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発情期

祥一朗side雪弥の豹変

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 私達が何度身体を繋げたかはもはや数えることをやめた。枕元の多機能時計だけが、あれから3日目の夕方だと言うことを教えた。

 蕩ける様な眼差しで私にのし掛かって、雪弥は言った。

「祥一朗、はやくおれに…たべさせて…。」

 雪弥の甘いフェロモンが、私を繰り返しいきり勃たせる。さっき味わった雪弥の中の締め付けを思い出して、私の昂りはズクリと震えた。湯船に浸かった雪弥の身体は、バブルバスの柑橘系の爽やかな香りがした。けれど抱きしめると首筋から立ち昇るのは、私の頭を痺れさせる様なずっと嗅いでいたい様な甘やかな匂いだ。このフェロモンの強さが希少種故なんだろうか。


 雪弥の家系の黒豹は希少種にはなるけれど、雪弥の友人の白獅子よりも珍しいかと言えばそうでもない。学年に二人も希少種の家系がいるのが、そもそもレアなのだが。私達、猛獣系の家系は産まれても一人で、兄弟がいるのは大概二人目、三人目のパートナーの子供のことが多い。

 ハーレムを作りがちな獅子や狼などの家系も、その意味では兄弟が多い方だろう。だが、雪弥には姉がいると言っていた。黒豹はハーレムを作る方ではないはずだ。もし血が繋がっているとすれば、希少種なのに繁殖力の強い稀な事例になるかもしれない。


 私の首筋に舌を這わせていた雪弥は、つと顔をあげると私を睨みつけて言った。

「…祥一朗、気が散ってる。」

 そう怒ってみせる雪弥は、すっかり最初の頃の恥ずかしげな様子は抜け落ちて、それこそ経験値の比較的高いはずの私をも翻弄してみせる。私が雪弥に口づけようと手を伸ばすと、雪弥はサッと身体を起こした。

「祥一朗は欲しくないの?俺のこと。せっかく俺が祥一朗を食べてあげようって言ってるのに?」


 そう言って妖艶に微笑むと、私はその美しさに息を止めた。ビル街に差し込む夕陽の赤い光がカーテンの隙間から入り込み、部屋を赤く照らしていた。雪弥の髪はキラキラと反射して、燃え上がる様な髪の色と、冷たげな金属を感じる眼差しがこの世界の者でない様だった。

 私は雪弥に見惚れていたが、ハッと目を見開いた。

「雪弥、髪が…。髪が銀色になって…る。」


 雪弥は自分の髪を手に取りじっくりと見つめた。そしてクスクスと笑うと、私を引き倒して再びのし掛かると首筋を甘噛みしながら言った。

「そうか、これが散々言われてた事なんだな…。ふふふ。ねぇ、祥一朗知ってる?俺は人間を喰らう猛獣なんだ。祥一朗も猛獣系だったっけ?クロコダイルか…。ふふふ。でも俺はちょっと違うんだ。…俺が食うのは、人間の心だよ?俺、祥一朗の事、気に入ったから、自分のものにしてもいい?いいよね?」

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