったら俺、何するか分かんないや。滅多滅多のギッタギッタにチューしちゃうかも。」
軽い口調で馬鹿みたいな事を言ってたけど、椿の目がマジだったからこいつ本当にするかもしれないなと、俺はため息をついて立ち上がった。
「まぁ、ここでボヤいててもどうしようもないだろ?…行こうぜ。」
俺たちは雪弥が居なくなって4日目、今夜会えなければ5日目の今、何も出来ない不甲斐なさに焦れついていた。どこかで雪弥が顔も知らない誰かと発情期を過ごしてると思うと、悔しさと情けなさが湧き上がってくる。しかも無事かどうかも分からないんだ。監禁とかされてたらどうするんだ。それは俺ばかりじゃなくて、顔色の悪いこいつらも多分同じで、充分に眠れてないんだろう。
液晶には祥一朗とあったので、俺は二人に口パクでアニキと言いながら通話ボタンにタッチした。
『今から来れるか?…出来れば椿と聖も一緒に。今彼らと一緒じゃないのか?…雪弥は心配ない。…ここに居る。元気だ。じゃあ、急いで来いよ。』
兄貴は言いたいことだけを言って切ってしまった。俺との会話を断片的に聞いていた二人は、顔を見合わせた。椿が苦いものでも食べた様な顔で言った。
「…どうゆうこと?ゆきちゃんが祥一朗先輩のとこにいるの…?」
聖は呆然とした顔で呟いた。
「まさか。まさか、知人て生徒会長⁉︎ 確かに、去年助けてもらったけどさ!ええっ⁉︎まさかだろ⁉︎」
聖、まさかって言い過ぎ、と馬鹿なことばかり気づく俺は相当やばい顔をしていたらしい。椿が心配そうな顔で俺に言った。
「…秋良。気持ちはわかるけど。それで何だって?」
俺は椿の柔らかな口調に、少し気を取り直して言った。
「…ああ。俺たち全員で直ぐに兄貴のマンションに来いって。それしか言わなかった。あ、…雪は元気だってさ。…行くしかないだろな。…雪がそこに居るなら。」
俺たちはしばらく誰も何も言わなかった。心の中で色々な思いが渦巻いているのはお互い承知の上で、あえて口に出すのが憚られたのだ。口火を切ったのは椿だった。
「…それにしてもさ、ゆきちゃんが祥一朗先輩と今も繋がってたなんて思わないじゃん?多分ゆきちゃんから今回頼んだだろうし。あーぁ、なんかしてやられた感が凄いんだけど。…ゆきちゃんに会ったら俺、何するか分かんないや。滅多滅多のギッタギッタにチューしちゃうかも。」
軽い口調で馬鹿みたいな事を言ってたけど、椿の目がマジだったからこいつ本当にするかもしれないなと、俺はため息をついて立ち上がった。
「まぁ、ここでボヤいててもどうしようもないだろ?…行こうぜ。」
22
お気に入りに追加
1,204
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
αなのに、αの親友とできてしまった話。
おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。
嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。
魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。
だけれど、春はαだった。
オメガバースです。苦手な人は注意。
α×α
誤字脱字多いかと思われますが、すみません。
全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~
雨雪
BL
スイマセン、腐男子要素どこいった状態になりそうだったんでタイトル変えました。
元、腐男子が王道学園に入学してみた。腐男子設定は生きてますがあんま出てこないかもです。
書いてみたいと思ったから書いてみただけのお話。駄文です。
自分が平凡だと本気で思っている非凡の腐男子の全寮制男子校での話。
基本思いつきなんでよくわかんなくなります。
ストーリー繋がんなくなったりするかもです。
1話1話短いです。
18禁要素出す気ないです。書けないです。
出てもキスくらいかなぁ
*改稿終わって再投稿も終わったのでとりあえず完結です~
とある隠密の受難
nionea
BL
普通に仕事してたら突然訳の解らない魔法で王子の前に引きずり出された隠密が、必死に自分の貞操を守ろうとするお話。
銀髪碧眼の美丈夫な絶倫王子 と 彼を観察するのが仕事の中肉中背平凡顔の隠密
果たして隠密は無事貞操を守れるのか。
頑張れ隠密。
負けるな隠密。
読者さんは解らないが作者はお前を応援しているぞ。たぶん。
※プロローグだけ隠密一人称ですが、本文は三人称です。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる