上 下
58 / 68
動き出す僕たち

翔ちゃんの嫉妬

しおりを挟む
 胸の先を苛められて、僕は熱くて堪らない。この燃えるような熱を吐き出したい。僕が翔ちゃんのスエットを引っ張り上げて脱がそうとすると、翔ちゃんは顔を上げて無言で起き上ると、僕に跨ったまま自分で脱いで上半身裸になった。

無駄な贅肉など無い鍛えられた身体は、僕の目を楽しませてうっとりさせた。着痩せするのか想像よりずっと逞しい。僕は指を伸ばして翔ちゃんの割れた腹筋をなぞった。

「…かっこいいね。僕もこんな身体なら良いのに。でもきっとこうはならないよ。僕はそこまでストイックにはなれないし、怠け者だから。」


 肌に触れている僕の指先を掴んだ翔ちゃんは、かがみ込んで顔を寄せた。

「二人で硬い身体じゃ気持ち良く無いだろ?俺は侑の柔らかい身体好きだよ。俺と違って白くて綺麗だ…。」

そう言ってもう一度僕の胸にキスした。僕はまたあの焦れつくような熱で熱くなるのかと慌てて翔ちゃんに言った。

「翔ちゃん、そこだけじゃなくて…。分かるでしょ?一緒にしよ?」

その瞬間、翔ちゃんの顔が強張った気がした。僕は自分でも下手こいたと、気が付いてしまった。


 翔ちゃんは多分男同士でこんな風にイチャイチャするのは初めてだろうけど、僕が経験者の様に強請ったからきっと嫌な気持ちになったんじゃ無いかな。

恐る恐る翔ちゃんの顔を見上げると、翔ちゃんは僕の肩に額をつけてため息を吐いた。

「…ごめん。今、侑の経験に嫉妬した。俺は年上なのに侑の事リードしてやれないなんて、ちょっと凹む。」

何でも生真面目な翔ちゃんらしいと言えばそうだけど、これは付き合うカップルにとっては不味い状況だよね?僕は肩に触れる翔ちゃんの短い髪の間に指を差し込みながら、思わず呟いた。


 「…僕だって翔ちゃんが歴代彼女達と何したのかって考えると胸が焼けるよ。でも過去のことはどうしようも無いよね?僕はこれから翔ちゃんがどれだけ僕と一緒に楽しい時間を過ごしてくれるかって事に、とっても興味あるな。翔ちゃんは興味ない?僕とのこれから。」

すると翔ちゃんは顔を上げて、困った様な表情で僕をじっと見つめた。

「年の差なんて関係ないみたいだ。侑は俺よりずっと大人だ。ごめんな、どうしようも無い事言って。」

僕はクスクス笑いながら、翔ちゃんの首に手を掛けて引き寄せた。

「許してあげる。翔ちゃんが僕の望む事してくれたらね?」


翔ちゃんの手が僕のズボンを脱がせるのを感じて、僕は自分で誘ったくせに、急に心臓が苦しくなった。ああ、翔ちゃん!



しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

処理中です...